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神華  作者: 紫音
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二章 七話


 優斗、真司、大輝の三人は司と共に彼の家に来ていた。この地域に展開されていた結界が壊れた事で、何も麗華たちにないか隣の家から様子を窺っていた。しばらくすると、外が騒がしくなり、麗華たちが友人たちと家に入ることになると推測した司は、鉢合わせするのはまずいと考えた。そこで、司は三人には居間と続き部屋になっている和室に隠れているように伝え外へ出て行った。

 友人たちが居間に入り、談笑し始めたところを和室から覗き見る。麗華たちは司の母に挨拶をしに行くと、居間から離れた。麗華の友人たちは麗華について話を盛り上げていた。


「岩澤さんが転校か」

 友人の中の男子が呟くと、友人たちは寂しくなるな、と口々にしていた。

「でも、すごいカッコいい人と、知り合いになったみたいだね。あんな格好いい人と親戚なんて麗華がうらやましくなっちゃうね」

「ほんと、カッコよかったね」

「麗華言っていたけど、すごいお屋敷が実家だったんだって」

「実家が金持ちだったのか、それはいいな!」

「岩澤いつも、期限切れのコンビニ弁当とか、おにぎり一個とか寂しい食事だったもんな、すごい逆転生活になりそう」

「たしかに!」

 笑いが沸き上がり、麗華の極貧生活についての話題で盛り上がり始めた。

「ちょっと前まで、朝新聞配達していたよな。うちの朝刊毎日届けてくれていたんだよな」

「まじで、すげぇな」

「中学の時からだよ。麗華が新聞配達しているの」

「中学から新聞配達っていまどき居るのか!? すげぇな」

「貧乏生活から、金持ち生活か。いいな」

「普段から着物着たり、会席料理が出てきたりするらしいよ」

「想像を絶する、金持ち生活だな。でもさ、あの親戚っていうのもさ、ちょっと変だよな」

「なんで? すごくカッコいい人だったじゃない」

「だってさ、普通、岩澤さんが、司のおばさんに挨拶に行くだけで、ついていくか?」

「親戚だから、挨拶しておきたかったんじゃないのかな?」

「そんな雰囲気に見えなかったけど」

「じゃあどんな雰囲気に見えたの?」

「なんか岩澤さんを監視しているような?」

「そんなわけないじゃん。馬鹿だなぁ」

「だよな。悪い」

「岩澤ってでもちょっと雰囲気変わったよな」

「そう?」

「なんか、綺麗になったというか。あ、きっと着ていた服が、上品な感じだったからかも。岩澤の私服ってもっと大手安売り店の服みたいな安っぽい感じだったし」

「なにそれ、酷い」

「うちのばぁちゃんが半額で買ってきたって、言っていた服と同じ服を着ていたこともあったからさ」

「それだけ、上手に買い物をしていたって事でしょ?」

「でもばぁちゃんと同じ服だぜ、見た時、噴き出しそうになった」

 パンと海が男子の頭を軽く叩く。

「麗華に失礼でしょ。大体、牧口のお婆ちゃんが派手好きなのはみんな知っているよ。こないだ商店街を白のショートパンツで歩いていたって話題になってたんだから」

「うあ、まじか。あのショートパンツで商店街歩くのはやめてって言ったのに! ……ばぁちゃん」

 笑いが起きる。

「ほんと、麗華一杯苦労していたみたいだから、親戚が見つかってよかったんだと思うよ」

「そうだな、岩澤さん朝から晩までバイトして大変そうだったもんな」

「岩澤が苦労した分これから、金持ちの親戚によくしてもらえるだろ。朝から晩まで働いて、学費や生活費出す必要もなくなったし、いい服も着てばぁちゃんと同じ安物の服を着なくて済む訳だしな!」

「もー、牧口それ引きずり過ぎ――」

 居間の続き戸になっている和室の扉が急に開かれた。突然現れた、つり目で見るからにヤンキーの入った金髪の髪を立てた少年が、憤怒の形相で睨んでいた。軽口を叩いていただけのつもりだった友人たちは、突然の大輝登場に唖然としてしまう。


「大輝、ちょっと待てって!」

 金髪の大輝の腕を掴もうとして、大人しそうな顔で整った顔立ちをしている優斗が手を伸ばすが、その手は届くことなく空気を掴む。同じに止めようとしている中性的な顔立ちの真司が駆け寄るが一歩届かなかった。

 真っ直ぐに牧口と呼ばれた少年を睨むと問答無用で殴り飛ばした。きゃっと女子たちから悲鳴が上がる。

「さっきっから聞いていれば、麗華が貧乏くさいとか、ばばくさいとか、ムカつく奴らだな!」

 大輝の動言に驚いて固まる友人たちにいち早く、正気になったもう一人いた男子が大輝を睨みつけた。

「……え、そんなことは、誰も言っていないだろ」

 牧口の近くにいた男子の胸倉を大輝は掴む。

「言って笑ってただろ!」

「大輝、やめろって」

 真司が間に入り、大輝から男子を解放させようとして居た時、扉が開いた。蓮が居間に入るとその後から真琴と麗華と司が入って来た。大輝が掴んでいる姿と、足元に倒れている牧口を見て、麗華は信じられないと小さくつぶやく。


「なに、やってんの?」

 麗華の冷やかな声が静まった居間に響く。

「麗華。こいつらが、お前の悪口を言うから!」

「大輝君。なんで居んの?」

 麗華が一緒についてくることを拒んだから、大輝、優斗、真司は、本来は藤森家で留守番をしているはずだった。麗華に知られない様について来ていたのに、今までこっそりとついて来ていた事がばれてしまった。それだけではない。

 麗華の友人を殴り飛ばし、気絶させ、もう一人には今胸倉を掴んでいた。麗華の冷たい視線に、大輝はまずいことになったと、今更ながらに思った。

「そ、それは」

「小西君から手、離して」

 麗華は大輝の傍に歩いていきながら真司と優斗に軽く視線をやり、さらに眉間に皺を寄せる。小西と呼ばれた男子の胸倉を大輝は離す。軽く咽ている小西の背中をさすり謝る。

「ごめん、小西君。大丈夫?」

「俺は、大丈夫だけど、牧口が」

 気絶している、牧口の方へ顔を向けると白目をむいて失神していた。


「最低」

 麗華は吐き捨てるように言うと、大輝は焦る。

「いや、だってこいつらが」

「牧口が何か言ったの? 牧口の事だから、くだらないこと言って笑ってたんでしょ。そう言う奴なの。皮肉屋って言うか、そうやって笑い取る奴なの」

「でも、その、麗華の事……」

「私の事?」

「そう、麗華の事を……貧乏だとか、ばば臭いとか」

「それで、牧口が、大輝君を殴ろうとかしたの?」

「し、してないけど……」

 麗華に睨まれてしどろもどろになっている大輝に、麗華はもう一度吐き捨てるように言った。


「最低」








 その後、牧口を病院へ連れて行った。病院へ行くタクシーの中でさりげなく真琴が治癒の術を使っていたため、牧口の顔の腫れはすぐに引いていった。牧口が意識を戻し、改めて謝罪と彼の傷の具合を確認すると時間もなくなり、華守市へ行くことになった。

 友人たちとの別れも、大輝たちの登場で怯えたものに変わり、親戚のところへ行って本当に大丈夫かと心配された。新幹線に乗りながら、麗華は口を閉ざしていた。来るなと言ってついてきた、真司や優斗にも目も合わせようともしないほど、怒っていた。


 友人たちが、麗華のお別れに態々来てくれたことを麗華は喜んでいた。一生のお別れになるかもしれない人たちで、今まで小学校、中学、高校と付き合いの長い友人たちだった。それなのに、別れを言いに来た友人を事もあろうか殴り飛ばし、気絶させていた。本当に麗華の悪口を彼らがしていたとしても、やり過ぎだ。

ついてくるなと言ったのにもかかわらず、ついてきた事も気に入らない。陰の神華で、守護家の彼らから知れば、守るべき存在で傍にいることが当たり前なのかもしれないが、四六時中5人に付きまとわれたら息が詰まる。


 華守市でやって行く気力が今回の事でそがれた。彼らは、守るという事を免罪符に麗華の言う事を聞かない、そう今回の事で、嫌と言うほどわかってしまったのだ。




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