ヘスの法則
そうだ、これ、言っておかないとな。
熱化学方程式というのは、一定の法則で計算できるんだ。つまり、変化前と変化後の物質の状態だけで計算されるんだ。これをヘスの法則という。
実例を挙げて説明した方が分かりやすいから、そうだなぁ、水酸化ナトリウムと塩酸をまぜた場合の話をしようか。水酸化ナトリウムNaOH(固)、塩酸はHClaq、さらに今回は水aqもある。
さて、ここで2つの系統を考える。塩酸に直接水酸化ナトリウムをぶち込む場合と、水酸化ナトリウムを水に溶かしてから塩酸に流し込む場合だな。ここでは、エネルギーの計算を一旦は省く事にして、直接式を書いてみよう。
NaOH(固)+HClaq=NaClaq+H(2)O+100.9kJという式が出来上がる。これは、塩酸と水酸化ナトリウムを直接反応させた場合の式だ。この場合だと、100.9kJ分の発熱反応がおこるということが分かる。
一方の、NaOH(固)+aq=NaOHaq+44.5kJ・NaOHaq+HClaq=NaClaq+H(2)O+56.4kJという式は、水酸化ナトリウムを水に溶かしてから塩酸にいれた場合の式なんだが、これは水酸化ナトリウムと水が44.5kJの発熱反応をし、それから水酸化ナトリウム水溶液と塩酸が56.4kJの発熱反応を引き起こすということを言うんだ。この2つの発熱反応を足すと、44.5+56.4=100.9となる。これは、直接反応させた場合と同じだろ。このように、どのような反応経路をたどろうが、最終的な物質の状態と、最初の物質の状態からだけで、計算ができるんだ。このようなものを、最初にもいったけどもヘスの法則というんだ。これは、一定量の物質と言うのは、その物質固有のエネルギーをもっているからこそ、できる技なんだよ。
この場合、NaOHとか、HClとかは、基本的に1molだと考えることになるんだ。これは、化学反応式でも変わらないな。質量があるものはE=mc^2によってエネルギーに変換できるから、こうやって別々のものであってもエネルギーの式として成り立つことができるんだ。ちなみに、このような式の場合、右辺と左辺はイコールで結ばれているため、エネルギーは変わらないということができるんだ。