きっかけ
高校の理数科に進んだ俺は、ある時友人から質問をされた。
「なあ、お前なら、この辺りよく知ってるだろ。教えてくれよ」
確かに、友人が示している場所は、とてもよく知っている、というべきか、俺が理系に進もうとしたきっかけになった分野でもあった。
「原子関係のところか。確かに俺は得意だけどなぁ…」
「いやいや、先生よりもよく知ってるんだからさ。あてられても、コンマかからずに答えるだろ。だったら、こっちに教えるくらい楽勝ってもんだろ」
「一応聞いておくが、お前はどこからどこまでを教えてほしいんだ」
「全部」
いうと思っていたが、全部となると、かなり困ったことになる。
「元素や原子の歴史から、構造から、それぞれの原子構造から。っていうことか」
「そうそう。歴史とかは、簡単なものでいいからさ。いいだろ?」
友人がそういって、お願いしてきたが、代わりに条件を付けてみた。
「いいけどさ、代わりと言っちゃなんだけど、学食、毎日おごりな」
「それくらい軽いものさ」
そういった友人は、かなりの楽天家だということを、忘れていた。
その日の昼休みや授業の合間や帰り道とかを利用して、友人に、それらのことを教えることになった。