表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/20

第16話『理由はわからず、しかし嫌な予感』

 さあさあ、寮に帰ってきたぞ。

 無駄に安心感のある部屋は、ゲームをプレイしていたときは作戦を練る場所でもあった。

 数ある選択肢を慎重に選んでいたから、1週目で時間をかけすぎたわけだけど――あの悩んでいる時間も含めて楽しかったな。


 さて、懐かしい思い出に浸るのはおしまいだ。

 着替えと家事を済ませたから勉強と練習を始めよう。


「難しいことは考えるな。過程と結果を切り分けて、最初の段階『風を起こす』からだ」


 ペンすらも浮き上がらせることができない悲しみは拭えないが、まずは手のひらに風を感じられるようになろう。


 踏ん張っても成果を得られないことは、今日だけでわかった。

 だから呼吸を整えて――そう、床に腰を下ろしてあぐらをかきながらやってみよう。

 イメージイメージ、イメージ。かっこよくブワッと吹かせるものではなく、肌を撫でるそよ風――よりも小さく優しく柔らかい風を――。


「……お、おぉ?」


 今感じた風は、もしかして!? と喜びそうになったけど、鼻息と区別がつかない!


 ダメだ、まだ焦るなぁまだまだやるぞぉ。

 大きく深呼吸しすぎず、平静平静。

 風を起こす、風を起こす、風を起こす。


「よし、よしよしよし」


 鼻息ではない風を感じ始めた。

 この風を吹かせるだけじゃなく、円を描くように動かすよう想像して――。


「いいぞいいぞいいぞ」


 トントン拍子にできているぞ。


 円から渦をイメージして、それができたら上出来だ。

 ペンでグルグルと円を描き続けるみたいなイメージをして……大きくなくていい、小さく、小さく――そう! バケツの中に手を突っ込んで水をかき混ぜるように!


「おぉ、おぉ! できた!」


 成果を確かめるべくパッと目を開けると、ハッキリは見えないが小さな竜巻が手のひらの上で発生している。いや、正しくは発現している。

 授業中では無能の烙印を押されても文句が得ない成果だったが、今は胸を張って「できた」と言えるぞ!


 うおぉおおおおおおおおおおっ! これぞファンタジー!


 現状の成果に喜びを露にし続けたいけど、まだだ。

 授業中にやったのは、ペンを宙に浮かせたり飛ばしたりすること。

 ちゃんと準備して床に置いてあるペンを左手に持ち、魔法を解除した状態で乗せ、ここからが本番だ。


「すー、ふぅー」


 風を起こす、渦を巻く、小さな竜巻を起こす。

 ここまでできて、やっとペンを浮かすことができるはずだ。

 ネモーネが切り分けて分解するアドバイスしてくれたおかげで、ここまで辿り着けた。


 冷静に冷静に、風を起こして――。


 ――いいぞいいぞ、ペンがあっても風を起こせた。

 手を撫でる風を縁にして、いいぞいいぞ。

 ペンによって風が妨害されているのかもしれないけど、思い通りにいっている。

 よしよしよし、このまま――。


「おわっ」


 玄関の方から『ガタンッ』という音がして、体が跳ね上がってしまった。

 ペンのぶっ飛ばしてしまい、ベットの上に着地。俺も姿勢が崩れて両手を後ろについてしまう。


 なんだなんだ、俺の部屋に来客か? と身構えてみるも、追加でノックされるわけではなかった。

 ということなら、誰かが廊下を通るときにぶつかってしまったのだろう。

 まあまあ仕方がない、そんなことぐらい誰にだってある。荷物を持っていたりすれば、なおさら。


「さて、やり直しだ」


 再現できるなら、偶然ではなく実力として身に着けることができたということだ。


 ベッドに移動してペンを拾い、今度は腰を下ろす。

 風を起こして、円を描いて――いいぞいいぞ、ここまではできるようになった。

 次に――ん?


「き、気のせい……?」


 誰かに見られているような気配を感じ、窓の外へパッと目線を向けるも、そもそも2階の窓から誰かが見ているはずもなく。

 鳥とかが窓の溝に足をかけて見ていたのだろう。

 それぐらいなら、あっちの世界でもあったし。


 何かと集中力が切れてしまう状況が続いたけど、まだまだやめるつもりはない。

 このまま続きをしよう。


「いちいち目を閉じているのも変だし、見ながらやるか」


 ――よしよしよし、いい感じだ。お、おぉ! 浮いたっ!


 俺にもペンを宙へ浮かばせることができたんだ!

 凡人だからと落胆していたが、練習したらちゃんとできるんだな!

 やったぁああああああああああああああああああああっ!


「次は、授業でやっていたペンを飛ばすってやつに挑もう。でもその前に」


 そもそもの話、2つの魔法を同時に扱えなければならない。

 だから、右手でペンを浮かしながら左手で火を出す練習から――が、過程を分解するってことだよな。

 ネモーネのアドバイス、本当に的確でわかりやすくてありがとう。


 火を起こす、火を点ける、火を灯す……どれが自分に合っているだろうか。


 と、考えながら右の方は疎かにせず、まずは火を起こしてみよう。


「――こう、そう、こうか、どうだ。ダメだ。じゃあ次、電気をパチッと点けるみたいな――こんな感じで……ダメか。じゃあ優しい火が薄っすらと灯るように、蝋燭の火みたいに……――お、おおっ」


 火が灯った!

 嬉しくて跳び上がりたいけど、集中集中。

 こんな優しい火で、ロケットみたいにペンを飛ばすことはできない。

 なんだったら――こうして小さな竜巻に近づけてみただけでふわっと消えてしまう。


 まだまだ何回も試して、2つの魔法を発動させる練習するだけして――。


『ぐぅっぅ』

「あ」


 空腹の知らせが訪れ、集中力もなくなって2つの魔法は消滅した。

 ベッドから立ち上がり、机の上にペンを置いて部屋を出ようとすると。


「ん?」


 再び窓の方に振り向いた。

 さっきから、なんなんだろうか。

 目線を感じるというか、嫌な予感がするというか。

 感情に言い表せない、変な感覚というか、背中がゾワッとする感じの。

 まさかホラー的な展開でもあるまいし、恐怖心を駆り立てられるようなことではないだろう。


 だってここはファンタジーラブコメゲーの世界なんだから――と片付けようとしたが、今は俺にとっての現実世界なんだから、霊的な現象が起きても不思議じゃない……?

 えっちょっ、そんなの聞いてませんよ怖いよ。

 ま、まさか攻略対象のヒロインが亡くなっていて、霊体で俺のことを見ているとか!?

 やばいってそれ、冗談じゃないって!


 急に背中がゾワゾワっとして身を震わせながら部屋を飛び出した。

ここまで読み進めていただき、本当にありがとうございます!


もしよろしければ、


1、ブックマーク

2、★~★★★★★評価


この2点を、ポチポチっとしていただけると幸いです。


読者の皆様から応援していただけるだけで、モチベーション維持や執筆の励みとなります!

より多くの皆様へこの作品が届いてほしいと思っていますので、どうかお力添えいただけないでしょうか!


まだまだ更新していきますので、どうかよろしくお願い致します!!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ