新婚約者ってどういうことです? ~浮気疑惑は幽霊もしくは大魔王のせい
――――――――――ユナ・ウィーデン男爵令嬢視点。
そわそわ。
今日は婚約者のクリフ様とお茶会です。
でもわたしの心には波が立っていて。
何故なら昨日、クリフ様が知らない御令嬢と街中を歩いているのを見てしまったからです。
クリフ様はバートン男爵家の嫡男です。
とっても見目麗しいのですよ。
話もお上手で、わたしにはもったいないくらいの令息なのです。
婚約が決まった時はとても嬉しかったのですが……。
やっぱりクリフ様は御不満なのでしょうか?
わたしは地味ですものね。
真面目くらいしか取り柄がありませんし。
悲しくなってしまいました。
あ、クリフ様がいらっしゃいました。
「やあ、ユナ。ちょっと遅れちゃった。ごめんね」
「クリフ様……」
「えっ、涙? ど、どうしたの? 夢で大魔王の変顔でも見ちゃった? それとも涙腺スイッチがタマネギに破壊された?」
「うふふ、違いますよ」
何ですか、大魔王の変顔って。
クリフ様は楽しいですね。
でも……。
「君を悲しませる全てから解放したい」
「実は……昨日クリフ様がどこかの御令嬢と歩いているのを見てしまいまして」
「ああ、僕の新しい婚約者エイミー・バートン男爵令嬢だね」
「えっ……新しい婚約者?」
「そっちに引っかかっちゃうのか。冗談にならなかったな。エイミー・バートンの名前でエンタメを感じてもらいたかった」
「エイミー……あっ、お義姉様?」
エイミーお義姉様はクリフ様の実の姉です。
とても明るくて活発な方なんですよ。
わたしも可愛がっていただいているのです。
「最近お化け屋敷という娯楽施設がオープンしたのは知ってるかな?」
「はい、存じております」
「姉上が興味あったようでね。ぜひ行きたいと」
「クリフ様と一緒だったのはエイミーお義姉様だったのですか?」
「うん。でも実は姉上は怖いのが大の苦手なんだ。だからついて来てくれって言われてね。泣いてボロボロになっているところを誰かに見られるのが嫌だからと、わざわざ変装までして」
ああ、それで見覚えのない御令嬢だと思ったのですね。
納得です。
「安心しました。くだらないことで泣いてしまって、恥ずかしいです」
「ごめんね。ユナには言っておくべきだった。たとえ姉上に『何でバラした!』と泣かされたとしても」
「うふふ。お化け屋敷は楽しかったですか?」
「楽しかったね。本物の幽霊が出てくるところなんか最高だった」
「えっ?」
「冗談だけどね。お化け屋敷から出た時に姉上のメイクがドロドロに崩れていて、本物の幽霊かと思ったのは本当」
あれ? 相当怖いようですね。
わたしが行ったら泣かされてしまうかもしれません。
ぶるぶる。
「ユナもお化け屋敷に行ってみるかい?」
「ええと、クリフ様が一緒でしたら……」
「もちろんお供するよ」
まあ、お供だなんて。
わたしこそクリフ様のおまけみたいなものですのに。
クリフ様がいらっしゃるのでしたら頼れますねえ。
違う意味でドキドキしてしまうかも。
きゃっ!
クリフ様は飄々としていらして、余裕がありますねえ。
先ほどわたしが涙した時に少し慌てていましたか。
ではわたしも少しはクリフ様に気にしていただいているのでしょうか?
「……クリフ様はお優しいですよね」
「僕ほど優しい男はなかなかいないね。というか僕ほど優しい男前はなかなかいないね」
「うふふ。お話も面白いですし」
「いや、それはどちらかというと僕の弱点というか」
「えっ?」
弱点とは?
長所ですよね?
わたしはどちらかというと人見知りなのですけれど、クリフ様とはすぐに喋ることができましたし。
「どういうことでしょう?」
「人間が軽いと思われてしまうんだよね。貴族としてよろしくないと、父上にも注意されることが多いの」
「……わからないことはないですが。クリフ様の個性だと思いますし、わたしは好きなのですけれど」
「おお、ナチュラルに愛の告白を混ぜてきたぞ? ユナはやるなあ」
愛の告白のつもりはなかったですけれど。
でもクリフ様のことは大好きです。
ぽっ。
「でも最近はユナが喜んでくれるだろう? 軽口の効能を父上も認めてくれててさ。僕もありがたいの」
「まあ」
クリフ様にありがたいと言っていただけるのは嬉しいです。
わたしでも役に立つことがあるのですね。
少し自信になります。
「ユナは可愛いよなあ」
「いえいえ、クリフ様こそわたしを選んでくださるなんて。あの、お慕い申しております」
「突然ぶっ込んでくるからユナは油断できないなあ。僕もお返ししなければならないってことかな?」
「よろしくお願いいたします」
「僕とユナは前世からの縁なんだ」
「えっ?」
全然明後日の方向からの攻撃ですよ。
あっ、いえ、クリフ様のあの顔はいつもの冗談のようですね。
「前世でも僕達は恋人同士で。来世でも一緒になろうねって約束していたんだ」
「ファンタジックなお話ですねえ」
「でもさっきの、姉上がお化け屋敷でボロボロの話は誰にも言わないでね。姉上は前世で大魔王なんだ。怖くて」
うふふ、ちゃんとオチまでつけてくれるのですから。
今夜の夢では大魔王の変顔でも見てしまうのかしら?
何げない日常の、何でもない会話が素敵。
いつまでも楽しい関係でありますように。
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