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恋が終わった再確認

作者: P4rn0s
掲載日:2025/11/05

彼女と別れたあと、友人たちは妙に優しくなった。

飲みに誘ってくれたり、しつこいくらい「次はもっといい子見つかるよ」と言ってくれたり。

けど、ある日その中のひとりがふと笑いながら言ったんだ。

「でもさ、お前の元カノ、よく見たらたいして可愛くなかったよな」

その瞬間、俺は、心のどこかで何かが軋む音を聞いた。


たしかに、彼女は雑誌のモデルみたいなタイプじゃなかった。

鼻は少し丸かったし、眉の形もどこか不揃いだった。

でも、笑うとその全部がやわらかくほどけて、

一緒にいるとそれが世界でいちばん自然な顔に思えた。

好きだったときの俺は、彼女の顔の「整い」なんか一度も気にしてなかった。

むしろ、その丸みとか不揃いが、彼女そのものの輪郭を作ってた。


だから、別れたあとに「たいして可愛くない」と言われても、

俺にはどうしてもその言葉が嘘くさく聞こえる。

それは、彼女の顔の評価じゃなくて、

「お前、もうあの恋から抜け出しただろ?」っていう確認みたいに感じる。

まるで、彼女を貶すことで俺を慰めようとしてる。

でもそんな言葉じゃ、慰めにもならないんだ。

俺が恋してたのは、顔の良し悪しじゃなくて、

そこに浮かんでた「優しさ」とか「照れ」とか、

そういう目に見えない部分だったから。


たぶん、人は別れたあと、自分の感情を整理するために相手を「下げる」。

「性格が悪かった」とか「冷たかった」とか、

それならまだ分かる。

一緒に過ごす中で相手の本性を見たとか、

お互いのズレを痛感したとか、そういうのは現実だ。

だけど、容姿を批判するのは、

まるで「自分が選んだこと」を否定したくて仕方ないみたいに見える。


だって、好きだった頃に「可愛い」って言ってたのは、

嘘じゃなかったはずだ。

あの時は本気でそう思ってた。

その瞬間の感情まで全部なかったことにして、

今さら「可愛くなかった」なんて言葉で塗りつぶすのは、

自分の心の履歴を汚す行為にしか見えない。


俺は別れてからも、たまに彼女の笑顔を思い出す。

それは未練とかそういうものじゃなくて、

単に記憶の中の風景として残ってる。

駅のホームで風に髪を持っていかれて、

それを手で押さえながら笑ってた姿とか。

あのときの光景は、容姿なんかじゃなくて「温度」だ。

思い出すたびに胸の奥が少しあたたかくなる。

それを誰かに「可愛くなかった」なんて言われたくない。

俺の記憶の中では、ちゃんと彼女は美しい。

たぶん、それでいい。


恋って、多分そういうものなんだと思う。

好きだった時間があるなら、その人を下げる必要なんてない。

悪かったところも、嫌いになった理由も、

どれだけあっても、

「好きだった」という一点の記憶は嘘じゃない。

それを守るのは、もう誰のためでもなく、

自分の心のためだ。


だから俺は、彼女のことを悪く言わない。

もう連絡も取らないし、もう会うこともないけど、

誰かに「可愛くなかったよな」と笑われたときは、

ただ静かに笑ってこう言う。


「いや、俺は好きだったよ」


それだけ言えれば、もう十分だ。

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