またあなたに撫でられたい ~猫転生~
「死んだにゃ?」
「はい、貴方は天寿を全うして死にました。ここは次の生を決める場です。」
優しい笑顔で光り輝く女性が話しかけています。
ここは転生の間、死者が辿り着く場所。
「お母さんにはもう会えないにゃ?」
「お母さんというのは貴方を生んだ猫のお母さんですか?貴方を育てた人間のお母さんですか?」
「人間のお母さんにゃ」
「人間のお母さんに会う方法は二つあります。一つは地球にまた転生する方法です。二つ目は、天国に行き天国から見守りお盆のときなどに下界に降りて会いに行く方法です。」
「んー難しいにゃ、またナデナデして欲しいにゃ」
「そうですか、ナデナデ希望ですと転生ですかね、地球にまた猫さんとして転生してお母さんにお世話になるしかないですね」
「じゃあそれがいいにゃ!」
「分かりました。では手続きをします」
カチャカチャと女性は天空に向かって指を動かします。
「手続きが終わりました。すぐに行きますか?天国でゆっくりしますか?」
「すぐ行くにゃ!」
「言い忘れましたが天国でお母さんを待って、天国にお母さんが来た時に撫でて貰うというのもありますよ」
「いいにゃ!すぐがいいにゃ!」
「分かりました。では次も素晴らしい猫生を」
「ありがとうにゃ!」
都会のアパートで泣きくれる一人の女性がいました。
「もう猫は飼わない・・・」
傷がまだ癒えたとは言えないそんなある日、女性はSNSで里親募集の投稿を目にします。
一度見た子猫の写真が忘れられません。
仕事をしていても、お風呂に入っていても、その写真に写った子猫の姿が頭を占めてしまいます。
「猫は飼わない・・・」
気になってしょうがなく投稿者のアカウントでその子猫がどうなったかを毎日調べてしまいます。
その子猫は気性が荒く里親募集で来た人間に懐くことなく冷たい対応をして追い返してしまうそうです。
投稿者は困り果て、このままでは施設に送らなければならないと言います。
「猫は飼わない・・・でも・・・」
勇気を出して子猫に会いに行くことにしました。
「こんにちわー」
「あっ来ていただけたんですね。良かった、本当に気難しい子で貰い手がいなくて」
「はい、ちょっと会って見たいんですけど」
「こっちです」
リビングへ案内されると、ケージの中で1匹のトラ柄の子猫がスピスピと寝ていました。
「この子です」
「はい」
スピスピと寝ていた子猫がハッと起き上がります。
そして女性を見ると一言。
「にゃ~」
女性の目から涙がボロボロと零れ落ちます。
ケージの中から外に出してくれとガリガリと子猫がケージをひっかきます。
投稿者がケージを開けると子猫は勢いよく女性の元に行き、泣いている女性を不安そうに見上げます。
「あっ、あのこの子を連れてっていいですか?」
泣きながら女性が言うと、投稿者も笑顔で言います。
「この子がこんなに興味を示したお相手は初めてなので是非」
「ありがとうございます。ねえ一緒に暮らそ?」
「にゃ~」
猫と女性の暮らしが始まりました。猫は撫でられるのが大好きでいつも頭を女性にこすり付けておねだりしています。
女性は忙しいときでも少し困った顔をしながらも優しく撫でました。
「にゃ~」
おしまい。
お読みいただきありがとうございました。