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蝦夷王国1

天文14年(1545年秋)14歳


浮桟橋に接舷した後、乗船していた人たちが次々と船から降りていく。それが終われば大量の積荷や家畜が次々下ろされていく。積荷の運搬は大八車だ。道路も幅広く整備されている。城までの道を、大八車が2車線で行き交いながら、荷物がスムーズに運搬されて行く。


道路の舗装は折を見て俺がやっていこう。


案内を担当する兵士に連れられて、船から降りた重臣一族たちや兵士と文官に移住希望者たちが城に向けて移動を開始する。その後ろに荷物を運搬する大八車がついていく。オヤジたちと特殊部隊は周辺調査と管理事務所周りの警備を開始する。


管理事務所に残っているのは、俺の家族と平井定武に重臣たちの妻や娘たちと北条家の御一行である。先行して城に移動する者たちを見送りながら、残った者たちでお茶を飲みながら一息入れている。


やがて管理事務所の前に10台の馬車が到着する。前回来た時に馬車を『至高の匠スキル』で創造しておいたのだ。全車とも板バネクッション付きだ。牛車よりは乗り心地が良いと思う。


「では、皆さん馬車で城に向かいましょう」

「それにしても、大きな城ですな」と、定武が驚いたように言う。


「あの土手は長さが約550間ある。土手で囲われる中が大きな街になる予定だ。街の中央に宮殿が建っている。蝦夷国が外国であることを示すために、宮殿の形はあえて南蛮風にしているのだ。これから宮殿に移動するので、北条家の皆様も楽しみにしていて下さい」と城の説明をする。


スタイリッシュな西洋風の馬車にも皆が驚いている。城までは馬車が必要という距離ではないのだが。皆に喜んでもらうためのアトラクションとして用意したのだ。妻たちは大はしゃぎだ。喜んでもらえて満足だ。


馬車はゆっくりと城に向かって進んでいく。妻たちは馬車から見える外の風景を面白がって眺めている。やがて馬車が土手に設けた門をくぐる。


門を潜った後、壁の内側に広がる風景を妻たちがじっと見ている。


「土手で囲われた内部がとても広いわ。住居や兵舎らしいものや、畑や牧場もある。道路も整備され、それぞれが整然と区分けされている。これから住民が増えていけば、立派な王都に発展していくことは間違いないわ」と、妻たちが喜んでいる。


土手に設けた門から、宮殿に向けて真っ直ぐな道路が伸びている。その道路を馬車が進む。宮殿が近づいてくる。日の本では見たことのない建物の形状に皆が唖然としている。理解は追いつかないが豪華な建物だという事だけは全員が納得してくれたようだ。


馬車が宮殿に近づいていく。宮殿は金属製のフェンスで囲われている。この金属製のフェンスと宮殿と宮殿内の庭園とが見事に調和している。王の持つ権力を象徴するのにふさわしい建物となっている。


金属製のフェンスの港側の門が大きく開かれている。そこを馬車で抜けると宮殿に向かう道路を挟んで美しい庭園が広がっている。この道路は石畳なのだ。その道路の両脇に兵士たちが整列し頭を下げている。兵士に続いて居残り組の若手武将たちが並び、最後尾は幸隆だ。


馬車は宮殿の入り口近くで停車する。妻たちや北条家の人たちが、順に馬車から降りていく。


「おかえりなさいませ。玄武国王」幸隆が代表して挨拶をしてくれる。続けて他の者達が口々に「おかえりなさいませ」と喜んでいる。


「色々驚きすぎて頭の中の整理がつくまで少し時間がかかりそうだ。」と定武が呟く。


「これが蝦夷王国の宮殿になります」と俺が説明する。女性たちは全員が目を輝かせている。美しいという感覚は万国共通のようだ。早く中に入りたいようだな。


平井定武や重臣たちの妻や娘たちを、それぞれの屋敷に藤吉郎が如才なく案内していく。


「さあ俺の宮殿に案内するぞ」と、俺の家族や北条御一行を宮殿内に案内していく。

「私たちは、こんな立派な建物に住めるですか」と、普光が笑顔だ。


「宮殿とは南蛮では、王が住む建物のことを言うのだ。宮殿の壮麗さはその国を治める王の力を示すことになる。どうだ。気に入ってもらえたかな」

「早く中がどうなっているのか見てみたいです」普光だけでなく、女性陣一同の目がいっそう輝いている。まあ洋風の屋敷とか見たことないだろうしね。ぜひ楽しんで欲しいものだ。


俺は皆を連れて宮殿の入口を潜る。このエントランスホールにはシャンデリアを飾っておいた。これだけでホールの見栄えが格段に良くなっているだろう。床は大理石にした。要所に置いた大きな花瓶には花を生けさせている。


北条家御一行に向かい「まずは順番にそれぞれの部屋へと案内させるので。部屋で寛いで下さい。荷物は後で部屋に届くので御安心下さい」と説明していると、走って戻ってきた藤吉郎と案内担当がテキパキと案内を始める。如才ないな。


家族たちは俺自身がそれぞれの部屋に案内していく。各部屋は大理石の床に、広いベッド、なんたってカーテン付きガラス窓だからね。日の本にも西洋にもないはず。花を飾る大きな花瓶もある。妻たちは喜ぶのを通り越して固まっている。まあそのうち慣れると思う。案内している俺が一番うれしい。


最後に俺は一番立派な部屋に普光を案内する。「普光、まずはこの部屋でゆっくりと寛いで欲しい。侍女達を呼ぶときは、そこの呼び鈴を振れば良い。侍女の皆さん、後はよろしく頼む。俺は一回りしてまた戻って来る」


「玄武様、この宮殿は素晴らしいですね」

「普光、蝦夷国は日の本からみれば外国になる。あえて南蛮風の建物にしてみたのだ。日の本の建物とかなり違うであろう。桔梗、桜、千代女、百合そして早川も同じことを思っておるだろう。食事まで時間がある。家族全員でこの建物を見学して回ってはどうだ。」


「是非その様にさせていただきます」

笑顔が可愛いぞ。気に入ってもらえたみたいだな。


彼女たちは船の中で仲良くなっているので、キャア、キャア言いながらいろんな部屋を見て回ることだろう。

これからも仲良く過ごして欲しい。





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