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蝦夷王国への引越

天文14年(1545年秋)14歳


山科のおっさんのアドバイスをもらいながら。いやアドバイスを1つ1つお金で買いながら。普光女王の降嫁に伴う一連の式を終えることができた。

何もかも知らないことだらけで、俺も家臣たちも疲れ切っている。


しばし休養が必要だ。


普光が無事に俺の妻となった。すかさず信長を俺の養子にすることを宣言する。家臣達には事前に説明し納得していたので、誰も驚くものはいない。

信長への代替りを無事終えると、俺は全ての官位を辞した。

そして山科のおっさんから、信長に従五位上北畠伊勢守への叙任が告げられる。


世間から俺はどう見られるのかな? 


恐れ多くも主上から嫁をもらっておきながら、すぐに隠居して領内のどこかで隠棲する訳だから。かなり変な人だよね。


しかも14歳で隠居は、ちょっと無理があるかもね。でも体制が整うまで蝦夷国の事は伏せておかなければいけない。


神童はそんなもんだと思ってくれると良いね。


それに色々やっておかないといけない事があるのだよ。


俺は婚姻で親戚となった人たちや、その一族すべてを引き連れて蝦夷国に行く予定にしている。その理由は、俺が蝦夷国のことを宣言した時に、親戚になった人たちが危険な目にあうといけないからだ。


例えば平井家だよね。平井定武には隠居して嫡男に家督を譲ってもらった。定武とその妻や次男や希望する関係者は、ごっそり蝦夷国に来てもらうことにする。


家督を譲られた嫡男も流石に直ぐには難しいが、タイミングを見計らって蝦夷に来てもらうつもりだ。定頼さんはおかしなことをする人物ではないが、義賢は何をするか判らないからな。


蝦夷国からの海産物などを商社正直屋から販売し、そのお金で、米や麦や蕎麦を大量に購入する。また伊賀からの家畜類もたくさん詰め込む。


学校の卒業生の文官100名、常備兵2000人と移住希望者を500人乗船させ、日本丸50隻が蝦夷国に向かう。いつものようにオヤジたちと特殊部隊は俺に同行だ。


蝦夷国では大きないくさはないと思うので連れて行く常備兵2000人には、黒鍬衆の手伝いで建設関係の仕事もやってもらうつもりだ。移住希望者については、今後も伊勢と蝦夷の間をピストン輸送する予定だ。


日本丸は俺が松坂に戻った時から定期的に、至高の匠スキルで日本丸を計50隻になるまで少しずつ創造しておいたので、松坂港にも日本丸が50隻残っている。忍者リクルータの働きにより海兵も随分増えたしね。操船する船員不足の問題はないと思う。


その分、地方の何とか水軍とか名乗っている海賊衆が大きく減少しているはずだ。特に瀬戸内海の水軍さんをごっそりとね。ますます海戦とかなさそうだな。


今回の航海は防寒グッズに加えて、羽布団なども山ほど積み込んでいる。寒い国だから羊毛が欲しところ。落ち着いてから直接外国と貿易して羊も手に入れよう。


新たに妻になったウヌカルだが、妻たちと仲良くできているみたいで安心した。特に母上がウヌカルをそばから離さない。遠くからたった1人で来てくれた女の子だけに、自分がウヌカルの親代わりだという責任感に火がついているみたいだ。

ありがとう母上。


ウヌカルをどこにでも連れて歩き、京の着物やアクセサリー類とかウヌカルの両親へのお土産とかを色々買ってくれているみたいだ。母上助かります。おかげで妹の幸ともずいぶん仲良くなっている。


それに母上と幸を言葉の先生にして、ウヌカルの日本語もかなり上達してきている。感謝だ。


準備が整ったようなので、蝦夷に出発だ。今度は家族みんなで移動する。妻たちは念願の船に乗れたことでウキウキしているようだ。


まずは伊勢から大島までだ、妻も含め新しく船に乗った人達は、海から見える東海道の景色、特に富士山の絶景に大喜びだ。富士山は何回見てもやっぱり良いね。


オヤジたちはやっぱり飲んでいるな。


順調な航海が続き、大島の港に到着する。

いつものように、大島では補給と休憩を行うことにしている。家族たちは大島でゆっくり休んでいてもらおう。大島からの風景も楽しんで欲しい。


残念ながら、俺は北条氏康さんと大事な話がある。日本丸に乗船し、護衛とともに小田原港に向かう。


小田原港では、長綱さんが待っていてくれた。そのまま小田原城に移動する。俺は小田原城の小さめの客間に座っている。氏康さんと1対1のサシで話がしたかったのだが、氏康さんの横に当然のように長綱さんが座っている。


「私は北条家には、この先もずっと味方でいて欲しいと思っています。それは北条家が北畠家と同じく民を大切にする国だからです」と俺は切り出す。


「もう既に同盟を結んでおるではないか」と、笑顔の氏康さん。


「私は官位を全て返上し、北畠家を信長に譲りました」

氏康さんの笑顔が消える。


「どういう事か分かるように話してくれますか」と、穏やかな顔の長綱さんから話しかけられる。


俺は蝦夷王国の建国の話や主上との話を2人にする。


「お主は本気で戦国を終わらせ、この国を変えたいと思っているのじゃな」と、氏康さんが俺の目をじっと見ながら言う。視線が離れない……重い雰囲気だな。まあしょうがないか。


「もう一度言います。私は北条家にはずっと味方でいて欲しいと思っています。そしてどこまでも北条家を、そして氏康殿を信じます」


千世ちよという歳の離れた妹がおる。千世を信長の嫁に出そう。早川の嫁入りに変更はない。これが北条家の答えじゃ。これから蝦夷に向かうのだろう。早川を連れて行け。長綱と氏政を同行させる。蝦夷で祝言を挙げてやってくれ」


「ありがとうございます」

俺は深く頭をさげた。氏康さんありがとう。


その後も俺は話を続ける。そう、ここからが重要なのだ。


「北条家と北畠家、蝦夷王国は、より親密な関係になっていきたいと思います。そのために氏政殿を私に預けていただけないでしょうか。蝦夷国で北畠家の内政を学んでいただきたいと思います」


「北畠家では『家臣に土地の領有をさせず、役職と仕事に見合った俸禄を銭で支払う仕組』を導入しています。個別の領地をそれぞれの領主の裁量で経営させるよりも、国全体で方針を決めて銭と人材を集中投下する。投下された銭と人材で産品を開発したり、産品を運ぶための街道や倉庫を建設したり、河川改修などをする方が効率良く国を豊かにすることができるからです」


「個別の領地ごとにそれを行う事は困難です。結果は北畠家を見ていただければ一目瞭然です。北条家にもこのやり方を取り入れていただきたいと思います。しかし歴史ある北条家でそれを行うのは難しいと思います。そこで氏政殿に別家を作っていただき、その考えに賛同いただける家臣の方に、氏政殿を支えていただきたく存じます」


「その考えに儂も同意する。氏政の別家の件も良いだろう。賛同して付いて行ってくれる家臣もいると思う。しかし具体的にどうするのだ? 氏政が治める国がなくては別家を作れないぞ」


「関東管領の上杉憲政うえすぎ のりまさにひと働きしてもらうつもりです。越後と上野を取りましょう。北条家は武蔵をどうぞ」


「なんだか面白そうだな。詳しく聞かせてくれ」


その時、氏親君がいきなり部屋に入ってくる。氏康さんに怒られているが、俺に病気の件で礼を言いたかったようなのだが、部屋に近づいた際に俺達の話を聞いてしまったそうだ。


氏親君が我々の横に進む。そのまま土下座スタイルとなる。


「話を立ち聞きして申し訳ありませんでした。しかしそのお役目をこの氏親にやらせて下さいませ。三蔵殿には返しきれない恩義があります。本来であれば私は病気でとっくに死んでいるのです。ですから、北条家は氏政が継ぎ、私が別家を立てても問題ないのではないかと思います。本来はそうなったはずですから」


「嫡男であるそなたを、いきなり廃嫡するわけにはいかぬぞ」


「越後と上野の領地であれば、今の北条家の領地とさほど変わらないのではないかと思います。『越後と上野の領地が手に入ったなら』ということでいかがでしょうか? 伏してお願い致します」


「氏康殿! 私はその別家には引き続いて陸奥と出羽まで、つまり蝦夷王国のそばまで、領地を広げていただきたいと思っています」


「すごい話だな。越後と上野の領地が手に入ったらという条件で認めようではないか。北条家も領地を増やすのは武蔵までとしておこう。将来を考えればその方が良いのであろう?」


会談の後、俺は忍者特別速達便で、事の成り行きを信長に知らせる。優秀な信長君だ、色々指示しなくても後はきちんとやってくれると思う。上杉憲政対策は文で詳しく書いておいた。


日本丸には、長綱さんと氏親君、そして早川さんと侍女達に嫁入り道具、なぜかお母さんの瑞渓院さんまで乗船してきた。


大島を出港し、数日の内に函館の港が見えるところまで移動することができた。


驚くことに北条チームは誰も船に酔わない。氏親君は本当に元気になったな。航海は順調で、今、日本丸から遠くに見えている港には土手で囲まれた洋風の建物が建っていて、その屋上には旗が棚引いている。


もう少し近づけば、我が国の国旗である玄武のデザインが見えるはずだ。


まだ外国船が来るわけもないが、この管理事務所では将来外国からの船の検疫や登録関係を行う事務所になる。交易に関するルール作りを急がないといけないな。







ここまで、お読みいただきありがとうございます。

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