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建国2

天文14年(1545年春)14歳


船が入江に近づくのを見ながら、前世の蝦夷の歴史を思い出している。今から100年ぐらい前、渡島半島の津軽海峡側あたりに、津軽安東家が道南十二館どうなんじゅうにたてを作り始めたぐらいから、日の本側から蝦夷地への進出らしきことが始まっている。


蝦夷地への進出といっても、気候が厳しく火山灰で痩せた蝦夷の地で、農地を作り石高を増やそうとしたとは思えない。


広大な蝦夷地で農作物がたくさん作れるなら、とっくに蝦夷に強力な大名が生まれているだろうし、鎌倉幕府ができる前に蝦夷国のようなものも建国されていたと思う。


津軽安東家による蝦夷地への進出の目的は、アイヌとの交易が主だったと思う。しかし津軽安東家はアイヌに対して不平等交易をやっていたのではないかと思う。


そういう大名ばかりだからね……

だから津軽安東家と渡島半島に住むアイヌとの間でいくさが発生したのだと思うよ。


このいくさは津軽安東家が勝利するのだが、もしもアイヌ側の武器の装備が充実していたら違っていたかも知れないね。


ちなみに道南十二館に関する支配権だけど、津軽安東家から蠣崎かきざき家が支配権を奪ったようだ。日の本の大名は、こんなことばかりやっているよね。

奪え! 奪え! 

……いつもそうだ……


いずれにしても現状は、蠣崎家による渡島半島の実効支配がさらに強まっているだろう。つまり不平等交易がさらに不平等になっていると思う。そうなると蠣崎家とアイヌは今後も揉め続ける。この時代の大名は奪うことしか考えてないからね。


上手くアイヌと共生できる訳がない。


俺が蝦夷に来たことで、蝦夷の歴史が変わるだろうね。いや俺が変えてしまうのよ。アイヌさんに幸せに暮らして欲しいからね。


小早船を日本丸から下ろして、まずオヤジたちと特殊部隊に先行して上陸してもらう。オヤジたちが岸に着いたら、去年居残りしてくれた忍者さん達が走って来る。オヤジたちの前に跪いているな。その後色々話し込んでいるようだ。


何かあったのかな?


俺も武将達と護衛を連れて上陸だ。去年居残りしてくれた忍者さんたちによると、蠣崎家の兵が苫小牧近辺のアイヌ達に、とんでもなく不利な条件の交易を強制しているらしい。言う事を聞かなければ「蠣崎家の兵がアイヌの村を焼き払う」と、言っているらしい。


アホ大名のやる事はどこでも同じだ……

『自分たちが食うために人のものを奪う』の繰返しだ……当たり前の行動だと思っているからなお悪い。

良心の苛責もないだろう。


しかしこれはチャンスかもしれないぞ。まずは村の長老と話をしよう。


俺たちは前回来た村に、大量のお土産を持って移動している。居残りしていた忍者達は、必死で言葉を覚えたようで、かなり細かいところまで通訳ができるようになっている。

忍者優秀だよ! 


村に到着し宴会が始まる前に、村の長老が「この村だけでなく蝦夷に住む全ての長老達が、蠣崎家とのいくさを決意している」と、険しい表情で教えてくれた。

前回の交易で村正製の刀とか槍とかを、昆布とかと大量に物々交換したからな……


俺達が今後も武器を提供してくれると思ったみたいだな。

『武器をくれ〜』なのかな。やっとやる気になったか。


俺の存在が、歴史に少しずつ影響を与えているね。


アイヌは自然と調和しながら、主に森で平和に暮らす民だ。当然ながら争いごとは得意としないはずだ。いくさとは無縁な平和な民なのだよ。


そういう生き方を、どこかのバカ管領も見倣ってもらいたい。その人達がいくさを決意するとは余程の事なのだよ。


歓迎の宴が始まった。こちらから持って行った焼酎は、今回もお湯割が大人気。お酒コミュニケーションで和らいだ雰囲気になった頃に俺は長老に聞いてみた。


「この辺りに、俺たちが住んで良い場所はないだろうか?」

「何のために住むのだ!」と、とたんに怪訝な顔になり、警戒しながら長老が聞き返してくる。


「俺達はこの地で作物を作り平和に暮らしたいと考えている。もちろんアイヌの暮らしは尊重する。アイヌには絶対に迷惑をかけない。何とか許可してもらえないだろうか?」


長老は、蠣崎家のようなことになるのではないかと大警戒中だ。

俺はここで伝えておくべくだと思い。


「俺達はアイヌと共存共栄しながらこの地を国として作り上げたい。独立した国として蠣崎家のような横暴があれば、それを跳ね除けたいと思う」


「アイヌは狩猟や漁業で生計を立てるのであれば、俺たちは農業や工業や貿易で生計を立てようと思う。アイヌの今の暮らしを尊重するし、お互いに共存共栄して生活していきたい」


「もしもアイヌが反対なら、この話は聞かなかったことにしてくれ」と、長老に話をしてみた。


どういう言葉が帰されるか内心ドキドキだ……

沈黙だ……怖いな……

答えを待っている時間が長い……


「お前達は蠣崎家とは違う人間のようだな。今の話が本当で、我らと共存共栄できるなら。お前達と一緒にやっていっても良いと思う。ただし他の長老の意見も聞いてみないといけない」と、返答してくれた。

良かったわ。安心した。


長老が続けて話す。

「アイヌは主に狩猟する民だ。山や河川や海で狩猟や漁業をしている。お前達が住むところだが、アイヌの暮らしを邪魔しない平地なら、どこに住み着いても良いぞ。ただし先に言っておくが、ここの土地は痩せていて作物は育たちにくい。それでも良いのか?」


「俺たちにはそう言う土地でも作物を育てる技術がある」

「それは我らにとって大変ありがたい事だ。アイヌとお前達は共存共栄できそうだな」と、長老が微笑む。


「俺たちはアイヌの味方であることを証明するため。蠣崎家をこの地から叩き出すつもりだ。俺たちを仲間と認めてくれるのなら、今後は俺たちがアイヌを外敵から守る」


「それは大変ありがたい話だ。今の話を含め共存共栄の話を長老全てに伝えておく。しかし反対する長老が1人でもいれば共存共栄の話はなしだぞ。そうなっても悪く思わないでくれ」と、申し訳なさそうに言う。


「それで構わない。是非長老達に話をして欲しい。もしも共存共栄の話が流れても文句は言わないと約束する」


……渡島半島の方を指さしながら……

「もしも共存共栄ができるなら、蠣崎家を追い出した後、蠣崎家が支配するあの半島の先あたりに住み着きたいと考えている。仮にこの話が流れても、そこに我々が建設する港を使い、アイヌと交易させて欲しい。もちろん公平な取引をするつもりだ」と、説明した。


そういう話なら、俺達が蠣崎家と代わるだけだし、農地を作るというならアイヌにとって損はないはずだ。


長老の険しい表情がなくなっているな。


「共存共栄ができるなら、移住者を増やして平地を開墾することで農地を増やすつもりだ。その場合にもアイヌの狩猟の邪魔にならないように注意を払うつもりだ。何か問題が生じればその都度話し合いたい」


「そうしながら我らが作る農作物と、アイヌが狩猟した獲物の肉や毛皮、魚、燻製などを交換して生活ができればと思っている。また移住者の数だが、アイヌの生活に影響がでない範囲でしか増やさないつもりだ」


「我々にとっては、文句のない提案だと思う」と、長老が温和な顔になる。


「まずは我々の話が嘘ではないことを示すために、明日にでも、蠣崎家を渡島半島から叩き出すための行動を開始する。長老たちからの良い返事を待っている」


「ものども。明日は蠣崎家を蝦夷から叩き出しに行くぞ、今日はしっかり英気を養ってくれ」

「おお〜」


翌日、俺たちは日本丸に乗り込む。30隻を率いて渡島半島の道南十二館の攻撃に向かう。渡島半島の海岸線をゆっくりと移動し、道南十二館らしき建物を見つけて行く。見つけ次第、グレネードランチャーと迫撃砲による攻撃により片っ端から破壊していく。


数を数えて確認し、12ヶ所全ての砦を全て破壊した。

もちろん海岸に停泊している小舟も全て破壊しておく。

悪いがアイヌと揉めている蠣崎家には、蝦夷地から消えてもらう。


その後、前世では函館と呼ばれていた場所に、武将たちと兵士2000人と移住者100人、黒鍬衆300人を小早船で海岸に降ろしていく。もちろん食料もだ。


まずは、森可成と工藤祐長に兵1500人を率いてもらい、函館近辺の掃討戦を行う。

真田信綱と嶋清興も経験を積ませるため一緒に行かせる。


函館近辺の掃討戦が終われば、引き続いて、道南十二館近辺に向けて蠣崎家の生き残りの掃討戦だ。アイヌと揉めている蠣崎家の臣従は、いっさい認めない方針でいく。


問題は、渡島半島の道南十二館近辺に住み着いた人たちだ。まず商人については出ていってもらおう。農民についてだが、作物の作りにくい場所なので、いてもそんなに数がないと思う。職人についても同様だ。


彼らの中で、津軽に戻りたいものは商人とともに津軽に日本丸で運んでいくし、渡島半島に残りたいものは、函館に作る街に移動してもらう。ただしアイヌと揉めないよう再教育をしっかり行う。


函館に近い大名で大きなところは南部家と津軽家かな。身の程知らずにも攻めてこられては困る。攻めて来るなら壊滅するが、まずは様子見だな。忍び調査隊を派遣しておこう。







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