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側室がいっぱいの正月

天文14年(1545年冬)14歳


今年の作物の収穫が増加している。


豊穣神に感謝の祈りを捧げれば、神の加護により収穫が増えるが実現した訳だ。

人とは現金なもので結果が確認できると行動を加速する。

豊穣神様の現世のご利益の話を聞きつけた信者たちが、挙って穣神様に祈りと感謝を捧げるようになる。


そりゃそうだよ。来世より現世のご利益に決まっている。


そうなると当然寺社から信者がどんどん減っていく。寺社の信者引き止め文句は『宗旨替えなどすれば御仏の祟りがあるぞ』といったところか。『御仏が祟る』と脅した時点で自らの宗教を否定することになる事に気が付かないのかな……


『無知な信者など、寺社に都合良く利用するだけ』と考えている寺社は、『御仏が祟る』だの『貸した銭を返さないと地獄に落ちる』だの脅し言葉だけで信者を引き止めようとしているようだ。


しかしこの脅しによる引き止め工作は、どこの寺社も上手くいっていないようだ。

そりゃそうだと思う。


俺の領内には、規模の大小はあるが色々な宗派の寺がある。一向宗みたいに信者を扇動していくさをするような危険な宗教は排除するが、人の暮らしに宗教は必要と思っているので、ややグレーな宗派の寺もそのままにしている。


俺は基本的に信教の自由は尊重しているのだよ。


『宗教の教義に基づいて、信者の悩みや苦しみに寄り添う』というような宗教本来の活動している寺からは、信者がいなくなったりしていない。しかし『信者を都合良く利用するだけのボッタクリ寺社』からは信者がいなくなっているようだ。


当然の流れだと思う……

この機会に領地の寺社がまともな宗教だけになってもらえば助かる。忍者さんには『ボッタクリ寺社の悪行の数々と題したマンガ』を悪徳寺社の近隣に貼りまくってもらっている。


学校で文字を習った子供たちが、面白がって色々な場所でマンガを読み上げている。


とにかく悪徳寺社には退場願いたい。まともな寺社は余計な副業しなくても存続できるように保護しよう。今後は寺社の金貸し業は禁止にする。金貸しは登録免許制にするかな……


正直屋金融だけに許可するか……

また系列店が増えそうだな。商人世界の天下統一は近いかも。


『信者を都合良く利用するだけのボッタクリ寺社』が俺のところに、『営業妨害だ』とか『祟があるぞ』とか的外れな文句を言ってきたら忍者警備隊の出動だ。

問答無用で国外に放り出す。


放り出す先はマムシのところが良いかな。

それとも義元か信玄のところにするかな。ムフフ……


悪徳寺社を追い出すのに、いくさ何かいらない。

情報戦と経済戦で十分なのだよ。


現世のご利益を与えることは、豊穣神様が確信犯で仕組んだのかな?

 

「神は直接人の世界には関われない」と、言われていたが、このあたりはグレーなのかな? まあ豊穣神様は、あまり深く考えない神様みたいなので、実際のところ良く判らない。


ただの思いつきのような気もする。いずれにしても俺には関係ないから黙っておこう。豊穣神様が、さらに上位の神様から怒られなければ良いのだが。


信者が増えて豊穣神様の力が増えていく事は、俺の力が増す事になるので大いに結構だ。


ここらで領内の内政の事を考えるのは止めておこう。


お正月だよ。やっと落ち着いたお正月を迎えられるぞ。

松坂城にみんなが集まってくる。年賀の挨拶だ。俺の横には側室達が座っている。桔梗、桜、千代女、百合だ。しかし側室がさらに増える予定なのだが。


正月なので、日頃の感謝を込めて俺がプロデュースした料理が配られていく。


まずは蝦夷から持って帰ってきた昆布で出汁をとった雑煮だ。前世なら普通の雑煮だけどね。出汁が良く効いていて旨い。この時代では贅沢だ。それと正月用に澄酒も作ってみた。


ドブロクに灰を入れたら澄酒ができたという記事は前世で読んだことがあった。灰を入れようかとも思ったけど、至高の匠スキルがあるので、活性炭濾過器を作成してみた。

『澄酒。最高!』という出来になっていると思う。


集まった呑兵衛さんからは予想通り『澄酒。最高!』なのだが、澄酒を量産する予定はない。やはり米は今のところ主食だ。主食の食料をどんどん酒にするのは飢饉の時に危険だと思う。


この時代の土木技術など皆無だから、まともな治水工事なんてできる訳ない。ほとんど自然のまま放置だ。大型台風が来れば河川は氾濫して被害は甚大だ。


河川が氾濫すれば、蛇行した河川が真っ直ぐになるからね。大きな被害を受けると復旧するまで年単位で時間がかかる場合もある。


その間は米なんかできはしない。


澄酒は正月用ということで特別に作ってみただけ。


伊勢で人気の杜氏が作るドブロク酒を活性炭濾過器で、どんどん濾過して透明な澄酒を製造した。杜氏が仰天していたがどんどん作らせた。前世では当たり前の透明な純米酒がどんどん出来る。全部で100樽ほど作った。


澄酒は焼酎とは違う旨さがあるはず。なんたって香りが良い。辛口か甘口かって? 

俺が飲めないからどうでも良いのだよ。


純米酒で伊勢海老のお刺身を、塩でも醤油でも好みで味わう。それに何たって風魔宅急便で伊豆のワサビが届いているのだよ。山の渓流に自生しているやつだ。もう最高の正月料理だよ。


戦国時代は食えれば何でもOKの時代だからね。味わうなんて最高に贅沢だ。


いつも飲んでいる焼酎も旨いが、皆さんはここぞとばかりに、透明な澄酒を心から堪能している。俺は前世では焼酎派なので、焼酎頑張れと言いたい。関係ないか。


ワサビのお礼に、澄酒を北条家に10樽ほど送る。

『俺たち忍者仲間だよね』ということで、風魔さんにも別途2樽ほどお裾分けだ。

「ワサビありがとうね」と風魔宅急便の忍者さん達にも、それぞれに澄酒を大徳利で配る。


「次も必ず私が来ます」と皆が力強く答えていたけど。

次は競争率が高くなるかもよ。喧嘩しないで下さいね。


良い正月を送って下さいと文を添えて澄酒を30樽ほど主上に送った。

百合がいるので気の利いた歌を作ってもらい澄酒に添えてみた。加えて昆布と鮭も送っておいたから、きっと主上も喜ぶはずだ。


北畠家の重臣には1樽ずつね。残りは伊賀上野城と松坂城で保管する予定だ。

オヤジたちがこっそり飲むに違いない。


澄酒は時間が経てば悪くなるからね。別に良いよ。


後日、主上から俺に歌が送られて来ました。

当たり前だけど凄く達筆。松坂城の茶室に飾ってある。皆が喜んでいたな。百合には歌の勉強もしてもらうことにしよう。





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