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里見の海賊1

天文13年(1544年秋)13歳


目の前にグレネードランチャーや対戦車ライフルの訓練標的がいっぱい浮かんでいる。

安宅船に関船に小早船まで、大きいのから小さいのまで色々なサイズだ。多いのは小早船かな。


日本丸に積んでいる小型の小早船よりも、かなり大きな戦闘用サイズだな。戦闘員がたくさん乗れそうなやつだ。日本丸の小早船は運搬専用のコンパクト船だ。


海賊は、安宅船が5隻、関船が25隻、小早船が70隻の計100隻だ。

それにしても、本物の動く船で実戦訓練ができるなんて機会はめったにないぞ。

ありがとう里見さん。


里見の連中は俺の海軍衆が何を喜んでいるのか分からないだろうな。

まあ長綱さんも分からないだろうな。


折角の機会だし、短距離で敵船を全部殲滅しては勿体ない。


手旗信号で『距離をとれ』と指示する。

海軍衆は俺が何をしたいのか解ったのだろう。日本丸は旋回して後方に移動する。

フンドシおやじたちは獲物を逃がしてはならないと懸命に追いかけてくる。


あんまり速く移動して、追跡を諦められたら困る。

程々の速度に落として移動する。海軍衆も良く解っているな。


フンドシおやじたちは、俺達が逃げていると思い、黄色い歯を剥き出しにして喜び勇んで追いかけてくる。

「里見海賊が怖いのか! 逃げても無駄だぞ! イヒヒ!」と、大声を張り上げている。


良いぞ。このまま逃げないでくれ。

逃げたら俺達が追い駆けるからな。


ある程度距離が取れたところで、日本丸5隻が横一直線に並ぶ。

敵との距離は約600mか。

日本丸には俺が作らせた測距儀が載せてある。これで敵との距離が計測できるのだよ。


それにしても安宅船と関船は船速が遅いな。小早船は多少早く移動できるみたいだ。

先行してこちらに向かってくる。


「殿! 小早船との距離が500mに近づきました」

『目標、小早船。大型ライフル、撃ち方始め』の、合図を送らせる。


海兵には戦車の説明が難しいので、対戦車ライフルを大型ライフルと呼ばせている。大型ライフルの銃弾が小型船に次々命中していく。弾丸で船に大穴が空き沈没しているようだ。


貴重な実戦訓練なので、打ち手を変えながら1隻あたり3丁から同時に絞って発砲する。日本丸が5隻なので同時に15発ずつ発砲する。

それ以上発砲数を増やすと、ターゲットが直ぐになくなってしまうからね。


小早船70隻のうち40隻が沈むと、小早船は安宅船と関船の後ろに隠れようと移動を開始する。


『小早船への攻撃中止! 目標は右端の安宅船1隻と関船1隻! 大型ライフル、撃ち方始め』の、合図を送らせる。

大型ライフルとの銃弾が安宅船と関船に次々命中していく。


船に大穴がいくつも空き沈没が始まっている。

大型ライフルは大型の船でも有効のようだ。


「殿! 安宅船と関船との距離が400mに近づいてきました」

『目標は安宅船と関船! 中央の安宅船は攻撃するな。グレネードランチャー、撃ち方始め』の合図を送らせる。


グレネードランチャーは、1隻あたり30丁を搭載している。

したがって150発の弾を同時に発射可能なのだが、それだと直ぐに敵船が沈んでしまうため。打ち手を変えながら1隻あたり1丁に絞って発射する。


5隻なので5発ずつ同時発射となる。


中央の安宅船は大将が乗っているようなので残しておきたい、誤って当たらなければ良いのだが。


安宅船と関船が次々破壊されて沈んでいく。

残りは安宅船が2隻、関船が5隻となる。小早船は30隻だ。


攻撃停止の、合図を送らせる。


フンドシおやじたちは逃げればいいのに、こっちに向かい全力で猛接近しようと船速を上げる。

接舷して斬り込みがしたいのだろう。頭に血が昇っているのは解るけどね。


「殿! 安宅船と関船が距離300mに近づいてきました」

敵は火矢を放ってくるが、こちらには届かない。


『目標は安宅船と関船! 中央の安宅船は攻撃するな。爆弾クロスボウ、撃ち方始め』の合図を送らせる。


グレネードランチャーとの比較のためクロスボウによる榴弾攻撃に切り替えさせた。船が爆撃で次々四散する。グレネードランチャーの方が、クロスボウより取り扱いが楽なようだ。


残りは安宅船が1隻に小早船が20隻だ。


一旦、攻撃停止の合図を送らせる。

しかしフンドシおやじたちの猛接近は止まらない。


長綱さんも戦力レベルの差を理解したみたいで、今は戦闘を楽しんで見ている。

自らの眼力に狂いなしとか思ったのか、俺を見る目が獲物をロックオンした目になっているのだが。


敵の船団との距離が近づいてきたので、今度はライフルによる攻撃を開始させた。

死体だらけの船が20隻できあがった。これで攻撃は終了だ。


残された安宅船1隻の上で若い海賊が喚いている。その横で老練な海賊が若い海賊を宥めている。


「退却しましょう」と、宥めているのかな。あの若いのはフンドシじゃないし、少しだけましな羽織を着ている。あいつが大将だろう。里見の者かな。


反転するなら早くしろよ。間違って誰か攻撃してしまうじゃないか。

安宅船が退却を始める。

よっしゃ。港まで案内しろよ。


俺は、追跡を命じる。それにしても安宅船の船速が遅いな。もっと早く漕げよ。大型ライフルで脅してやろうかな。


追い抜きそうだぞ。


仕方がないので、大きな楕円状に旋回運動させながら追いかける。

よくこんなポンコツ船で海賊をしているものだ。可哀想になる。


やがて里見の海賊衆の基地らしき入江が見えてくる。場所は房総半島の先端に近いから、前世の館山あたりかな。小高い山の上には小城もある。測距儀で距離を測らせると1.5kmだ。迫撃砲の練習には丁度良い距離だ。


その前に安宅船を沈めておこう。

『目標、安宅船! グレネードランチャー、撃ち方始め』の合図を送らせる。

安宅船の海賊が次々海に飛び込んでいく。


安宅船は破壊されて沈没だ。


寒村は漁師の村のようだ。村も迫撃砲で穴だらけにしようかと思ったが、ボロボロの掘立て小屋に隠れて震えている海賊の家族らしき人たちを見ると、なんだか可哀想になり攻撃をやめる。


代わりに、小高い丘の上に建つ城に向けて迫撃砲の攻撃を開始する。

1発目を撃って微調整する。そこから全力で攻撃だ。


城の壁が崩れ、建物もボロボロに破壊されていく。暫くすると陣笠を振りながら武士が数名大慌てで走ってくる。


「降参いたす」と、大声で泣きそうに叫んでいる気がする。遠いから聞こえない。陣笠を振るのは降参の合図だったかな。


長綱さんを見ると頷いているので、攻撃を中止させた。


蝦夷に連れてきた小姓や若手武将達も、海戦の実戦は始めての経験だったと思う。

今回使用した武器は陸でも使えるので、今後の作戦立案に役立ててほしい。






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