そうだ北海道に行こう4
天文13年(1544年秋)13歳
「この力は豊穣神様から授かった力なのです。私はこの力と引き換えに『日の本から戦をなくし民を幸せにする』ことを神と約束することになったのです」
「それは、大変な約束をしたものだな。それにしても豊穣神様の豊穣とは我が北条家の名と同じではないか? 豊穣神様と北条家は不思議な縁があるような気がするぞ」と、氏康さんが感心している。
「北条家は、豊穣神様の加護を受けた北畠家と同盟を結びたいと思うがどうだ」と、言ってくれた。
同盟の細かいことはお互いの家臣が詰めることにしよう。たぶん港の利用と交易に関する取り決めになると思う。蝦夷貿易の中継地として大いに利用させていただきたいしね。
明後日には蝦夷に出港するという話を聞いて、早雲さんの子供であり。北条家の外交を担うとともに、氏康さんのご意見番的な存在となっている、北条長綱さんが、ぜひ船に乗せて欲しいと頼み込んできた。
あまり気乗りがしないので断るつもりで「船酔いは大丈夫ですか?」と確認したが問題なしと答えられてしまう。またも酔うのは俺だけかと思うと情けなくなる。
長綱さんが家臣らしき大男とさっさと船に乗り込んで来る。蝦夷に興味がというより、外交担当として俺がどんな人間か見極めるのが目的なのだと思う。
大男はきっと風魔さんじゃないかな?
しかも頭領の風魔小太郎さんだと思うな。何かオーラを感じるしね。小太郎さんの横に配下らしき若者が2人いる。そういえば小太郎さんも伝説の忍者だよね。この船には伝説の忍者が4人も乗っていることになる。
なんか凄いぞ!
ちなみに山科のおっさんとは小田原城でさよならしているはず。
これ以上迷惑かけられてはたまらないから。例によって勝手に乗り込んでいるかもしれないから、出航前に船内を完全チェックさせよう。
水と新鮮な野菜類を積み込んで、小田原港を出航した。
大男と俺のオヤジたちが何だか親しげに話し込んでいる。気が合うのか? 話が弾んでいるみたいだ。まあご同業だからね。積もる話もあるでしょう。
だけど勝手に風魔から嫁をもらわないでよ。
それだけはダメだからね。
快晴、快晴、速い、速い!
蝦夷には追い風だったので数日で到着しました。
北海道だ。何かワクワクする。
アイヌの人たちはいるかな。早く会いたいな。
ここは前世の苫小牧あたりかな、東に襟裳岬らしきものがあり、西に渡島半島らしきものが見える。きっとそうだろう。
前世の名前で苫小牧辺りなのかな。
まあ細かい場所なんかどうでもいいのよ。
蝦夷でアイヌさんが住んでいれば、交易ができるからね。
確か渡島半島の方は、この時期は蠣崎家が沿岸部を領地にしているのかな。
でもあんまり良い事してないのだよな。
戦国時代は『腹が減れば持っている奴から奪え』が基本だからね。ほとんどの大名たちが碌な事をしていない。
アイヌさん歓迎してくれるかな? 俺たち、嫌われてないよね?
それにしても、蝦夷に元から住んでいる人の呼び方は、アイヌでいいのかな? まあ良いか。アイヌの言葉すらも解らないしね。
海兵達から「これ以上、陸地に近づくと座礁の危険性があります」と、言われる。日本丸は停船して錨を降ろしている。
俺達が交易交渉している間は暇だろうから、海軍に簡単な地図を作らせるかな、それとこの近辺の水深マップも作らせておこう。
渡島半島の方も調べさせるか。
まずは小早船でオヤジたち数名が上陸して安全を確認するそうだ。オヤジたちと大男と特殊部隊の精鋭数名が上陸していく。
前世のネット記事で見た事のあるアイヌの民族衣装らしきものを着た若者達が、海岸近くの森から出てきた。みんな弓と槍とか持っているけど大丈か?
俺たち敵じゃないからね。交易だよ。適正価格で交易するからね。安心して欲しい。
しかも今回は初回取引だからお得な取引だよ。
たしかアイヌの人は、狩が上手のはずだ。ならば弓の腕なんかは最高じゃないかな。敵じゃないからね。毒矢とかは絶対使わないでよ。アイヌが平和な民であることを信じているよ。
蠣崎が、渡島半島のアイヌさんと戦をして、評判落としているからな。なんか心配だ!
でも俺達の船は、日の本のオンボロ船とは違うからね。蠣崎とは違うと思ってもらいたい。
オヤジたちが現地の若者と馴れ馴れしく肩を抱いているけど、言葉は通じているのかな?
アイヌの人が大らかで良かったわ。なんとなく俺もウキウキする。異文化交流って良いよね。旅の醍醐味だ。
今回はご挨拶だけだし、難しい交渉もなし。そもそも言葉もわからないしね。まずは親睦を深める。だけど言葉が分からないと、次のステップの交易とかに進展しないからな。
申し訳ないけど、忍者数名は現地に残ってアイヌの言葉覚えてもらいたいな。
オヤジたちから手旗信号で『安全の確認が取れたので、お土産を持って上陸されたし』の連絡が届く。
良し上陸だ。ウキウキするな。
こういうの、楽しいな。
護衛の兵を300人と特殊部隊の半分100人は留守番をしてもらう。何があるか分からないからね。退屈かもしれないけど我慢してくださいね。
お土産は現地の人達が運んでくれている。俺たちは彼らと共に、彼らの村まで歩いて移動する。森の中をキョロキョロしながら、旅行気分で村に到着した。村は予想よりたくさんの家が建っている。
多くの村民が歓迎してくれているような気がする。村の皆が笑顔だから、きっと歓迎されているよね。そういう事にしよう。北国なので女性の皆さんは色白で美人さんが多いな。
歓迎の宴が始まる。こちらから持って行った焼酎は大人気だ。お湯割りを教えると、持参した梅干しを入れて皆さん満足そうに飲んでいる。お酒コミュニケーションは万国共通だ。
言葉がまったく解らなくても、身振り手振りでなんとかなりそう。昆布とか鮭とかどうやって説明すれば良いのかな。まあ良いや優秀な忍者さんに任せよう。
長老さんもニコニコして満足そうだから大丈夫だよね。昆布は絶対ゲットしたい。
つまみに燻製肉や鮭の干した物を提供してもらっている。少し炙ってから食べると凄く美味い。オヤジたちはムシャムシャガブガブ状態だよ。長綱さんと風魔さんも俺の横でムシャムシャガブガブだ。
俺の横にはアイヌの美少女が座っている。役得だけどお互い子供だし、言葉も分からないので進展はなし。
ところでオヤジたち。商売でここに来ているのを忘れてないよな。手ぶらでは帰れないのだぞ。
宴もたけなわなのに、何だか村のみんなが騒ぎ始める。オヤジたちと特殊部隊はこりゃマズイと俺の守備体制をとる。
どうも俺達を襲うのではないようだ。
話が理解らないながらだんだんと状況が掴めてくる。
どうやらクマが4頭こちらに向かっているようだ。
非常に危険な大型クマのようだ。
でもね、こちらには城も簡単に制圧できる特殊部隊がいるのだよ。
ライフルも拳銃も爆弾も持っている。
クマ20頭ぐらいが襲ってきても、あっという間に制圧できるはず。
しかも伝説級の忍者が4名もいるのだ。この4名だけでもいける気がする。
あれ。特殊部隊さん。もういないぞ。動きが早いわ。
半数の特殊部隊に守られて半刻ぐらい待っていたが。
オヤジたちがニコニコ顔で、クマ4頭を担いで村に戻ってきた。
銃弾の音とか爆発音も何も聞こえなかったけど、どうやったのかな? オヤジたち。風魔さんに良いところを見せたくて無理してないだろうな?
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