そうだ北海道に行こう2
天文13年(1544年秋)13歳
日本丸が無事に小田原の港に着いた。
もう俺も船酔いとはオサラバさ。それにしてもこの港町はイケてないな。
もう少しテコ入れした方が良いと思うよ。
商業地も港町も自然発生的に後付で建物や施設が作ると無駄が多いのだよ。
都市計画は大事だよ!
まあ他所の家のことなので関わらないことにしておこう。
港で北畠家であることを告げる。
氏康さんの指示が行き届いているようで、北条家の武将たちがテキパキと俺達を城まで先導してくれる。
この武将はおっとりしているのか、相手を値踏みするような失礼な視線は感じない。
どこかの、信秀とは違うな。
そういえば信秀さんは何をしているのかな。尾張でチマチマやっていて下さい。
お土産も北条家で運んでくれているから楽ちんだ。
家臣ともども手ぶらで、周りの景色を見ながら小田原城に向かって歩いている。
小田原城はやはり大きいな。これは謙信さんでも落とせなかったはずだ!
北条家の人たちもこの城に籠っていれば、誰が攻めてきても大丈夫と思うだろうな。
前世で小田原城見学をしたことがあるので、城よりも戦国時代の有名人の北条氏康さんに会えるのが、今回の旅の楽しみの1つだ。
北条氏康さんと言えば、日本三大奇襲の1つ『河越夜戦』の有名人だ。
ちなみに残り2つは、信長君の『桶狭間』と元就さんの『厳島』だ。
元就さんにも会ってみたいな。
北条家は早雲さんから、ずっと民を大事にする政策を続けている。他国より税率が低い。
きっと北畠家とは気が合うと思う。同盟を結ぶならこういう大名かな。
氏康さんが俺の前に座っている。見たところ30歳前後かな。有名人と会えて感激。見た目は、頭良さげで精悍なイケメンおじさん、サラリーマンなら女子社員にモテモテだろうな。
成るか成らぬか3代目だったっけ、3代目がダメだと会社がおかしくというやつね。創業社長が早雲さんだから、3代目の氏康さんに頑張って北条家を発展させて欲しいな。
それでもって関東公方だとか関東管領とかいう、いらない旧体制は壊して欲しい。
確か氏康さんの後継となる氏政君はイマイチな評価だったかな。豊臣家の大軍に囲まれている時に、小田原城内で行われていた煮えきらない評定に対する評判が良くなかったとかでね。
前世では『小田原評定』という言葉が『いつまで経っても結論の出せない会議を象徴する代名詞』として使われているのだよ。この小田原評定を繰返している最中に、次々家臣から見限られる。結果北条家は戦国時代からフェードアウトしていったのだ。
ところで工藤祐長に森可成や信長君は、北条家の武将達と上手くコネクションを作ってくれているのかな。コネクション作りはこういう外交の場では、家臣の大事な務めだからね。
現代で言えば名刺交換の場だよ。名刺はないけどコネ作りをちゃんとしておいてよ。俺も頑張るけどね。
そういえば北条家には有名な武将がいたはず。
北条綱成さんだ。地黄八幡と言われている北条最強の武将だ。お〜、3人でそれらしい武将を囲んで話をしているみたいだな。安心したよ。
その後は伊豆水軍を率いる清水康英さんのところにも行けよ。伊勢に戻っても友好関係を保つために文のやり取りもマメにやって欲しいな。
まあ俺が心配しなくても判っているよね。
確か氏政君には、氏親君というお兄さんがいたと思う。前世の歴史では、彼は早逝している。身体弱いのかもね。氏康さんの家族席見て見ると、多分この子かな〜、という子が座っている。
やはり元気がなさそうだな。俺は挨拶がてら氏親君の所に行ってみる。当主に挨拶したら、その次の挨拶は嫡男だからね。
ん〜、やはり元気がないな。どこが悪いのだろうか?
俺は神様から、治癒スキルをもらっている。今までにもう何回も、治癒スキルを使って治療しているから経験も豊富だ。しかも豊穣神から、至高の匠スキルと治癒スキルの両方のパワーアップを受けているからね。
治癒スキルもかなりレベルアップしているはず。
今や患者をちらっと見れば病気や怪我の概略が解るレベルだ。さらに患者に少し触れれば、もっと詳細なことが解るようになってきた。戦国時代では有り得ないスーパー検査装置であり、スーパードクターなのだよ。
氏親君に手をかざしてみたら原因がすぐ解ってくる。胃に小さいガンができている。『こんな愛嬌のある可愛いい子なのに、ガンでは長くは生きることは難しいな』と、可哀想な気持ちになる。
治癒スキルで何とかしてあげられる可能性はあるけど、治療に失敗して体調が悪くなってしまったり、最悪の場合、死んでしまったりすれば、北条家との関係が最悪になる可能性がある。
戦国武将である氏康さんは、俺の表情の少しの変化も見逃さない。
『なんで病気が分かったのだ?』という感じで俺を見つめる。
怖いんですけど!
本来VIPの健康状態はトップシークレットだから、北条家としては嫡男の体調が良くないことは隠さないといけないはずだな。しかたないか。
しかし氏康さんは父親として、子を思う気持ちが上回るのみたいだ。
「医師からはお腹にしこりができていて、無理させるとそんなに長くは生きられないと言われている」と氏親君の健康状態を明かしてくれた。
見ただけで病気を発見できた俺ならばと、藁をも掴む思いで話してくれたのだと思う。
良い父親なのだな。
なんかこの親子に親近感が湧くな。北条家が少し好きになってきた。
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