表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/242

長島一向宗3

天文13年(1544年夏)13歳


逃げ出した信者達はパニック状態で『一向宗の聖地』に辿り着く。

『一向宗の聖地』では聖人気取りの領主さんが喜々として炊き出しを行っている。

家臣たちも総出でなんだか楽しそうだ。


『信者さんを助け、御仏のお告げに応えた。やったぞ。これで極楽に行ける』と、皆がウキウキしている。


信者さんたちも落ち着いたのか、何だか楽しそうである。何と言っても『御仏のお告げ』に従って行動したのだからね。


信者さんたちは『自分たちは何時死んでも構わない。自分たちは絶対に極楽に行ける』とご満悦だ。


『一向宗の聖地』では皆がハッピーなのだよ。

ダメ。ダメ。幸せな人たちに水を差したらね。美濃のマムシこと斎藤道三さん!


ちなみに、くの一お姉さんたちはというと、仕事を終えてさっさとドロンを決め込んでいる。今回も良い仕事したね。さすがです。感謝!


『家臣の領地に一向宗が集結している』という知らせを受けた美濃のマムシは、いったい何事かと稲葉山城から大急ぎで兵を引き連れて駆けつける。


マムシは、長島の一向宗が領地に攻め込んできたと思い焦っている。

美濃を治める斎藤家といえども、一向宗とは簡単には戦端を開けない。

一向宗が強力なのを知っているからね。


幸せそうな一向宗の信者に囲まれ『我聖人となれり』と、悦に入る問題の領主の顔を見て、マムシもビックリだ。迷いのない領主の顔は、まるで悟りを開いた坊主にしか見えない。


キモい! キモすぎと、マムシは後ろに下がる。


「殿! 見てください。こんなに多くの信者を救うことができました。わが領地は『一向宗の聖地』になることができましたぞ」と、小領主はうれしそうに同じフレーズを繰返す。


キモいから。近くに来るなと、マムシがさらに後に下がる。


「とりあえず、こいつの城に移動するぞ。誰かこいつを引っ張ってこい。城で事情を問いただすぞ」と、急いで城に移動する。


城に入り評定の間で改めて事情を聞いていく。これまでの経緯を何度も聞いてみたが、さっぱり要を得ない。


話の内容より『こいつ正気なのか? こいつ目が怖いぞ。笑うな。不気味だぞ。そばに来るな』という気持ち悪さの方が強くなる。


さっさと成敗してすっきりしたかったが、まだ一向宗との交渉が残っており始末することはできない。


「こいつも。こいつの家臣たちも。何だ、こいつら。全員キモいぞ。牢だ。牢にぶち込んでおけ」と家臣に命じる。


領主と家臣は牢に叩き込まれる。しかし牢の中でも『御仏のために大きな仕事を成した』と満足げにしているらしい。


とにかくこれからどうする?


評定の間には、稲葉山城から連れてきた家臣たちが座っている。マムシの不機嫌さに、皆が下を向いたままだ。


「こんなにたくさんの一向宗門徒を招き入れやがって。何が『一向宗の聖地』だ! いいか、おまえら信者に手を出すと本願寺といくさになるからな! 何もするなよ。信者には絶対に手を出すな!」と、激高したマムシが家臣たちを怒鳴り散らす。


もう八つ当たりだ。


忍びの報告では、それからずっと斎藤家と一向宗の坊主達との間で、長島に帰れ交渉が継続しているらしい。


マムシの家臣たちが「おまえらな〜。もう長島に戻れよ! なんでここに住み着いているの? キモいんだけど」と、いくら信者を説得しても。


「御仏のお告げだから動かない。御仏のお告げは絶対だ。この聖地サイコー」

とまあ、こんな繰返しが延々と続いているそうだ。


それどころか、入信を勧誘されてグラつく家臣も出てくる始末だ。


信者たちは最高の笑顔らしい。これに家臣たちが引き寄せられるみたいだ。


斎藤家から石山本願寺に『こら〜。斎藤家舐めんなよ〜。不法占拠だろうが』と問合せているが、石山本願寺側も事情が分からず。

返事はまったく返ってこない。


『無視するのか? 儂は天下の斎藤道三だぞ!』と、ますますマムシが不機嫌になっているらしい。


石山本願寺はむしろマムシの謀略を疑っている。まあマムシさんは謀略好きで有名だからね。評判悪いよ。まあ自業自得だ。

そんなこんなで、時間ばかりが過ぎていく。良いぞ。グッドジョブ!


領主の言っていることは未だに意味不明。逃げてきた坊主も、御仏のお告げだと自慢げにするばかり。挙句の果てに俺を一向宗に入信させようとしやがって!


このクソ坊主どもふざけるなよ。天下の斎藤道三を舐めるなよ! 

マムシは頭の血管が切れる寸前だったそうだ。


斎藤家と一向宗が、熱心にお話している間……


俺は、信者がいなくなった長島砦に入り、大急ぎで砦の補強をさせている。


複数の河川に守られ難攻不落となっている砦だが、砦を囲う高い壁を作り、その周囲を有刺鉄線で囲う。ここをライフル隊で守備されたら、もはや数万の兵で囲まれても落ちる心配ない。完璧だ!


ハイ、とんでも要塞出来上がりました。もう誰も手を出せないよ。

寺は騒動の最中に燃えたことにして、綺麗さっぱり更地になっていますね。


マムシさん。『一向宗の聖地』に攻め込んでも良いよ。

その方がこっちはもっと助かる。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。

初めての作品ですので

あたたかくご支援いただければありがたいです。


励みになりますので

ぜひブックマークや評価などをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ