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信長君との約束

天文13年(1544年夏)13歳


信長君は尾張から付いてきた侍女2名と、城内でゆったりと過ごしてもらっている。

数日が経ち、気持ちの整理もついて人生を達観できたのか、顔色が少し良くなっている。

しかし表情は暗い。そりゃそうだ。実家に捨てられて気分が良い訳ないよね。


別れ際に信秀から小さい声で「手に余れば、病死としていただいてもかまいませんぞ」と、言われた。戦国時代は嫌だな。親子なのにね。俺の中のイケオジの評価はダダ下がり。

イケオジの話は信長君には言わない方が良いな。


そんな事を伝えたら『であるか……』ではすまなくなるからな。


俺と信長君は部屋で2人だけで向かい会っている。凡人は英傑とどう話すべきか?


「信長殿。お主はこの先どう生きていくつもりだ」

「織田家に捨てられ。目も見えないとなれば、もはや坊主にでもなる以外に道はない」


「目が見えていて嫡男のままだったら、自らの人生をどう使うつもりだったのだ」

「戦国の世を終わらせたかった」

お〜、さすが英傑だ。言うことが違うね。


「尾張のわずかな部分を治めるだけの織田家の嫡男にしては大きなことを言うな」

「そうかもしれんな」


「俺は神様と『いくさをなくし民を幸せにする』という約束をした。だからこのくだらない戦国の世を終わらせないといけない。冗談ではなく。ホントの本気だぞ。しかしこの先のことを考えると厄介な事だらけだ」


「神童殿は神の使いなのか。であるなら使命を果たされよ」

俺に、であるか……とは言わないな。とりあえず良かった。


「おまえはそんな面倒な厄介事を、誰からも頼まれてもいないのにやろうとしていたのだろ。すごいと俺は思うぞ」


信長君の見えない目から涙が流れる。さぞかし悔しかったろう。

俺はおまえが天から授かった才能を知っているぞ……


「必ずではないが、俺はお前の目を治してやれるかもしれぬ。しかしこの『病を治す力』は神が俺に与えて下さったものだ。俺は、この力をいただく代わりに『いくさをなくし民を幸せにする』という約束をしたのだ」


「この力を使うということは、お前は俺の家臣として『いくさをなくし民を幸せにする』という使命を、共に背負うことになるぞ。どうする! 共にこの使命を背負う覚悟はあるか?」


信長君に『神との約束は破れないぞ』と言ってみた訳だ。

英傑は俺の家臣になってくれるのか?


「戦国の世を終わらせることは、儂が目指していたことだ。神の加護により目を治してもらえるなら、三蔵様の家臣として、これからの人生をこの使命に捧げる。男に二言はなし」


「絶対に破れない神との誓いとなるぞ」


信長君が俺に平伏する。

「これより儂は三蔵様の家臣となります。よろしくお願いします」

「信長! 目を治すぞ。目の近くに手を近づけるが動かないでくれ」


俺は信長君の目に手を当てる。俺の手が光り輝く。光が消えたところで信長君が目をゆっくりと開ける。


「見えます。殿ありがとうございました。この御恩は生涯忘れません。もちろん男の誓いは守ります」


「内臓が弱っているところもついでに治しておいたぞ。まずは藤林保正とともに伊賀と伊勢を回れ。藤林保正は俺の弟みたいなやつだ。一緒に俺の進めている富国と、強兵のそれぞれの仕組みとやり方を見て回れ」


「富国と強兵の両方がなぜ必要なのかも理解せよ。『学校による教育』が果たす役割について理解せよ」


信長君の顔が生き生きし始める。


まず『家臣に領地を与えないで、仕事に見合った俸給を支払うやり方』について説明する。

その後に、なぜそのやり方を導入したか、その理由と目的をじっくり説明する。


信長君なら直ぐに理解できると思う。


信長君をゲットしたぜ。丸投げできる人材が増えたぞ。

しかも最強の人材だ。


勘助と幸隆、信長の最強の頭脳で『いくさをなくし民を幸せにする』を最短で実行してやる。

早く楽になりたい!


信長君と言えば、明智さんだよね。

『明智って名前の人には気をつけろ』と知らせておいた方が良いのかな? 

どうするかな。


明智さんを忍者調査隊に調べさせておくか。良い人かも知れないからね。


ところで各地に派遣している忍者調査隊や、忍者リクルーターに、声をかけてくる人たちが増えているようだ。


ほとんどが各地域単位で活躍する小規模な忍者集団である。

ご多分に漏れずどの忍者集団も、昔の伊賀の地獄と同じ様な生活をしている。


彼らから「毎日が地獄です。お願いです。伊賀に臣従させて下さい」と土下座しされて、泣きつかれるそうだ。


「毎日が地獄です」と、言われると、忍者調査隊や忍者リクルーターも、自分たちの数年前の姿を思い出しウルっとくるみたいだ。当然なんとかしてあげたいという気持ちになる。


オヤジたちに許可を得て、ほぼ全員が伊賀や伊勢にお引越しているらしい。


その数が段々と増えている。もちろん俺は有能な忍者をどんどん増やしたいと思っているので大歓迎だ。オヤジたちにもどんどん受け入れて欲しいと伝えている。


今後も、こんな形で全国の忍びが俺のところに集まってくるのかな。俺のところは忍者の仕事がいっぱいあるから、いっぱいきてもらって大丈夫だ。


それほど危なくない仕事だと忍者調査隊や忍者リクルーター、忍者速達便、忍者宅急便がある。戦うのが好きな人向けには、特殊部隊だ。頭が良い人は、商社正直屋で働いてもらう。


その分、全国の大名や寺社から目と耳と口がなくなるから、北畠家がさらに有利になる。

もう言うことないね。





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