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領地経営方針

天文13年(1544年春)13歳


俺は家臣に領地を与えていない。

家臣に領地を与えれば、家臣は喜ぶだろう。戦国の世では皆がそうしているからね。

しかし家臣が個々に領地経営をしても、富国という目的には辿り着かない。


ではどうすれば良いのか。


伊賀や伊勢の2国であっても、まずは2国全体で領地の富国についての方針を決める必要がある。


方針とは産品開発や建設の優先順位を決定すること、そして予算と人員計画を決定することである。


この方針を決めておけば決めた順に、予算と人材を効率良く集中投下していく事ができる。


2国という限られたリソースであっても、効率良く運用することができるため、最短で国が豊かになっていく。つまり富国が実現していくのである。


この方針に従い産品開発が行われ、産品を運ぶための街道や港湾整備や倉庫の等の建設が進む。また防災や農地拡張のための河川改修等も行われていく。


小分けの領地ごとに少ないリソースで、チマチマやっても大した事はできない。


また小分けの領地といえども、主君は小領主の権益を個々に認めてやらねばならず。領地を跨ぐプロジェクトには、そういった調整に無駄に時間や予算がかかると思う。


結果として、大きな利益を生む大きなプロジェクトになるほど実現が困難になる。


家臣たちには、チマチマ仕事に忙殺されることなく、それぞれが得意とする分野と持ち場で、最大限の力を発揮してもらいたい。あれもこれもやるのは俺だけでいい。


鎌倉時代から続く『御恩と奉公』のシステムは、小領主をたくさん作り出すシステムと言える。小領主ごとに頑張っても国全体の大きな発展には結びつかないと思う。


また恩賞として領地を与えるシステムというのは国土が無限にあれば問題ないのだが、狭い国土の日の本でそれをやれば、秀吉君のように『大陸に攻め込む』か、家康君のように『大名の改易・転封』と『大名への新恩給与しんおんきゅうよ』を交互に繰返すしかなくなる。


家臣に与えるのを土地ではなくお金にしておけば、お金はやり様で無限に作り出せるのだから破綻することがないのだ。


俺が提唱している、『家臣に土地の領有をさせず、役職と仕事に見合った収入を銭で払う仕組み』について、今のところ家臣からの反対意見は上がってきていない。

反対意見が上がらないのは、皆が、俺を優れたリーダーだと信じているからだ。


こいつなら、いくさも国の運営も失敗しないだろうということだ。


仮に俺が無能なリーダーで、国の存続が危なくなりそうだとする。

そうなるのであれば、家臣は自分の領地を持つ方が断然得になる。

領地を所有することにより『郎党と農民兵』という『最低限の安全保障システム』を手に入れることが出来るからだ。


ということは『俺が優秀なリーダー』であり『国の安全保障がしっかり確保』されていることを、常に家臣に示し続けなければならないことになる。

あ〜、面倒だな。そんなに色々考えないとダメなのか?


『家臣に土地の領有をさせず、役職と仕事に見合った収入を銭で払う仕組み』というのは富国をどんどん進めるメリットがある。富国で得られる富があればこそ、強兵をどんどん進めることが可能となる。


富国強兵を上手く回している内に、技術革新を進めて富国を進めるための国の地力を高める。

そして俺が元気なうちに日の本の統一を達成しないといけないということかな? 俺が元気なうちというのは、俺の子供や孫が優秀という保証はないからだ。


あ〜、やはり面倒だ。


俺が死んだ後のことは『全部神様の仕事ね』ということで割り切ろう。

しかし『死ぬ時まで頑張る』のかな? 

死ぬまでとか、長いな! 何か辛いな。


とりあえず、考えるのを放棄しよう。


そもそも日の本の国とか、皆さんが言っているけど。

国という概念を持っている人というのが、この国にどれぐらいいるのかな? 

バカ将軍に管領や公家のおっさんたち! 君達は国という概念をもっているのか?


偉そうに言いました。ごめんなさい。

実は、俺も理想の国とはどういうものか、まったく分かっていません!


あ〜疲れた、国のあるべき姿なんか、そもそも俺ごときが考えることじゃない。

責任放棄とか言わないでね。とにかく確かなのは教育を進めることぐらいかな。

人が育てばそういうのを考えられる人も出てくるでしょう。


そういえば豊穣神様が俺の夢に出てきた。最近すごく調子が良いのだそうだ。

「力が漲るのよ」と言われていた。

領地に祠がいっぱい出来たし、多くの領民が拝んでいるからかな。


領民たちも豊穣神様に感謝の祈りを捧げることが、田畑の収穫アップにつながることが解ってくれば、時々領内で説法をしている怪しげな坊主を相手にしなくなるはずだ。


最近は、怪しげな坊主がやけに増えてきているのだよ。我が領民が豊かになってきたからね。この時代の坊主は砂糖に群がるアリのようだ。我が領民を信者に取り込めば寺が潤うといったところか。


そろそろ忍者警備隊に取り締まらせるかな。


お寺の坊主さん! 君たちは勘違していると思うぞ。

俺が寺に手を出せないと思っているみたいだけど……違うぞ!


信長君のように焼き討ちや撫で斬りなんかしなくてもね。

情報戦で寺の評判ガタ落ちにして、信者を引き剥がすのもできるし、経済戦で寺の経営をガタガタにもできるのだよ!


忍者を敵に回して勝てると思わないでね。





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