表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/242

六角家との婚姻3

天文13年(1544年冬)13歳


平井の読み通り、百合は定頼の養女とはならなかった。

義賢が狂ったように反対したからだ。

ナイスプレイだよ、義賢君! 

失点を重ね続けてくれ。


百合との婚姻は、伊賀上野城で行う事になった。


祝言用の料理は本膳料理である。

本膳のメニューの中に伊勢海老が登場するので、見た目が豪華になっている。

伊勢海老の運搬は忍者宅急便が、おがくずコンポして運んでいるので新鮮だ。


茹でエビはタルタルソースで、刺身は醤油で食べてもらっている。

また猪肉を使った猪カツや、鳥の唐揚げなども希望する人には食べてもらっている。


祝言には定頼さん、後藤さんと平井家の家族一同、進藤さんが出席だ。

義賢や目賀田さんは留守番のようだ。

北畠家からはオヤジたちに楓母上と重臣達である。


式の最中は伊賀忍者警備隊が、城内と城の周辺警備をしている。

料理に毒とか盛られたら、北畠家の信用問題になるからね。


『ウチはもう慣れているけど、六角家の人たちは肉を食べていいのかな?』と、心配したのだが、嫌がるどころかムシャムシャ食べている。

美味けりゃ食べるのか。しかし少しガッツキ過ぎだと思う。


公家の連中もやって来ている。俺は誰も呼んでないのだけど。

山科のおっさんこと山科言継やましな ときつぐとその愉快な仲間たちだな。

勝手に連れてきやがって……


「美味いもの食わしてやるから山科に任せろ」とか偉そうに言っているに違いない。

それに乗っかって、ホイホイ付いてくる方も相当図々しいと思う。

流石に公家は鋼のメンタルだ。


将軍と仲良しの太閤さんこと近衛稙家このえ たねいえは来ていないが、息子の近衞前久このえ さきひさ9歳が、山科のおっさんに付いて来ている。

実弟の元太政大臣の久我晴通こが はるみちも来ているな。


公家の知り合いは山科のおっさんのみで良いのだがな。

もちろんおっさんとは、金だけの付き合いだけどね。

なんか山科のおっさん、着ているものが小綺麗になっている気がするな。

ピンハネしていないだろうな。


この人たちは女王の婚約相手がどんな奴か見に来たのだろうな。きっとね。

いや違うな、こいつらひたすら食べているからな。

呼んでもないのに、図々しく乗り込んできて。


良くもまあ、こんなに堂々と飲み食いできるな。やっぱり公家はロクな者じゃないよ。

公家とは極力関わらないようにしよう。


百合と俺は、上座で行儀良く座っている。

行儀良い俺たちを他所に『猪カツや、鳥の唐揚げ』に、皆が群がっている。

特に公家! 


ところで……

呑兵衛さんにはお酒を色々用意しているのだよ。

米焼酎、麦焼酎に蕎麦焼酎を樽でね。

柄杓ですくって好きなだけどうぞ方式だ。


澄酒も作って良いのだが、もう少し米の生産に余裕ができてからにする。


俺は立ち上がって。酒樽の前に移動する。

酒樽を柄杓でコンコン。

呑兵衛の皆さんが注目している。


とにかく美味い酒を飲みたいという期待が、眼差しに表れているぞ。

なんか可愛いワンちゃんみたいになっているぞ!


「皆さ〜ん、この焼酎には、もっと美味しい飲み方がありま〜す」と、焼酎の横に立った俺は、柄杓で樽を叩きながら再度注意を集める。

定頼さんまでこちらを注目しているな。


「まずは、3種類の焼酎の中で好みの焼酎を選んで下さい。それぞれ米、麦、蕎麦の風味があります。次に炭火で沸かしているこの白湯を注ぎます。ハイこのようにお湯割りを作って下さいね」


「お湯割りにすることで、それぞれの風味が香ります。まずはそれを楽しんで下さい。割合は好みですが、焼酎1にお湯が2ぐらいの割合がいいと思います。お酒に弱い方はお湯の割合を増やして下さい」


「そして、その中に潰したこの梅干しを入れます。後で飲んでみて下さい。何ともいえず美味いはずです」と、焼酎の美味い飲み方を解説する。


13歳の俺が解説するのは変なのだが、神童はそんなもんだろうと思っているみたいだ。


「焼酎が1にお湯が2だな」とか赤ら顔の呑兵衛たちが確認する。

もう既に呂律が回っていないですよ。

うれしそうに、ニコニコしながら作り始める。


こういうのを作る時って楽しいのだよ。俺も経験が有る。

それにしても、呑兵衛たちの飲み方が止まらないけど大丈夫か? 

酒と梅干しはたくさん用意しているからなくなることはないけど。


目出度い席で絶対吐くなよ。せめて庭にしてくれ。


なんといってもこの時代の日本酒がイマイチ過ぎたからね。

ドブロクだもんね。ハッキリ言って料理と合うとはいい難い。

比べるのがドブロクなら、そりゃ焼酎が何倍も美味く感じるだろうね。


真っ赤になった定頼さんから「六角家を頼む」と、言われた。なぜだ? 

やはりバカ息子が心配なのだろうな。ダメな子ほど可愛いと言うもんね。


俺は定頼さんが、なんか可哀想な気になってきた。

「息子もダメですが、孫はもっとダメなんですよ。孫のせいで六角家は潰れますからね」と、思わずカミングアウトしそうになった。


それにしても定頼さんが苦労して六角家を大きくして来たのにね。

子供がダメならそれまでなのだな。

でもこれは他人事ではないのだよ。将来の俺の子供がダメな場合はどうなるのかな。


六角家の宿老たちから「焼酎をお土産に貰えないか」と、北畠家の重臣たちに熱いお願いコールが起こる。


勝手に居座っている公家達からも図々しくも『俺たちの酒も頼む……』という無言の熱い視線が重臣たちに突き刺さっている。


そんなので良いのか?


飲み方を記して、主上に梅干と各種焼酎5樽を送るかな。そうだ最近は伊賀で焼き物を作らせていたな。焼酎飲むのに良さそうな盃も一緒に送っておこう。


前世で読んだお酒関連の記事を思い出した。

黒ぢょかみたいなのは売れる気がする。

平たい急須とぐい呑みのセット。それに加えて急須を温める卓上囲炉裏もあると最高だよね。


新たな産品に追加しよう。


まずはオヤジたちと重臣達に使ってもらおう。言わば『オヤジ宅飲みセット』だね。干物も炙れるしね。干物は伊勢の干物だ。


少し時間がかかるが主上と公家達に、オヤジ宅飲みセット高級版と焼酎を送ることを伝えておいた。

そうしないと帰りそうにないのだよ。

マロは、いらないからさっさと帰れ!


オヤジ宅飲みセット高級版は菊マークつけたやつを、皇室ブランドで山科のおっちゃんが売ればいいかもね。

朝廷の財政が多少でも助かるかもよ。

ネコババしないで、儲けは主上に還元するようにして下さい。


北畠家ブランドは、正直家で売れば良いしね。俺って孝行息子じゃん。伊賀焼も本格的に始動だな。腕の良い焼き物職人をオヤジたちにリクルートしてきてもらおう。


なんだかんだで、伊賀名産品も増えていくな。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。

初めての作品ですので

あたたかくご支援いただければありがたいです。


励みになりますので

ぜひブックマークや評価などをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ