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六角家との婚姻2

天文12年(1543年秋)12歳


何か面倒な話持ってきたな。

まったくこの忙しい時に。

頭フル回転で作戦を考えないといけない重要局面なのだけどな!


よっしゃ、内容を一切聞かずにお断りする作戦だ。


「お待ちください。公家とはあまり深い関係を持ちたいとは思いませぬ。遠路はるばる伊賀まで来られて大変申し分けございません」


「しかし公家衆の姫君を嫁にいただくことは、ご遠慮いたします。ご相手の名前をお聞きしてから断るのは失礼かと思います。大変申し訳無いのですが、そのままお帰り下さるようお願い申し上げます」


よっしゃ、言ってやったぞ!


「お主は相変わらずじゃ! 他の大名達は、麿をもそっと丁重に扱ってくれるぞ。ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


「その方の善政により伊賀と伊勢の民が豊かになったこと。学校を設けて無料で民の教育をしていることを、恐れ多くも主上がいたく感心されておられるのじゃ! 主上はただひとえに民の幸せを願われるお方であらせられるぞ」


「加えて米焼酎や麦焼酎、麦焼酎、椎茸などを定期的に送ってくる神童の心遣いをいたく気に入っておられての! ホホホ……ホホホ……ホホホ……そこでじゃ。ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


ホホホの数が増えたな!


あれ? 山科のおっさんが身なりを整え出したぞ。

変な話を出してこないで欲しいけどな。


「主上は恐れ多くも、第五皇女であらせられる普光女王ふこうじょおうを、従五位上北畠伊勢守に降嫁させたいとの思し召しである。麿もこのような使者に選ばれて、大変光栄である。ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


そういうことあるの……それでいいの?

俺は血筋ロンダリングしたけど、忍者の倅なのだぞ……


家臣達の表情を見る。

全員がはてなマークの顔になっている。

回路が繋がってない感じだ。


これは俺にとって良い展開なのか? 悪い展開なのか? この話は断れるのか? 断れないのか? どっちだ?


「この話を受けた場合、私はどうなるのでしょうか? 今後、公家として生きていく事になるのでしょうか? 皇女と我が妻、我が家臣たちはどのように接すれば良いのでしょうか? 北畠家はどうなるのでしょうか?」


確認したいことはいっぱいあるのだぞ……


「其方が何か変える必要はないぞ。降嫁の後は普通に武家の正室として接してもらえば良い。ただの、ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


「退位や即位などな朝廷に銭が入り用となる時な。ホホホ……ホホホ……ホホホ……その方を大いに期待しておるぞ」


「ホホホ……ホホホ……ホホホ……麿個人もな……ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


扇子で口元を隠し、俺の目をじっと見つめ返答を待っている。


要するに、貴方は栄えある朝廷専属ATMに選ばれました。イエ〜。という話なのか? 

そんな程度のことなら問題はない。

俺は金持ちだしな。

六角家の件もあるし良い話かもしれないな。


しかし返事をしたら、もう後戻りはきかなくなるぞ。急に来るなよ。先にお手紙とか寄越せよな。おっさん!


ん〜、いずれにしても、これは断れないやつだよね。


「謹んでこの話お受けいたします」

返事してしまったぞ……


「普光女王は7歳であらせられる。降嫁は12歳になってからになるであろう」

「降嫁のためのお支度もあると思います。銭1万貫を納めいたします」


「渋いお主にしては思い切ったの。ホホホ……ホホホ……ホホホ……主上もさぞお喜びであろう。ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


「主上に『降嫁の件、大変光栄でございます』とお伝え下さい。できますれば、降嫁までに姫様にはぜひ和算を修得いただければありがたいです。我が嫁たちは皆が計算を得意としておりますれば、嫁たちとの話も盛り上がるのではないかと思います」


「面白いことをいうの! そのようにお伝えしておくぞ。ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


今日は、やけにホホホを連発だな。

何か後ろめたいことがあるのか? 

『朝廷専属ATM』にした事を、後ろめたく思っているのだろう!


降嫁の時に、和算の大家みたいな公家が付いて来ればいいな。


『普光女王が正室。百合は六角家からではなく六角の重臣である平井家から側室として嫁いでもらう。そうすれば六角家との関係は薄まる。将軍や管領とも距離が置ける』と判断したのだが……


家臣たちはどう思っているのだろう。

即答してしまったが後で聞いてみないといけないな。

家臣達を見回すと、まだ頭の中の整理がつかないという顔をしているな。意見を聞くのは明日にするか。


この騒ぎから数日が過ぎる。

平井は俺から届いた文を読んで驚く。

こんなことがあるのか? 


信じられん。娘に説明してどうするのか聞かねばならぬ。

百合を部屋に呼び経緯を説明する。


「百合、側室では嫌ということであれば、この話を他の家の娘に譲っても良いのだがどうする?」


「恐れ多くも皇女様が降嫁されるという神童様に、側室であろうとなんであろうと、嫁に行けるのは女の誉でございましょう。平井家の恥にならないよう努めます。父上母上、公家の作法を習っておきとうございます」


「おおそうじゃ。北畠家の嫁は、服部、藤林、望月とみんな忍びの家の娘たちだ。武家や公家のことを何も知るまい。その方の役割は大きいな。ただし側室となるので殿の養女の件はなしとなるぞ」


『定頼様なら先を考えて養女とするだろうが。義賢は許すまいな』と平井は考える。


『問題はそこなのだ。定頼様の実力は大いに認めるが、義賢では政治的に難しい位置にある近江の国をまとめるのは難しいだろう。舵取りを誤れば六角家は危うくなる。それを考えると、娘を嫁入りさせて北畠家、いや神童殿と縁ができることは、平井家にとって幸運なのではないか』と、思い始めるのであった。



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