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六角家3

天文12年(1543年夏)12歳


……沈黙が続く……


後藤の額の汗が止まらない。

床に汗の水たまりができている。床についた手も小刻みに震えている。このオジサン大丈夫か? 

このまま倒れないよね。

まあ敵の心配している場合じゃないか。


「しばしお待ち下さい。少し私から話をさせて下され。お願いいたす」と、平井が前に出る。選手交代か。今度はどう出るつもりだ。

後藤は六角家のために頑張ったぞ。俺の前で燃え尽きているぞ。

平井はどう頑張るのだろう。


平井の長い説明が始まる。

この時代の人は、じっくり長く話すのが好きなようだな。

この『じっくり長く話す』がこの時代の基準なのかな……


信長君は「……であるか……」で有名だが。

家臣に自分の考えを理解してもらうためには、相手の理解が追いついてくるまで、じっくりとゆっくり、必要なら長く話す必要があったのかもしれないね!


この時代流に長い話をね……


平井の話が長いから別のことを考え始めちゃったじゃないか。

長く話して、聞いている人を疲れさせる作戦かもな。

自分の言い訳をだらだらと長い時間に渡り語る人は、だいたいそれが目的だ。


実際に疲れてきたな……


平井の話は長いのでまとめると……


六角家には平井を含め、後藤賢豊、蒲生定秀、進藤貞治、目賀田綱清といった宿老がいる。蒲生を除く4人の宿老と当主定頼は『北畠家と婚姻同盟を結び、ともに繁栄する道を考えていた。


しかし蒲生が三雲を引き込み、身勝手に暴走してしまった。このことを当主である定頼も大変不本意に思っている。


……といったところか……


「家臣が勝手に暴走したから、なかったことに出来る話ではない。我が兵の実力は既にご確認いただいておられる通りだ。このまま観音寺城に攻め込めばどうなるのかご想像にお任せする」


「しかも我らの兵の数は先程のいくさの時よりも増えておる。この状況を踏まえて、六角家はどうされるのか? 覚悟を決めてお答え下され」と、俺は最終通告をする。


六角家の決断を待つ……

長いな。早く答えろよ……


「致し方ありませぬ、甲賀郡全てと日野城と蒲生家の領地すべてをお渡し致します。加えて5年間の不戦協定でいかがでござろうか?」と、後藤が答える。

疲れきった表情だ。

こっちも長い話で疲れているのだがな!


「甲賀郡も日野城も、既に我が手中となってある。渡すも何もなかろう。既に我が領地だ。いきなり攻めてきた迷惑料の話を聞いておらぬが。忘れてないか?」


「迷惑料は2万貫でいかがでしょうか?」


「大筋は良かろうかと思う。後は我が家臣の真田と細部をまとめて、文章にまとめて下され」と、俺は交渉を終えることにする。


平井と後藤は、目の前の童は、本当に12歳なのか? 

何かが取り付いているのではないかと思った。

同時に『なぜこの童が六角家に生まれなかったのか』と残念に思った。


平井は考える。

神童が六角家に生まれなかったのは大変残念だが、この神童を六角家に取り込んでしまえばいいだけだ。そうすればこの神童の力を利用して、六角家がさらに大きく発展できるのは間違いない。


和睦の条件など、少々北畠家に有利になったとしても、婚姻同盟や何やで、この神童を六角家に手繰り込んでしまえば良いだけだ。


神童といってもまだ子供に過ぎない。定頼様の政治力を発揮すれば、いかようにも料理できるであろう。日野や甲賀の領地など後でいくらでも取り戻せるはずだ。


やがて生まれる後継ぎが伊賀と伊勢を継げば、伊賀と伊勢も我が領土も同然となるではないか。今は損でも後で得になる。


これで問題ないはずだ。横に座る後藤の目を見る。以心伝心で後藤の考えが自分と同じであることが判る。


「幸隆。後は万事任せた。難しい仕事だが頼むぞ」

「は、お任せ下され」


幸隆は思う。

いや〜、この殿に仕えてから、任される仕事がどんどんデカくなっていく。

信濃にいてもこんな大舞台で儂の出番などなかったはずだ。

相手はあの大物の六角定頼だぞ。

凄いわ、感動する!


信濃に心残りはあったが、一族を引き連れて伊勢に来て良かった。

儂の判断は間違っていなかった。


それにしても殿は、六角家などその辺の石ころぐらいに思っておられるようだな。

天下を取るおつもりなのか。飄々とされて俺には考えが読めない。


儂も婚姻同盟で、殿が六角家に取り込まれないかが心配だが。

この方はそんなことで右往左往する器ではない。

それに、そんな時こそ儂の出番だ。伊達に信濃で揉まれてきておらんぞ。

あそこは大変だったからな。


とにかく儂はどこまでも殿について行くぞ。

誰が何と言っても。この殿といれば面白いではないか。




ここまで、お読みいただきありがとうございます。

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