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内政6

天文11年(1542年春)11歳


旧北畠家臣団の身の振り方について整理がついたということで、伊賀上野城の俺の前に鳥屋尾満栄が座っている。新北畠家の家臣となりたいリストが小姓を通して俺に渡される。


「ご苦労。大変だったろう。難しい仕事を良くやってくれた」

「とんでもございません。旧北畠家臣団と将来についてじっくりと話しました。ご用意頂いた支度金のお陰で、他国の親戚を頼り国から外に出る者たちが、惨めな思いをせずに済みました」


「支度金など気にするな。金など稼げば良いだけだ。満栄にはいろいろ苦労させたな」


自然体で儂を労ってくれているけど。本当に11歳か? 満栄は感心する。


殿は北畠晴具様とも北畠具教様とも違う。高い官位を持っていた彼らは、下々の事はおまえらがやれとばかりに、我らに上から命令するだけだった。しかもその命令の中身も碌に理解してはいなかった。


殿は別格だ!


そもそも殿は言葉や態度が温かい。身分の違いを態度に示すこともない。儂の言葉もちゃんと聞いて下さる。


銭払いで家臣を雇う制度。富国を目指した様々な取り組み。銃による強兵。きっと儂とは見えるものが違うのだろう。まさに神童よな! 北畠家は負けるべくして負けたのだな。


この神童に見えているものを、儂も共に見てみたい。同じ道程を歩んでいきたい。きっと面白い人生になるだろう。晴具様には申し訳ないが、誠に良き主君に巡り会えたものだ。


「この名簿に記載された者たちは、新北畠家の目的とやり方を理解し、家臣として仕える覚悟ができているのだな? 見たところ若いものばかりだな。若者らしい柔軟な考え方で、北畠家に貢献してくれ。期待しておるぞ」


「は、は〜」

若者たちがさらに頭を下げる。

満栄が連れてきた者たちは、15歳前後の若者ばかりである。柔軟な頭で新体制に適応していってくれるだろう。


満栄、解っているじゃないか、合格だよ!


「俺は今年のうちに伊賀から伊勢に移る予定だ。満栄とその方ら5名は、しばらく伊賀に残り、伊賀の内政をつぶさに学んで欲しい。国を富ませる仕組みを学ぶべし。学校も良く見ておけ。学校が果たす役割を理解せよ。伊勢にも学校を作る予定だ」


「細かなことは万事、村井貞勝と打ち合わせてくれ。貞勝もお主と同様に優秀な男だからな。お主には伊勢の内政を任せるつもりだ。どうだ。出来るか?」


「は。身命を賭して努めます。」満栄と若者が頭を下げている。


ますます11歳とは思えぬ。これは付いて行くだけで大変だ。若い奴らにも気を引き締めさせなければならぬ。


満栄と若者たちが貞勝と共に去っていった。

優秀なやつは優秀なやつに任せておけば良いだろう。


さて伊勢の城だが。木造城は破却だ。木造一族は誰も生き残ってないし、立地を考えると城はいらないと判断する。


次に松坂城だが、すでに勘助に命じて防御力をアップしてもらっているところだ。

俺は今年中に伊勢経済のテコ入れの為、家族と共にこの城に移動する。勘助には城の居住環境の整備もお願いしておいた。新妻達も連れて来るしね。


まあ勘助は築城が趣味だから問題ないはず。それが終わったら港湾整備だな。

ごめんね、勘助を便利使いして! 追加で「温泉も掘ってね」とか言ったら怒るかな?


そういえば勘助。結婚しているという話は聞かないな。

勘助は、軍師とはこうあるべきという思いが強いようだ。家庭の話は聞いたことがないよな。でも嫌いじゃないよ。ストイックなダンディだ。


公私の私の方も充実していてほしいから、世話焼きの母上に嫁のことを頼んでおこう。


ところで忍者調査隊からの報告を聞く限りにおいては、俺は松坂城下町の商人たちの評判が良くないようだ。


晴具なんかは「金儲けなどは、下賤な商人にやらせておけば良いのだ」とか言っていたのだろうな。そうすると城下街の商人たちは今まで大儲けしてきたに違いない。


しかし新しい当主からいつまで経っても、金儲けに繋がる声が掛からないのが気に入らないのだろう。


北畠家の新当主よ……銭が欲しいのなら、今まで通りのやり方で全て松坂商人に任せろや! 余計なことは言うなよ!

……と言いたいのだろうな……


……しかし……


新商品の開発は俺が指示する訳だし……

商品を運搬するための街道整備も俺! 港の整備も俺! 全部俺なのだよ!

全国規模で買付と販売を任せている商社正直屋だって本当の社長は俺だぞ!


つまりね。昔ながらの楽な商売に胡坐をかいているような商人は不要なのよ!

そういう商人は荷物まとめて松坂から出て行ってもらおう。


いっそのこと全部を正直屋で統一するかな。今の正直屋は、商社正直屋がメインだが。『スーパー正直屋』とか『コンビニ正直屋』を作っても良いしね。


田丸城の方は、何と言っても伊勢神宮とセットで考えるべきだ。


一度神官と会って話をしよう。そもそも伊勢神宮は何年かおきに建て替えをしないといけないから、そのお金を援助してあげれば、喜ぶことはあっても文句は言わないと思う。


松坂の港から田丸城の城下町への街道を整備して、田丸城の城下町に北畠家直営の旅館をたくさん作って一大観光地に仕立てるのもありだな。


『正直屋観光』だな! 面白そうだ。

やるのは満栄だけどね。ごめんなさい。

でも丸投げして行かないと身がもたないのよ。やれば楽しいから頑張ってね。


旅館といえば温泉とセットだ。


直営の旅館には温泉を掘らせて露天風呂を作ろう。前世でも伊勢志摩は観光地だったからね。上手くいくと思う。伊勢を裕福にすれば、領民は遊ぶお金ぐらい持てるようになるはず。


そのお金をレジャー産業で吸い上げて別のことに投資だ。お金を国の中で大きく循環させていこう。俺も温泉に入れるしね。


オヤジたちに「伊勢の内政は満栄にやらせる。霧山城は今まで通りオヤジたちに任せる」と伝えたら大喜び。


オヤジたちは内政が本当に嫌みたいだ。伊賀の内政は村井貞勝。伊勢は鳥屋尾満栄で頑張ってもらおう。


伊賀の軍事は森可成と島清国。伊勢の軍事は工藤昌祐と藤堂虎高だ。


人数が少ない分、連れて来ている郎党に目一杯頑張ってもらおう。伊賀方面担当軍師は山本勘助、伊勢方面は真田幸隆だ。


お〜、なにか形になってきているね……

足らない人材は伊賀と伊勢の学校卒業生で回せば良いな。


満栄には「伊賀と同じ学校を、早急に松坂に作れ」と、指示しておいた。

「学校には農民の子供も通わせるぞ」と、3回は念押ししておいた。


2国それぞれの学校の卒業生達が立派に育って、北畠家で内政の戦力となって欲しい。


人材をスカウトするばかりでなく、自らが育てることが大事だ。将来、内政官がどんどん必要になるはずだからね。






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