内政1
天文10年(1541年春)10歳 元服
幕府と六角家が、俺たちを敵視している。
ザコの朝倉義景はほっとくとして、三好家とは防共協定みたいなのを結べないかな?
しかし戦国時代に協定なんか意味あるかな?
たぶん人質交換とか、婚姻とかがセットでないとダメなのだろう。
両方嫌だね!
三好家は『悪逆非道な管領はヘソ噛んで死んでしまえキャンペーン』を行ったのは俺たちだと薄々気づいている。少しはシンパシーを持ってもらっているとは思いたい。
前世の記憶では三好長慶という人は、室町幕府や公家、寺社といった旧体制の枠でしか思考ができなかったのだと思う。
若い頃に苦労して成功した凄い人だと思うのだが、肝心なところでは、俺とは話が合わない気がする。
三好との協定だけど『敵にならないよう仲良くお付き合いしようね』で、良いのかな?
六角家は当主の六角定頼が死ねば、ザコ大名家に転落するけど、死ぬのは確か12年後だ。
長いよね……
何があるか分からないから、早めに六角家を弱体化させておきたい!
六角陣営から甲賀忍者をこちらに引き込んで、六角家の目と耳を無くしてしまえば良いかな!
定頼がいくら優秀でも、リアルで正確な情報が入らなくすれば怖くないでしょ!
こちらからの欺瞞情報で混乱させることも出来るしね。
六角家対策の前に1つ解決しておきたい問題がある。
それは俺の経歴だ!
2カ国の領主になっちゃったし、いろんな大名との外交を考えると、忍者の倅という経歴をイジっておく必要がある。
ここらで、血筋ロンダリングをやっちゃうかな!
変身〜だよ!
忍者の倅かと思いきや、先祖を辿ればなんと高貴な血筋だったというようにしたい。
具体的には北畠の名前をそのまま使えると都合がいい。
サクッとできそうでもあり。戦国時代といえども、流石にそれは無理じゃないかという気もする。
ダメ元で山科のおっさんに聞いてみるか。
あのおっさんは銭さえ払えば何でもしてくれそうだしね。
でもね、あのおっさんも朝廷の財政のために頑張っている訳だから、あまり悪く思うのも良くないか!
いろいろ動く前に、オヤジたちには、なぜ血筋ロンダリングが必要なのかを説明しておかないとダメだ!
そうしないと「おまえは忍者の血筋が嫌なのか?」と、怒られるかもしれない。
今後の外交のためには、どうしても必要なことをしっかり説明しておこう。
仁木に命じて、山科のおっさんに連絡とってみるか……
さすが動きが早い……
山科のおっさんの脚力は忍者並みだと思うぞ。
京から伊賀上野城まで、何でこんなに早く移動できるのだろう?
山科流忍術とかあるのかな?
またまた山科のおっさんのいつものやつ……長い沈黙から始まる。
お決まり過ぎて安心感がある。公家の古典芸能なのだろう。
頭の中は別の仕事の事考えているから、時間の無駄にもならないぞ……
おっさんの話は長い……要点をまとめると……
戦も勝つし、羽振りも良いそうじゃない!
商人達も噂しているよ。ずいぶん儲かっているってね!
で、いくらまでなら銭を出せるの?
……というところかな……
「血筋を変えたいのでしょ。そうなんだ! そうなんだ! うん! うん! 銭しだいで羽林家もいけちゃうからね……希望はあるかな? 高いのから安いのまでいろいろあるのよ。目移りしちゃうよね……」と、おっさんのセールストーク炸裂だ。
「こういうのは麿の得意分野! 他の公家に話を持っていったら絶対ダメ! 麿に任せれば安心だからね。麿の専任契約にしてくれるかな? 頼むよ! 何なら過去の事例と相場も教えようか?」と、まだ続く……
「で……肝心な話だけど……いくらまでなら出せるのかな?」と、長いセールストークが終了だ。
山科のおっさんの真骨頂を見た!
俺は、血筋ロンダリングはもっと大変なことかと思っていたのよ!
山科のおっさんから「何という不謹慎な事をいうのだ」と、怒られるのかと思っていたのにね。
いつもの駆け引きの末、5000貫で手を打ってもらった。
その後の仕事は早い! 実に早い! 手慣れている……適当に捏造した家系図が直ぐに出現した……
あの有名人の北畠顕家の血を引くという公家だ……
俺はその家にサクッと婿入りすることになる。
これで北畠三蔵に変身だ……
血筋ロンダリングがいとも簡単に終了する。
こんなんで良いのか……
かくて俺は、従五位上北畠伊勢守三蔵となったのだ。
事前に説明しておいたから、オヤジたちも喜んでくれる。母上や嫁候補達も大喜び!
もちろん家臣たちもだ。
従五位上北畠伊勢守三蔵に至るまでの過程を知っている俺は、素直には喜べないのだ。
主上には、米焼酎と麦焼酎、蕎麦焼酎の他に椎茸なんかもいっぱい送っておこう。
オヤジたちからこの機会に、嫁候補たちと祝言を挙げろと言われる。
北畠の名をもらうために元服を済ませているため、10歳だけど結婚OKなのだそうだ。
『どちらが正妻になるかで揉めないかな?』と思っていたら。
オヤジたちの話し合いで、正室の座は空席にするそうだ。
桔梗と桜は側室として祝言を挙げることになる。
将来どこかの有力大名と、婚姻同盟をしないといけない局面がないともいえない。どこの大名になるかは判らないけどね。
俺も正室の座というのは残しておいた方が良い気がする。
何かゲームに使うカードみたいだ。
前世のように恋愛があって、幸せな結婚へという流れはないのだな。
このままいけば、もう1人は嫁さんが増えるよな。現代人の感覚では嫁3人は多過ぎると思うけど、この時代では当たり前なのかな?
結婚すると3人の嫁それぞれに気を使わないといけないから疲れそうだ。この時代にも夫婦喧嘩とかあるのかな?
式は秋に行うということになる。
その前に、国の色々な用事を終わらせておかないとね。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。
初めての作品ですので
あたたかくご支援いただければありがたいです。
励みになりますので
ぜひブックマークや評価などをお願いします。