表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/242

伊賀防衛戦4

天文9年(1540年夏)9歳


長野軍と関軍は『伊賀など、北畠家が簡単に蹴散らせてくれる。我らは追撃に参加すればいい』と思っていた。北畠家と同様『忍びなど、虫けらも同然! 我らが強い態度に出れば、何でも言い成りだ!』という考えだ。


そんな思い込みにより、長野軍と関軍を率いている当主の長野藤定ながの ふじさだ関盛信せき もりのぶは、もはやいくさの事は頭にない。


伊賀攻めの分け前をどれだけ分捕るかに思いを馳せている。

付き従う農民兵達も、最近裕福になったと聞く伊賀の村に攻め入り蹂躙する『乱暴狼藉』を想像してニタニタ顔だ。


もはや戦闘気分も抜け落ち、伊賀への物見遊山感覚となっている。


一方、伊賀軍の方だが、藤堂と島は、初めてのいくさに不安な気持ちとなり、表情を暗くしている兵達に大声で鼓舞する。


「ここで踏ん張らないと伊賀が蹂躙されてしまうぞ!」

「命をかけるところは今だぞ!」

「俺たちは絶対負けない!」


狙い通り兵の士気は徐々に高まる。


伊賀を守るため命を賭ける士気の高い伊賀軍と、ご褒美に目がくらみ士気が緩みきった長野軍と関軍では、勝敗の行方は自明だ。


長野軍と関軍の陣と伊賀軍が500mの距離で向かい合っている。長野軍と関軍は睨み合ってさえいれば、北畠家が伊賀軍本体を蹴散らす。そうすれば伊賀の虫けらは、逃げ出すに違いないと思っている。


つまり動こうとはしない。


伊賀軍が陣をゆっくりと100mほど前進させる。長野軍と関軍は動かない。藤堂と島は『敵軍に何か策があるのか?』と苛つく。

暫く待ってもう50m陣をゆっくりと前進させる。まだ長野軍と関軍は動かない。


敵との距離は350m。

ライフル隊に「撃て」と藤堂が命じる。ライフル300丁が弾幕を張る。

どうする? どう動く?


藤堂と島は敵の動きに合わせて、こちらはどう対応していくか?

模擬合戦の訓練を思い出しながら高速で思考を巡らせる。


敵の農民兵が次々倒れていく。

敵はどういう策を用意しているのだと迷いはあるが、ライフル隊に弾幕を張らせながらゆっくりと陣を前進させて行く。


敵との距離が近づくにつれて敵の農民兵も武将も次々倒れていく。

慌てた敵の大将が総攻撃を命じている。


ここで総攻撃? バカなのか? こいつら!

藤堂と島は、思わず笑いが漏れそうになる。


ライフル隊の弾幕に農民兵が次々倒れる。

一部の農民兵が、こんなはずではなかったと逃亡を始める。


それをキッカケに敵兵の崩壊が始まる。


藤堂と島が、敵の崩壊のタイミングを見逃すことはない。

「敵武将の首をとって手柄を立てるぞ」と、争って槍隊に追撃を始めさせる。

槍隊で左右から敵兵を包み込もうとしている。


ライフル隊が槍隊に遅れまいと、ゆっくり前進しながら弾幕を張る。

逃げる敵兵だが武将も農民兵も最初からやる気などない。槍隊が追いつくとすぐ無様に降参する。


「それでも武士かよ!」


槍兵がいきり立つ。降伏するから首も取れない。その繰り返しだ。

おかげで、当主や一門衆に加えて主な武将達もあらかた捕縛することになる。


藤堂と島は相手の不甲斐なさに呆れている。


しかし当初の目的である、『六角家が面倒なので、関家と長野家の領地は取らない。多額の賠償金を請求し、2度といくさができないようにする』を達成するため、捕虜をつれて長野家の城に移動する。


藤堂と島は縄で縛った人質を連れて敵城の前に立つ。

「開門……」と、門前で叫ぶ。


開けられた門から人質を連れ、兵とともに城に乗り込む。関家の方には使いを出し、留守を預かる武将と一族を長野の城に呼びつける。


藤堂と島が評定の間の上座に座り、後ろ手に縛り上げた当主や一族、家臣たちを目の前に並べる。藤堂と島が刀を抜いて睨みつけるが、自分たちのバックに六角家がいると思うのか態度がデカいのだ。


『俺たちにこんな事をして、おまえら六角家に殺されるぞ』と思っているだろう。


藤堂は舐められたらいかんと思い、2人の当主の首に刀を当てる。


「賠償金としてそれぞれの家は5万貫ずつ払え」と脅す。

当然返事はない。


すぐに兵に命令し、城にある銭や武具、着物、掛け軸、骨董品、さらに米蔵の米もあるだけ運び出して庭に並べる。


「関の城にも兵が向かっている。城にあるものを根こそぎこちらに運んで来るだろう。しかし、こんなものでは到底足りぬぞ。残り5万貫ずつを持って来なければ、両当主と一族の首を刎ねる」と脅かす。


もちろん答えは「そんな銭は当家にはない」である。


俺のところに長野家と関家をどうするか、忍者速達便で問い合わせしてきたので『両家お抱えの商人から家が傾く限界まで借金させて賠償金を払わせたら人質は解放せよ』と、返事を送っておいた。


「借金させてでも、払わせろや〜!」とか、ここにもヤクザいました。済みません。


しかし綺麗事ではすまないのだ。

こいつらの国力を落として、伊賀が六角家といくさになっても、こいつらが応援の兵を出したくとも出せないように、財布空っぽの借金まみれ状態にしておく必要がある。


できれば六角家からお金をたくさん借りてくれると良いのだけど!



ここまで、お読みいただきありがとうございます。

初めての作品ですので

あたたかくご支援いただければありがたいです。


励みになりますので

ぜひブックマークや評価などをお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ