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伊賀防衛戦3

天文9年(1540年夏)9歳


霧山城は、農民兵が600人と武将が200人で守られている。それに対してオヤジたちに率いられた特殊部隊は400人だ。


城攻めを行う場合、攻め手は3倍の兵が必要とされている。加えて霧山城は難攻不落と言われる山城である。


本丸は急峻な山の頂部にあり。そこに至るには狭い山道を登りながら、途中に設けられた郭を順番に撃破していく必要がある。

したがって通常であれば兵400人で霧山城を攻略することはほぼ不可能だ。


北畠晴具は大事な一族を守るために、霧山城に十分な兵を配置し、万全を期して出陣していたのである。


日没が近づいた頃、オヤジたちに率いられた特殊部隊400人は、身を隠していた林から出てくる。キビキビした動作で急峻な斜面の麓に集合していく。


昼間に隠れていた林の中では兵に目隠しさせていた。そのおかげで兵は月夜が明るく感じる。全員が迷彩服に迷彩色のヘルメットを着用し、顔には迷彩ペイントを塗っていて、少し離れると山の風景に同化して、部隊がどこにいるのか分からない。


斜面を見上げると、山頂部に霧山城の本丸が見える。

「準備しろ」と、オヤジたちが指示する。


隊員が背中に背負ったバックパックからピッケルを2本とアイゼンを2個取り出す。アイゼンをブーツに取り付ける。滑り止めだ。既に霧山城攻略を想定した訓練を繰返しているので隊員の手際が良い。


俺はこの作戦のために、至高の匠スキルで作成したピッケルとアイゼンを特殊部隊全員に配布している。


「斜面の麓に整列せよ」と、オヤジたちが指示する。

400人が整列を完了する。ピッケルを両手に持った40人が横並びになっている。

先頭はオヤジたちだ。


「訓練で何回もやった通りだ。一気に登るぞ。登り終わったらまず見張りを始末するぞ。音は出すなよ。」

特殊部隊が音もなく斜面を登っていく。


霧山城本丸に至る山道を登りながら、郭を各個撃破する正攻法は、死傷率が高くなることが予想されるため不採用としている。代わりに急斜面を山頂まで一気に登る奇襲作戦を採用した。


特殊部隊は疲労も見せずに山頂部に到着する。厳しい訓練の賜である。既に見張りは手裏剣やナイフで、オヤジたちが始末している。


特殊部隊に集合をかける。


「俺と藤林が率いる200人はこのまま本丸に突入する。本丸の北畠一族を全て始末することを忘れるな。服部が率いる200人は本丸への登り口を守れ。北畠兵を本丸に入れるな。伊賀の命運は我らにかかっているのだ。北畠家に再興の目を残すな」と、オヤジが檄を飛ばす。


百道と藤林が率いる200人が、本丸を囲う塀の側まで静かに移動する。


「塀の内側には剣術の達人達が、要所ごとに守りについている。伊賀流体術を試そうという気持ちはわかるが、榴弾と拳銃で始末していけ。時間をかけるな。俺達の仕事はこれだけではないのだ」


200人が塀を乗り越えていく。本丸内の建物の要所ごとに10名単位で武将が守りについている。武将達が油断なく太刀を構えている。強そうだ。


特殊部隊は接近戦での勝負を行うことなく、遠くから榴弾と拳銃で剣士たちを始末していく。半刻で建物の外を守っていた武将の姿はなくなった。


「集合しろ」


オヤジたちが特殊部隊を集める。

「あの立派な屋敷に一族が立て籠もっているはずだ。さっさと落とすぞ。ただし今回も接近戦は禁止。遠くから拳銃で始末していけ。遺体を確認したいから榴弾は使うな」


立派な屋敷の門の前には篝火が焚かれ、50名もの武士を従えた嫡男の北畠具教が立っている。


「穢らわしき忍び風情が、北畠家の奴隷として働いておれば良かったものを。ここにいるのは全て剣の達人だ、貴様らなど全員斬り殺してやるから覚悟しろ」と強気に叫んでいる。


特殊部隊は遠くから拳銃で次々に武将たちを始末していく。

剣士たちは口々に「飛び道具は卑怯なり」と叫んでいる。


いくさに卑怯もあるか。いくさとは、ただ殺すだけよ」と、オヤジたちが言い返す。


やがて敵が静かになったので、特殊部隊の数名に中の様子を確認させる。屋敷の中を偵察した者達から、子供を含め一族らしきもの全員が自決していたと報告を受ける。


一方、服部が率いる200人が守る本丸登り口には、武将に指揮された農民兵600人が、銃声や爆発音を聞きつけて殺到して来る。しかし狭く急な登り口は攻めるには大変だが、守るには容易い。


登り口の狭い山道を密集して登ってくる兵達は、銃撃と榴弾で次々倒されていく。兵が600人から約400人に減ったあたりで農民兵が潰走し始める。残っている武将たちを1人ずつ仕留めて終わりだ。


オヤジたちは生き残りがいないか城内を確認させた後、100人程度の特殊部隊を山道の途中の郭に配置して残りの300人と山道を下る。


山道を途中まで駆け下りたところで、北畠家本体を見張らせていた忍者調査隊から、北畠軍敗走の知らせを受ける。


「伊賀軍の勝利だ。まもなく北畠軍の残党がこちらに敗走してくるぞ。山道の要所で待ち伏せよ。敗走兵達は山道の上まで登らせろ。そこから一気に攻撃しろ。一門につながる武将は逃さず全て始末せよ。農民兵は逃してもかまわない」と、特殊部隊に指示する。


伊賀軍勝利の知らせに、「俺達は勝ったぞ〜! 北畠に勝った! 武士に勝ったぞ!」特殊部隊が声を上げている。興奮して涙ぐんでいる者もいる。


「喜ぶのは早いぞ。まだいくさは終わっていないぞ。俺たちは俺たちの仕事をするぞ!」と、オヤジたちが特殊部隊に気合を入れる。


霧山城に向かって敗走してくる一門の武将を、要所、要所に身を隠した特殊部隊が拳銃と榴弾で確実に始末していく。


一門ではない武将で降伏するものは縄をかけ、自決したい者は死んでもらった。




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