戦の準備2
天文9年(1540年春)9歳
勘助が俺から指示された注意点を、集まった諸将に順番に説明してくれている。
1.雨でも鉄砲や爆弾は使えるはずだが、雨での戦闘はなるべく避ける。装備品の管理と手入れは念入りに行うこと。戦の前後で装備の盗難、紛失を厳重に管理すること。
2.北畠家の一族は官位持ちが多い。下手に生き残られると朝廷や幕府からの横槍が想定される。全滅させること。
3.相手を総崩れさせた後は、電撃作戦で伊勢を占領すること。
4.関家と長野家は六角家が面倒となるので占領はしない。しかし多額の賠償金を請求し、2度と戦ができないようにしておくこと。
侍大将たちの表情が固い。
本当に一番注意しないといけない点は、ほとんどの兵が初陣であることと、率いる将も大人数の兵を指揮するのが初めてだということだ! 軍師も同様だ。
皆は、それを解っているから表情が固いのだ。
こんな時に「大丈夫なのだろうな。負けたら終わりだからな。絶対失敗するなよ」というような言葉がダメなのは俺でも分かる。
なんて言って励まそうかな?
「俺は神様と『この世から戦をなくし民を幸せにする』ことを約束し、それを実現するために行動してきた。だからこの戦の責任はすべて俺にある。諸将はこの戦に力のすべてを出し切って欲しい。神の加護がある伊賀軍は絶対に負けないのだ」と、こんなところでいいかな!
ダメでも、もう言っちゃったし! 伊賀の当主をやるのなら前世で、起業して社長でもやっておけば良かった。もう少し気の利いたことが言えたのにね。
神童といえども、幼子である殿が我らを励まして下さっている。我らはいったい何をしておるのだ。我らに期待し伊賀に呼んで下さった殿に、不安な表情を見せるなど言語道断だ。気合を入れねば。兵の士気を高めねば。家臣一同が闘志を燃やし始める!
その後は、具体的にどう行動するかという話になる。
阿波口から伊賀街道(国道163)を長野峠に至るルートを進んで来る長野家と関家を合わせた約1000人の兵を、長野峠で待ち伏せて迎撃する。
伊勢地口から青山峠に至るルートを進んで来る北畠家の約3000人の兵を、青山峠で待ち伏せて迎撃する。
特殊部隊以外の忍びは長野家や関家、北畠家に貼り付き、敵の動きを漏らさず報告する。
特殊部隊は、防備が薄くなる霧山城を強襲する。
北畠家の一族郎党は、少ない兵とともに霧山城に篭っていると推定されるからだ。
この戦は、オヤジたちが一番張り切っている。北畠家に対して思うところがあるのだろう。特殊部隊にはアメリカの特殊部隊仕様の迷彩服やブーツとヘルメット、迷彩ペイント、ナイフ、登山に使うロープや装備なども渡している。すべて至高の匠スキルで作り出したものだ。
迷彩服と迷彩ペイントには食い付きが最高だったな。ミリタリー仕様のナイフは見本を作って、村正一族に作らせておいた。これも喜んでいたな。伊賀組み打ち術にナイフ術が付加されたそうだ。
どう見てもこれは忍者隊ではなく、前世の米海軍特殊部隊みたいだ。
お金に余裕ができたら、常備兵なんかも全部こういうスタイルにするのもありか! 近代装備を忍者は喜んで取り入れたが、武将たちはどうかな?
装備を身につけての訓練はすごかったらしい。
「よく死人が出なかったものだよ」と、道順が漏らしていた。
この装備を身につけた特殊部隊は無敵だと思う。
やっぱり、忍者は面白い。
ここまで、お読みいただきありがとうございます。
初めての作品ですので
あたたかくご支援いただければありがたいです。
励みになりますので
ぜひブックマークや評価などをお願いします。