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北畠家の使者1

天文8年(1539年秋)8歳


あれから直ぐに山科のおっさんから『主上は伊賀での善政を大層お褒めになられておられる。伊賀守の件、何とか主上に承認いただいたでおじゃる。そうじゃ! 土産に貰った焼酎を大層お喜びになられておられるぞ』という連絡がきた。


俺はお礼の手紙と、山科のおっさん経由で、主上に米焼酎を10樽献上しておいた。「全て込み込み追加なしの1500貫」と、言っておいたから、ここからさらに謝礼はいらないと思うのだが。


いるのかな? 気づかないふりでいこう。


『麿は頑張ったからな。追加で謝礼はないのか?』の、連絡だったのか?

気を利かした方が負けだ。

知らないことにしておこう。


山科のおっさんに渡した米焼酎なのだが。前回のお土産の焼酎とは違うぞ。


オヤジが愛飲しているドブロクを、酒蔵から大量に購入し蒸留したものだ。試しに作った米焼酎は50樽で、そのうちの10樽を献上したのだ。


試作した米焼酎の出来は匂いで分かる。

悪くはないが、もう少し熟成させた方が良い気がした。


前世の美味い焼酎との比較だとそうなるが、オヤジ達の評価はAAAだ。

ドブロクとの比較だから当然かも知れない。


このまま米焼酎をメインで作っていっても良いのだが、やはり米は貴重な食料なので、そういうわけにはいかない。


麦と蕎麦の焼酎についても、オヤジ達は旨いといってくれたけど、きちんと作って本当に旨い焼酎に仕上げていきたいから、もう少し試行錯誤させたい。


そういえば、『後奈良天皇ごならてんのうは清廉潔白な人柄だったが、その分お金では苦労していた』というのを、前世の記事を読んだことがあったな。

何でもありの、やりたい放題の戦国時代にあって、こういう人は大事にしないといけないと思う。貴重な人だよ。主上には時々焼酎を贈っておくことにしよう。


朝廷から伊賀守を叙任され、家臣達やオヤジ達が喜んでいる。

伊賀の国を、忍者の嫡男である俺が治める大義名分が手に入ったからだ。

オヤジ達は泣いていたな。


過去の辛い歴史があるからなおさらだろう。


過去の色々な事が思い出されるのだろう。辛いことだらけだと思うけどね。

その気持は分かると、俺もしんみりしていたら。

伊賀守の叙任話を肴に昼から3人で飲み始めているじゃないか。


オヤジ達、今日は仕事しないつもりなのか?

まあ、大目に見よう。

前世のサラリーマンのようなキッチリカッキリ仕事を持ち込んでも仕方ないしね。


俺も、道順に「伊賀は貧乏なのか?」と、尋ねていた頃を思い出した。

俺の話は半信半疑だったろうね。

良く付いてきてくれたと思うよ。オヤジたちには感謝しかない。


母上も幼い婚約者たちも大喜びしている。俺は母上が喜んでくれたことが一番嬉しい。

皆が明るい気持ちになっているな。カメラがあれば写真を撮って回りたいぐらいだ。


しかし伊賀守をもらったといっても、伊賀の安全が保証されたわけでも何でもない。何も変わらないどころか、むしろ伊賀の目立ち度合いが上がったといえる。

周りは碌でもない大名だらけだ。


さっさと強兵を進めないと、伊賀など一気に飲み込まれてしまうだろう。


この幸せ気分の時に最も来て欲しくない奴らが来た。

北畠家から使者である。




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