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山科言継2

天文8年(1539年夏)8歳


官位をもらうための伝手が向こうからやって来ているのだ……

やはりこのチャンスを無駄にはできないぞ。


勘助の方を見ると言葉は出していないが、『そうだ! そうだ! その通り!』と目配せで合図を送ってくる。


それにしてもずっと黙っているな……

動きもしない、このおっさん……


も〜、いつまで黙っているつもりだ?


よしこうなったら、このおっさんが喋るまで、こっちも黙っていてやろうか。


我慢比べなのか? 

4半刻が過ぎた頃……

「おほん、本日は主上への献金のお願いに参ったのじゃ」


お〜、やっと喋ったぞ。

生きていたのか!


本当は、このシチュエーションは「ハ、ハ〜」と土下座でもするものかな?

『こんな公家なんか、このままで良いや!』と思い、「それで……」と先を催促してやった。


「ん……」

予想した反応と違うので調子が狂ったのかな?


また長い沈黙開始……

こちらは暇じゃないのだが……


たぶん俺が出せる金額を、こちらから言わせたいのだろうな。

いじめてやるか! 

大体お金欲しいのは、そっちだろ。しかも俺のお金だぞ!


こうなったら根負けするまで黙っておこう。

それにしても、長いな……我慢比べなのか?


突然ニヤリとして、口元を隠す!

「いくらでも良いのだぞ、ホホホ……ホホホ……」


やっと喋ったか。

しかし時間が本当にもったいない。


「1貫でどうでしょう?」

「それわ……ホホホ……ホホホ……ホホホ……ホホホ……」


ホホホの連呼だ。

何回、ホホホと言うつもりなのだ?

仕方ないので少しへこませるてやるか!


「伊賀は貧しいのです。なぜなら都から流民がたくさん来ているからです。本来は朝廷あるいは幕府が都の民を保護しないといけないのではないでしょうか?」


「見かけによらずなかなか厳しいの……」


帰るかなと思ったけど、帰らない!


「官位はいらんのかな? ホホホ……ホホホ……」

「伊賀守なら頂いても良いかと存じます!」


「頂いても良いとはなんじゃ! まあ良いわ、それでいくら出せるのじゃ?」

「ですから貧乏なのです!」


「5000貫でどうじゃ?」

「高すぎます! 流民の話をさせていただきましたよ」


「2000貫でどうじゃ?」

「500貫ならなんとか」


「では1500貫でどうじゃ?」

「全て込み込み、追加なしの1500貫でお願いします」


「分かった。渋いのう……1500貫で従6位下伊賀守を主上に上奏しておく」

「ありがとうございます。お土産は伊賀で作った焼酎を5樽ほどお持ち下さい」


「また来るぞ」と、言い残してさっさと帰っていった。

用が終われば、スタコラサッサだな。


やりとりを見ていた勘助は、公家相手に大丈夫なのかと目を白黒させていた。

しかし山科のおっさんが帰った途端に、交渉の成果に大喜びしている。

この時代の人は、公家を貴種として尊ぶようだ。


あんな生き物を尊べるか。ホホホばかり言いやがって!

俺も、ホホホぐらいなら言えるぞ!


それにしてもいずれは、作法を守ってちゃんとした応対ができる外交要員も必要かもしれないな。今回は良かったけど、公家にキレられても困るしな。


公家には坊主がいいか? 

安国寺恵瓊あんこくじ えけいが、後2年ぐらいで、安芸武田氏が滅亡してしまい出家するな。つまり無職のフリーになる。といっても幼児だけどね。


オヤジたちにゲットするように伝えておこう。


そうだ影が薄いけど伊賀守護に仁木刑部大輔にき ぎょうぶたいふというのがいるな。

こいつは細川から命令されて、人が良いのか馬鹿なのか付き合いのいくさばっかりしているらしい。


うちは全部無視しているけどね。幕府はすべてお断りにしている。


たぶん、いくさでお金がないだろう。

正直屋から高利で金貸してやればいんじゃないか。

『正直屋金融』も良いかもね。


高金利の支払いがニッチもサッチも行かなくなったら。

もうこっちの言いなりでしょ。

こいつを公家との繋ぎの外交官にするのもありだな。


勘助に相談したら。

ニヤーと笑って「使えなくなったら、守護職も取り上げましょう」だって……悪いやつだな……

まあ戦国時代だし、俺もカッコつけてはいられない。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。

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