至高の匠スキル発動1
天文8年(1539年元旦)8歳
そろそろ、至高の匠スキルでいろんなものを作りたい。
このスキルの事を、皆に何と言うかな! ずっと秘密には出来ないしね。
『戦をなくし民を幸せにするという約束』で、豊穣神様から与えてもらった神通力としておくか!
俺の部屋に傅役の道順が来てくれている。大事な話があるからと俺が呼んだのだ。俺は『戦をなくし民を幸せにするという約束』で、豊穣神様から与えてもらった『神通力』のことを説明する。
あれ、道順が驚かないな? 病気が治せる神通力も、何か作り出せる神通力も大差ないと思っているみたいだ。まあ結果オーライだ。
驚いて騒がれると、至高の匠スキルを隠れてこっそり使わないといけなくなるからね。
こうして、至高の匠スキルのカミングアウトは無事終わる……
これまで、至高の匠スキルで試しに作ってみたのは、うどんセットだけなのだよ。肝心の伊賀を守る兵器を作れるのか試してしてみないといけない。
これ最重要!
もしも、うどんセットしか作れなかったらどうなるのだろう?
あの神様ならありうるな。
その時、急に神様の声が聞こえてきた。というか頭の中にね。
「京からの流民を助けてくれてありがとう。ほんの少しだけど私の評価が上がったのよ。ところで『うどんセットしか作れなかったら』とはどういう意味かしら? 至高の匠スキルでできるのは、うどんセットみたいな簡単なものよ。それじゃいけないのかしら? 変なこと言うわね!」
俺は絶句する。
やっぱりそうか〜。
そうなる気がしていたのだよな。
俺が作りたかったのは、うどんセットじゃないのだ。うどんセットで戦はできないでしょ! 伊賀の危機がいきなり来た! 俺の命の危機でもある!
「神様! 誠に申し上げにくいのですが、うどんセットでは伊賀の民を守ることは出来ません。既に伊賀周辺の大名は伊賀が豊かになったことを知り、略奪に動こうとしているのです」
「このままでは伊賀は蹂躙され、せっかく助けた民も再び流民となってしまいます。伊賀の民を守るための兵器を、至高の匠スキルで創造できるようにして下さい。お願いします! どうかお願いします!」
「助けた民が再び流民に戻ると、私の評価が下ってしまいそうね! それはダメ! 絶対ダメよ! 評価ダウンは断固阻止! 私にもいろいろ都合があるのよ!」
「至高の匠スキルは、創造しようとするものの細かなパーツ形状も頭に描けないとダメなのよ。それと製造過程もね」
「だからね、あなたの前世にあったような最先端兵器なんかは複雑すぎて作り出すのは無理! でもこの世界に既にある物を多少進化させた程度のものを作ることは可能じゃないかしら。あなたの持つ知識で何とかなるでしょ!」
「神様。いくらなんでも細かい製造過程に至るまでの知識にありません!」
「不足している多くの知識を自動的に補うためには、あなたの持つ至高の匠スキルを、かなりパワーアップしないといけないわね」
「先程申し上げた通り、伊賀は危機なのです! パワーアップをお願いできないでしょうか! お願いします」
「あなたは要望が多いわね! でも要望を聞かないと私の評価が下がるのよね。私にも評価を上げないといけない理由があるのよ。その代わりきちんと成果を出して頂戴! 頼むわよ! 成果よ! 成果! いつも見ているからね。じゃあね。」
え〜。もう居なくなったのかな。相変わらず急に現れて急に居なくなるな。
それにいつも見ているというのも気になるな。
変な事言えないな!
評価。成果って会社の上司みたいだぞ。
俺は神様の社員なのか?
それにしても危なかったな。
うどんセットくらいしか出来なかったとはな!
伊賀が全滅するところだったぞ。
それにしてもこのやり取り、道順からはどう見えていたのかな?
「若、先程から考え込まれておられましたがどうされました?」
伊賀の危機だったという話はできないな!
とにかく作ってみよう。
戦国時代といえば、何といっても火縄銃だ!
俺も興味を持ったので前世で色々調べて知識もある。ある程度頭の中にリアルな設計図も浮かべる事ができる。
製造工程は今ひとつだけどね。
知識の抜け落ちは、至高の匠スキルが自動的に補完してくれると言っていたから、なんとかなるはずだよね。
火縄銃の構造を頭の中で整理し『創造 火縄銃』と念じてみる。
「何かが、急に現れましたぞ」
お〜。イメージした通りの火縄銃が作れた。
良かった。火縄銃程度が出てこないようでは話にならないからな。
でも作った感あるわ。何か感動する!
火縄銃をもう1丁作ってみるか。
作れるのは1回だけとか、そういう落ちはいらないからな。
『創造 火縄銃』と念じる。
やっぱりちゃんとできているじゃないか!
先ほどのものと全く同じだ。作る材料は用意しなくて良いみたいだ。
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