ポルトガル奪還2
「急げ! 急げ! 全軍で城まで一気に駆け上がるぞ!」
住民たちは城から離れようと走って逃げている。
解放軍の移動を邪魔する住民はいないようだ。しかし応援しようという者もいない。この後、どう展開するか分からないからな。しかたないか。
10人から20人程度のイスパニア守備兵と何度か遭遇している。散弾銃で全て始末しながら城を目指している。城まではもう少しだ!
「城が見えてきた! 全軍止まれ!」
蝦夷丸からの砲撃で、既にサン・ジョルジェ城は既に穴だらけだ。
急いで狼煙をあげなければいけない! もうこれ以上は城を壊さない方がいい! それに砲撃が続けば、我らも危なくて中には入れない!
「狼煙を上げろ!」
砲撃が止まる。城内も静まり返っている!
場内のイスパニア兵も一安心しているだろうな! 既に放心状態か! 城門は砲撃で見事に吹き飛んでいるな。城壁も壊れている。どこからでも城に入れる。
「城の中に入る! イスパニア兵は躊躇わず撃て!」
「了解しました」
城内に入っていく。
建物は、ほとんど破壊されている。この状態で生きている者などいないかもしれない! いたとしても無傷ではないだろう。
「500人で宮殿の中に突入する! 他は城内のイスパニア兵を掃討して回れ。その後は、城外にいるかもしれないイスパニア兵の侵入に備えろ!」
「了解しました!」
宮殿の中に入る。敵兵は壁を背にして震えながら座り込んでいる。全ての敵兵を始末しながらさらに内部に入っていく。
「3個中隊は私とともに地下牢に向かうぞ! 残りは宮殿内の敵兵を掃討して回れ!」
「了解しました」
敵兵がいないか注意しながら、地下牢への階段を慎重に降りていく。地下牢に到着する。看守はいない。逃げたのだろう。兵に次々に扉を開けさせていく。
「王を探せ! 急げ!」
「エステヴァン様! ジョアン3世王がいらっしゃいました!」
「ご無事であったか! すぐにお連れせよ。 牢に入れられている他の方々も全員お救いせよ!」
……ジョアン3世……
「エステヴァンか! 助けに来てくれたのか! 感謝する!」
「マリア王女も船にいらっしゃいます。とにかく急ぎます。牢を出ましょう」
「マリアは生きていたか! 神よ! 感謝します」
ジョアン3世王は、ふらつきながらも階段を登っていく。
「大丈夫ですか? 階段を登れますか?」
「これくらいは大丈夫だ」
「城は我らが占領しました! 城にポルトガルの旗を揚げましょう」
「そうか! 良くやってくれた! 感謝するぞ!」
「地方の貴族たちは、まだイスパニアと戦っているのですか?」
「牢に入れられていたので分からない」
暗いは階段をやっと登りきることができた。地上の明るさに心が晴れる思いがする。しかし、そこから周囲を見渡すろ、城の変わりように愕然とする。
「エステヴァン! これは……いったいどうしたのだ! 城が破壊され尽くしているではないか……」
「日本軍による攻撃です! 我らポルトガル解放軍は日本の傘下となっています」
「済まないが。状況がまったく分からない」
どういう状況なのか、まったく理解できない! 傘下になったとはどういうことだ?
「今の状況は、まだまだ流動的なのです。イスパニア軍の動きによっては、この状況がいつひっくり返されるかも分かりません。後でしっかりと説明しますので、説明はお待ちいただけますか。王の救出に成功した合図だ。狼煙を2本上げよ!」
「そうだな。今すべきことを行ってくれ! 状況の説明など、後でいい」
「港が見渡せる場所に移動したいのですが!」
「それなら海側の城壁の上だ! 壊れていなければな」
「すぐに移動しましょう。城の中のイスパニア兵は全て始末しているはずです。安心ください」
「そうか。まずは港の状況を確認すべきだ」
「その通りです。日本の艦隊3隻が沈められれば形勢が逆転します。その艦には王女様も乗船されています」
「とにかく城壁に急ごう!」
「1個中隊は我らについて来い! 残りは城の防備を固めよ! 怪しいものは誰1人入れるな!」
「了解しました」
ジョアン3世とエステヴァン・ダ・ガマは、大急ぎで海側の城壁の上に登る。少しでも早く港の状況を確認したいのだ。
「日本の艦隊3隻に、イスパニアのガレオン船20隻が単縦陣で攻めかかろうとしています。ポルトガル艦隊30隻も、3隻を守ろうと移動を開始しました」
「我らを助けに来てくれた日本艦隊を沈めるわけにはいかんぞ! ポルトガルの恥だ! 敵艦隊20隻に対し我らの艦隊は30隻。何とかなりそうではないか!」
「あぁ! 反対側から新手の敵艦隊が10隻近づいてきます! ポルトガル艦隊30隻は、敵艦隊20隻に対して既に単縦陣で攻撃を始めています。あの10隻に対しては何もできません!」
「まずいな! 3隻と10隻とでは……日本の艦隊が沈められてしまうのではないか?」
「日本艦隊3隻が、敵船の進路に対して船舷を向けて並びました」
「そんなことをして、日本艦隊は大丈夫なのか?」
「分かりません。しかし日本艦隊ならなんとかできると思います」
……蝦夷丸旗艦……
「定隆! 丁字戦法でいくぞ。大型銃を可能な限り並べて敵船を沈めてしまえ」
「了解しました! 各艦に連絡!」
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
船舷に配置した90丁の大型銃から発射された弾丸が先頭の3艦に集中する。先頭の3艦は穴だらけになり、急減速して沈没を始める。後続艦は先行艦との衝突を避けようと舵を切る。
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
蝦夷丸に船舷を向けた後続艦に大型銃の弾丸が命中する。後続艦も次々に沈んでいく。
「定隆! 20隻のイスパニア艦隊の方に向かうぞ!」
「了解しました! 各艦に連絡!」
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