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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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ポルトガル王女1

ポルトガルの使者から伝えられた内容というのは……


ポルトガルのジョアン3世王の娘であるマリア・デ・ポルトガル王女が、俺と会って話がしたいというものだ。何を話すのか不明だし、なぜ王女がという疑問もある。王女のふりをした刺客ということも考えられるのだ。


追い返すわけにもいかないし、何かしらの情報が得られるかもしれない。王女と側近1名だけならなら、翌朝に宮殿で謁見すると使者に返答させた。


翌朝、マリア王女と王女の側近1名が王宮にやってくる。何が起こるか分からないし、訪問を歓迎する訳でもない。宮殿の来賓室で保正と特殊部隊10名に守られながら話をすることにした。用事が終わったらさっさと帰ってもらおう。


マリア王女と側近が緊張した表情で、俺の前に座っている。もちろん側近の武器類は預かっている。マリア王女は15歳前後かな。


いったい何の要件だろう! 交渉に子供を寄越すというのはどうかと思うぞ! まあ、俺も幼児の時から交渉の場に座っていたけどね……人のことは言えないか。


「本日は、お会いする機会を与えていただきまして、感謝に堪えません。ポルトガル王女のマリア・デ・ポルトガルと申します。どうぞお見知り置きください」


「日本国大執政官の玄武と申します。大執政官とは日本国の統治を代表する者であります。早速ですが、本日のご用向きをお伺いしたい」


王女と側近は、なぜ俺がポルトガル語を話すのか不思議に思っているかな? いや、そんな余裕はないみたいだ! 後で不思議に思うかもね。


「ポルトガルは、イスパニアの騙し討ちにより国を奪われてしまいました。私の身の回りの者たちと護衛の兵たちとで、辛うじて国を脱出しました。厚かましいお願いですが、我らを日本国で匿っていただけないでしょうか?」


ポルトガルは前世の歴史でも、イスパニアに支配されるがそれが少し早まったということなのか! あるいは、ポルトガルとイスパニアの離間の計が上手くいったということか? 良い展開だ! 朗報だ! 朗報!


「もう少し状況を詳しく説明していただきたい。なぜイスパニアから攻められることになったのでしょう?」


「連合艦隊によるベルクルス港侵攻時に、ポルトガル艦隊が勝手に戦線を離脱したことを、イスパニアは重大な裏切り行為であると判断したようです」


「本当の理由は何ですか?」


「イスパニアは、これまでに日本に多くの艦が沈められています。そのため海軍力が著しく低下していまいました。何としてもポルトガルの艦隊を手に入れたかったというのが、1番の理由だと思います。またポルトガルを支配下に置くことができれば、インド、アメリカ大陸、アフリカ大陸にあるポルトガルの領地が手に入るというのが2番の理由だと思います」


「ポルトガルとイスパニアは親戚ではなかったのですか」

「よくご存知ですね! イスパニアのフェリペ2世に嫁いだ姉が亡くなったことで、もはや親戚ではないと判断したみたいです」


こういった考え方は、日本の戦国大名と同じだか! 個人の意志など関係なく、国にとっての利益を優先するのだな。


「しかし原因をたどれば、全て我が国のせいではありませんか? さらに東南アジアからポルトガルを追い出したのも我が国です! そんな国に匿ってもらうことに抵抗はないのですか?」


「イスパニアは、我らにとって明確な敵となりました。敵の敵である日本とは味方ということになります。いろいろ説明しましたが、現状我らには他の選択肢がないのです。どうかお願いします」


「5隻のガレオン船には、何人乗っていますか?」


「貴族、王宮で働いていた者、兵士、船員たちが乗っています。合計で約600人です」

「王族は他にいますか?」


「王族は私だけです」

「王はどうされたのでしょうか?」


「私を逃がすために戦っていましたので、残念ながら戦死されたか、捕らえられたかのどちらかだと思います」

「私があなた達を匿ったとして、その後はどうされるのですか?」


「もはや、命があれば十分と考えています! 船に乗っている者たちが平穏に暮らすことができるのであれば、私の身がどうなろうとも構いません」

「王女の側近の方にお聞きします。船で来られた方は、全員が同じ考えなのでしょうか?」


「我らは王女殿下の考えに従う覚悟です!」

「ポルトガル国を奪還するために、王女は我らの力を上手く利用しようとお考えではありませんか? そうお考えなら、ご期待には添えません。」


俺は、王女と側近の目を見つめる。


「決してそのようなことは考えておりません」


「分かりました。食べるものに困るような暮らしはさせないと約束することはできます。しかし王族や貴族としての身分を保証したり、特別な待遇を提供したりするつもりはありません」


「もちろんです。そのような厚かましいことは考えておりません」

「船の水と食料はまだ大丈夫ですか?」


「ギリギリの状況です」

「いったん部屋から出ます。検討するのでしばらくお待ち下さい」


俺はいったん部屋から出る。ドアの外で話を聞いてもらっていたサラに相談する。

「どう考える?」


「ポルトガル王女であれば、ヨーロッパの王族たちに多くの伝手があります。将来、ヨーロッパの国々と外交交渉を行う際に有効な伝手となるでしょう。船に乗ってきた600人には、平民として暮らしてもらうのがいいと思います。問題は彼らがアメリカ大陸の先住民たちと、上手くやっていけるのかということですね!」


「分かった」

俺は部屋に戻る。


「我が国があなた達を受け入れる条件について説明する。船に乗ってきた600人は平民として暮らしてもらう。そして、今から言うことは大事なことだ。我らは奴隷制度に反対だ。アメリカ大陸の先住民たちとは、仲間として共存共栄していくつもりなのだ。ここで暮らす以上は、その考えに賛同してもらう必要があるのだ」


マリアと側近の表情に、迷いが見て取れる。


「どうする? 無理はしないでもいいのだぞ」


ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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