イスパニアの思惑2
「妻であったジョアン3世の娘はすでに亡くなっています。私は、1つ目の選択が良いと思います。ポルトガルを属国とすれば、インドの胡椒やブラジルの領地も手に入ります。それにポルトガルが保有する大量のガレオン船や、その乗り手たちも手に入ります。我が国が消耗してしまった海軍力を短時間で補強できるというものです」
「私の考えと同じだ。その案で進めよ!」
「仰せのままに!」
……アルバラド要塞……
信長から連絡がくる。オスマン帝国との交渉が上手くいきそうだというのだ! 東南アジアのスパイスについては、オスマン帝国の商人が日本から独占的に購入することになったようだ。
またポルトガルが占領しているインドの港を、オスマン帝国との連合艦隊により攻略することにも実現しそうだと報告されている。
さすが信長と幸隆コンビ! サクサクと前に進めているな。
その後は、予定通りインドの港をオスマン帝国に譲渡する代わりとして、日本とオスマン帝国とで同盟を結ぶ展開になるだろう。インドの港の取り合いで、ヨーロッパとオスマン帝国の仲がどんどん険悪になってくれればいう事なしだ。
ちなみにオスマン帝国には、外交官として毛利元就と山科言継を送り込む予定だと書いてある。2人には世界の外交の舞台で頑張ってほしい。
良い展開になってきたな!
でもね……オスマン帝国との婚姻同盟になっても、俺はこれ以上無理だからね! 信長に任せる! 絶対任せるからな!
北アメリカ大陸との交易も正直屋が地道に進めてくれている。先住民たちは、気の良いおっちゃん、おばちゃんばかりだということだ。人が良すぎて、こちらが心配になると言っていたな。
先住民たちと、もう少し仲良くなったら北アメリカ大陸のどこかを領地をもらおう。彼らは領地という感覚もないのかもしれないな。
台湾と同じ浸透戦略で北アメリカ大陸にどんどん食い込んでいけば良いのかな。いや、そこまでしなくても良さそうな気がする。やり方は別途検討しよう。
アステカ領も安定してきたし、いろいろ順調に進んでいる。
次のフェーズに進んでいけば、イスパニアやポルトガルとの外交交渉のフェーズに突入だな。でも、なんか面倒くさいな……毛利元就とか山科言継のようなタフそうな人たちに頼みたいのだが、信長に先を越されてしまったな。
飛行機でもあれば別だが、どう考えても日本に戻れる気がしない。
俺の家族をこちらに呼び寄せることにするか。
普光の子供の朱雀は、次期天皇としての英才教育を受けているらしい。2度と方仁殿下のようなことが起こらないよう、後奈良天皇が付きっ切りで指導しているそうだ。朱雀がもう少し大きくなるまでは、普光は日本を出られないだろうな。
平井親子が頑張ってくれて、樺太に日本の拠点が作られたようだ。平井親子は樺太からさらにカムチャツカ半島方面に進出する予定にしているらしい。頑張っているな。その後はシベリア方面になる。将来に向けての資源の確保ができそうだな。
いずれウヌカルの子供のカムイには、この方面を担当してもらうつもりだし、アイヌの族長たちからも、早めにカムイに戻ってきてほしいという要望が来ている。
カムイとウヌカルには、蝦夷州でしばらく過ごしてもらうことにしよう。
北方方面は平井親子がいれば大丈夫だろう。彼らは優秀だな。
普光、朱雀、ウヌカル、カムイ以外の全員と、豊穣氏親に嫁いだ幸、工藤兄弟や藤堂虎高の妻子たちもこちらにやってくることになった。俺もやっと単身赴任を卒業だ。
家族がやってくることになりやる気が出てきた! ベルクルス港をさらに拡張することにしたのだ。日本湾の大貿易港に発展させるぞ!
海から1km程度離れた場所に西洋風の宮殿を作り、海岸部には取引のための市場も作った。
今後、本拠地をまたまたどこかに移したら、氏親にそっくりプレゼントしよう。そうなるとメキシコは北条家の管轄になるな。氏康さん! 過労死しないでね! 氏政以下のオール北条家メンバーに来てもらうことにしよう。
日本でちまちまやっているより、こっちの方がずっとやり甲斐があると思うよ。もう俺は忙し過ぎるから頼む! 絶対頼む!
信長は拠点をフィリピンに移すようだ。フィリピンは東南アジアへのアクセスにおいて、立地がとてもいいのだよ。信長ならフィリピンを本拠地にして上手いことやるだろう。そうなると、オール織田家メンバーは東南アジアに引っ越しだな。
あれ、日本からどんどん人材を引き抜いてしまって大丈夫か?
俺もこちらが長くなり、遠い日本が何だか面倒くさくなってきたな。
前世のアメリカ人たちも、日本に対してそういうイメージをもっていたのかもしれないな。
天文23年(1554年春)23歳
イスパニアがポルトガルに電撃侵攻した。
ポルトガルの王都は、イスパニアの支配下となった。電撃侵攻というより騙し討ちだ。
親戚として宮殿に招待された隙をついてポルトガル王を捕まえたのだ。
地方の貴族たちは卑怯なやり方に憤り、至るところで反抗している。しかし王が人質に取られているし、兵力差も大きいのだ。イスパニアによりポルトガル全土が掌握されるのは時間の問題だろう。
ポルトガルへの騙し討ちからしばらく経った頃、ベルクルス港の沖に、ポルトガル艦隊5隻がやって来る。ポルトガルの旗と白旗を両方とも掲げる短艇1隻がベルクルスに入港してくる。
艦隊の数は少ないが、要塞では今度は何が起こるのかと緊張が走る。
短艇に乗ってきた使者を、要塞防衛の責任者である工藤祐長が要塞の入口で対応する。祐長には通訳ペンダントを渡しているのだ。会話には不自由しない。使者からの口上は、特殊部隊により大急ぎで俺に知らされるのである。
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