スカウト1
天文7年(1538年冬) 7歳
細川のバカ管領が戦をしまくるものだから、風説の流布に励みながら、米の買占めと転売で、伊賀は儲かりまくっている。
しかし無駄な戦の繰返しで、京の都とその周辺の人達は傷つき焼け出されるのだ。
焼け出された人達が着のみ着のままボロボロとなり、伊賀を目指してとぼとぼ歩いていく。
なぜ伊賀を目指すのかというと! 『いったいどうなった伊賀の国! 飯が食えるし、学校もあるってよ!』という噂が流れているからだ。噂の元は行商のおじさんたちだ。
余計な噂を無責任に流しやがって……
ボロボロの人たちが救いを求めて一心に歩いている。周りのヤクザ大名に襲われるから、伊賀はまだ目立ちたくないというのが本音なのに。しかし伊賀に救いの光を求め、ボロボロになって歩く人達に来るなとは言えないよな。
というわけで伊賀は人口増加中だ。そろそろパンパンだけどね。人は増えるし商売は忙しいし、人が増えれば揉め事や利害調整も増える。
伊賀は内政がクッソ忙しくなってきた。
オヤジ、保長、正保のオジサンズは、内政なんか全く理解してないし興味もない。でもやってもらっているよ。
伊賀は、この人たちが治めてきた国だしね! 責任あるでしょ!
3人とも「毎日、毎日! 何でこんなに忙しい! 疲れる! 草臥れた!」と、溜息混じりで愚痴りあっている。やっぱ3人は仲が良いな。
その後は決まって、『地獄から解放されたのは中忍と下忍だけだ。上忍の俺たちは地獄から開放されてないぞ〜』と叫んでいるらしい。
ある日、いきなり俺は3人に呼び出される。
何事かと思っていたら「後は三蔵に全部任せた。頼むな!」とか、言ってきやがった。何が任せただよ。
責任放棄だぞ! オジサンズ!
まあこの3人領地経営などに興味がないことは、薄々分かっていたけどね。
「その代わりだな。俺たちの娘を嫁にしろ。分かったな! 頼んだぞ!」
何がその代わりだよ! 7歳に領地経営を丸投げする気か! 嫁も持てと!
責任放棄だ!
結局押し切られた。服部家からは桔梗ちゃん4歳が、藤林家からは桜ちゃん4歳が嫁に来ることになりました。嫁といったってまだ赤ちゃんみたいなものだけどね。
まあ俺も幼児だけど……
俺の嫁になったので会いに行きましたよ……
頭を撫でたら「キャッ、キャ」していました。
よだれは出てなかったけど……
俺の嫁だよな! これで良いのか!
彼女達は実家で花嫁修行するらしい。
まだいいから遊んでいて下さい。今度オモチャも作ってあげるからね。
ところで……
お金もあるからそろそろ城作ろうかな? 戦国時代は力の象徴、城が必要なのだよ。
城をどこにしようかとオヤジ達と話し合ったところ、伊賀街道と大和街道が交差する上野地方に作ることになった。
城の周りには商業地区とか作ろっと!
しかし俺1人で領地経営と城建設と街作りは、いくら何でも無理だよな。優秀な人材のリクルートが必要!
しかも直ぐだ……
起業が上手く言った若手社長なんかも同じ事考えるのだろうな。
とにかく、前世の知識活かしたピンポイントリクルートだな。
それにね。そろそろ近隣のヤクザ大名から攻め込まれそうなのだよ。
『いったいどうなった伊賀の国! 飯が食えるし、学校もあるってよ!』とか、行商人がいらない噂を流しやがったせいだ!
今やその噂に色々な尾ひれが、ついているらしい。
金持ちが、大金持ちに変わってしまったようだ。
まあ伊賀は大金持ちだけどね。間違えてはいない。
俺を支えてくれそうな優秀な人!
思い出せ俺! 前世の記憶頼りにしているぞ!
この時代の優秀な人材は誰だ?
思い出した端からスカウトしてやる!
でも少し不安もあるのだよ。
だって俺は、信長君とは違い英雄でもないし、いわば普通の人な訳よ。
前世で社長をやっていた経験も無しなのよ!
もちろん管理職もないよ!
『この時代のスーパー優秀人材が、俺なんかの言う事を聞いてくれるだろうか?』と、いうのが悩める所なのだ。
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