大海戦2
「上陸用の短艇を下ろせ! 兵を上陸させるのだ! 兵の輸送が終われば、大砲や馬も上陸させろ! 急ぐのだ」
「提督! 了解しました!」
……工藤祐長……
「砲撃による被害はどうだ?」
「数棟の街の建物が壊されただけです。火事も起こっていません。商人や職人たちは避難しているので、怪我をしている者もいません」
「祐長様! 敵船が、上陸用の短艇を下ろし始めたようです」
「いいぞ! 壁の上に迫撃砲を準備しろ! 大型銃隊も、ライフル隊も壁の上に上がるのだ! 砲撃は終わりだ! ただし、短艇から兵が降り始めるまで撃つなよ! 私も壁の上にいくぞ。撃つ時は私の合図に従うのだ!」
上陸用の短艇が海岸に到着し、船から次々兵が飛び降りる。短艇はガレオン船に戻り次の兵を輸送していく。
槍兵を前衛にして後衛が火縄銃兵という陣構を海岸に作り始める。6000人の兵全てが揃えば、要塞に向けてゆっくり移動し始めるつもりなのだ。
「ライフル隊! まだ敵兵を撃つなよ。攻撃は、海岸に敵兵6000人近い人数が揃ってからだ! 奴らが簡単に逃げられない人数になるまで待つのだ! 奴らに逃げられてしまうと砲撃が始まってしまう。奴らが海岸にいる限り、イスパニア艦隊も逃げようにも逃げられない。砲撃しようにも砲撃できないのだ」
海岸に上陸した兵がどんどん増えていく。イスパニア兵たちは火縄銃の用意も始めている。やる気満々だ。要塞からは反撃がないのだ。彼らの勝利を確信している。やがて兵の輸送が終わり、砲や馬も運ばれ始める。
「皆の者! 準備は整った! 日本を舐めるな! 存分にやり返してやれ! 大型銃隊! イスパニア艦隊の喫水線の少し下を狙って撃て!」
「迫撃砲隊! イスパニア艦隊までの距離を計測しているな! 撃ちまくれ!」
「ライフル隊は、上陸したイスパニア兵を撃て! 生かして返すなよ!」
「了解しました!」
壁の上の兵たちから元気な声が返ってくる。
こちらもやる気満々だ。戦国の世を生き抜いた男たちだ。怖がっている者など皆無だ。
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
大型銃の射撃が始まると、イスパニア艦隊の船体に穴が空いていく。
「迫撃砲撃ちます!」
トゥーン! トゥーン! トゥーン! トゥーン! トゥーン! トゥーン!
ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン!
砲弾が曲線を描いて、イスパニア艦隊に向かっていく。
……連合艦隊 イスパニア軍提督……
衝撃で艦が揺れているではないか! どうしたというのだ!
「提督! 敵が撃ってきました。船体に穴が空いているそうです」
「要塞の壁の上に、砲など見当たらないぞ! どうなっているのだ?」
「提督! 敵は大型の銃を撃っています」
「これだけ距離が離れて! 銃なんかで船体に穴が空くはずないだろう! そんなバカなことがあるはずがない!」
「提督! 大変です! 今度は、空から砲弾らしきものが落ちてきます」
砲弾が命中した艦が大破し沈没を始める。
「このままでは艦隊が全てやられてしまう。危険だ! 沖に離れろ!」
「既に上陸した兵はどうするのです! 彼らを見捨てるのですか? 生きて帰国しても王に処罰されますよ!」
「命令に従え! さもないと撃ち殺す!」
「了解しました。撤退するよう連絡します」
イスパニア艦隊は離脱し始める。
……連合艦隊 ポルトガル軍提督……
「予想した通りだろ! 日本軍は悪魔なのだ。我らは逃げる! モタモタしていたら、日本の艦隊が来るぞ! イスパニアの戦に、ポルトガルが命を懸ける必要などない! 急げ!」
「了解しました。撤退するよう連絡します!」
ポルトガル艦隊が離脱し始める。
……蝦夷丸旗艦……
「迫撃砲の音がしているな! 奴ら沖に向かって逃げてくるはずだ。船舷に大型銃を並べて待機させろ!」
「了解です! 各艦に連絡!」
敵艦隊は、縦一列になってこちらに向かってくる。それに対し、我が艦隊は丁字の形で迎え討つ丁字戦法の形状になっている! いい形だ!
「敵艦隊が見えてきました。ポルトガル艦隊のようです。数は40隻!」
「無傷で返す必要はない! 沈没しないよう、喫水線より上を狙って撃て!」
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
「ポルトガル艦隊が右に進路を変えました」
「ポルトガル艦隊は逃がしてやれ! 次はイスパニア艦隊が来るぞ。こいつらは全て沈没させるぞ! ただし最後尾の2隻だけは逃がしてやれ」
「了解です! 各艦に連絡!」
「敵艦隊が見えてきました。イスパニア艦隊です。数は30隻! かなり数が減っています。しかも銃撃を受けてボロボロのようです」
「喫水線より下を狙って撃て! 全て沈めてしまえ!」
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン! ダーン!
喫水線の下に穴を空けられたイスパニア艦隊が沈没していく。残るのは最後尾2隻だけだ。
「進路を空けてやれ!」
「了解です! 各艦に連絡!」
蝦夷丸艦隊は前進し、イスパニア艦隊の進路を開けてやる。
「定隆、あの2隻はイスパニアに戻って、どういう報告をすると思う?」
「自分たちの失敗は、全てポルトガル艦隊のせいだと、国王に讒言するでしょう。でないと彼らが処刑されてしまいます。ポルトガルは裏切り者ということになりますね」
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