これからどうする1
日本海軍にはとても勝てないと判断したら、ポルトガルやイスパニアはどう行動するのだろう?
まずはポルトガルがどうするかの予想だ。日本に勝てないなら、できるだけ自国に有利な条件で和平条約を結ぼうとする可能性はある。しかし、日本としては『東南アジアと北アメリカ大陸には入ってくるな!』は絶対譲れない。
仮に日本と和平条約が締結されたとして、その後はどうするだろうか? 南アメリカ侵略のために、イスパニアと戦争までするだろうか? きっと戦争はしないな。たしか南アメリカについては、ブラジル以外はイスパニアのだという協定をしていたはずだ。
その協定は破棄できないだろう。なんといってもポルトガルとイスパニアは親戚だからね。そういうことなので、ポルトガルはインド内陸部に向けて侵略を進める可能性の方が高いかな。
ポルトガルがインド内陸部に侵略しようとするとムガル帝国と戦うことになる。ムガル帝国はイスラム系だから、オスマン帝国と同盟を組んでポルトガルを撃退するだろうな。陸軍力では、ポルトガルがオスマン帝国には勝てない。
そう考えると、ポルトガルはこれ以上侵略を広げていく場所はない。
次にイスパニアがどうするかの予想だ。ポルトガルと同じように、できる限り自国に有利な条件で和平条約を結ぼうとする可能性がある。日本が絶対譲れない条件は同じだ。
同じく日本と和平条約が締結されたとして、その後はどうするだろうか? まだ侵略していない南アメリカ国を侵略していくのかな。しかしそれが終われば、侵略を広げていく場所はなくなる。
ポルトガルやイスパニア以外のヨーロッパの国々、例えばイングランドやフランスは、どうするだろう? もうどこも侵略するところがないならしかたがない……と思ってはくれるかな? 思わないよな。
つまりヨーロッパの国々は和平条約を結ぶより、大連合艦隊を200隻でも300隻でも作って、日本を屈服させる方が得だと判断するだろう。その大海戦で日本を撃破すれば、北アメリカ大陸は早いもの勝ち状態になる。場合よっては俺の首を取ったところが最も広い領地をゲットすることになるかもね。怖いね!
シミュレーション結果はそうなるのだが……さすがにオールヨーロッパ連合艦隊を結成されたら敗北確定だ!
運良く勝てたとしても、こちらも負傷者だらけになると思う。蝦夷丸も何隻かは沈没させられるに違いない。死闘になる。そんなの! 絶対ダメ戦だ!
それに何とか頑張って奇跡的に和平条約を結べたとしても問題ありだ。
和平条約を結んだ国に対して『あなたの国が征服した国では、あなた国が自由にしてください』と認めることになる。つまり奴隷制度を日本が認めることになるのだ!
「ダメに決まっているでしょ! 絶対にダメ!」と豊穣神様に否定されるに違いない。そうなると、ダメばかりじゃないか! どうすれば良いのだろう?
「奴隷制度を続けるなら滅ぼしてやる」と、ヨーロッパ勢と死傷者続出のガチバトルを続けるのは絶対にお断りだ。俺の心が疲労破壊するぞ! それに、俺はしかたないとしても、南アメリカやアフリカに何の縁もない日本人を、死傷者続出のガチバトルに巻き込むことはできない!
「ヨーロッパの皆様! そろそろ奴隷制度は廃止にしてもらえませんか?」とお願いしたところで、ヨーロッパの王たちが了承するとは思えない!
妙案なしか……どうすればいい!
難しいな……奴隷制度の廃止をなんとか……
……そうだ! こんな方法はどうだ! もちろん運良く和平条約が結べたという前提だが。
『あなたの国が征服した国では、あなた国が自由にしてください』までは一緒だ。違うのは、その国に日本と無関係の秘密の『奴隷解放組織』が存在すればいいのだよ。
日本がこっそり武器供与する奴隷解放組織の支援を受けて、先住民が強くなり侵略するヨーロッパの国々を次々と国外に追い出せばいいではないか!
それなら日本には条約違反はしていない。もちろんバレなければだけど。
奴隷解放組織の話をしたら、グアナとかシンチなんか……やる気満々だろうな! 話をしなくても勝手にやりそうだしな。でもなんかこれって……深く考えるのをやめておこう。
豊穣神様の要望に答えるにはこれしかないよな!
日本の強さを分からせる。和平条約を結ぶ。ゲリラ王に活躍してもらう。
これしかないでしょ!
そして和平条約を結べば、ヨーロッパ勢とも交易できそうだ。外交官を通じた対話を増やしながら、不安定であっても交易で日本の力を増やしながら、和平条約を何とか継続する。ヨーロッパ勢の意識が成熟してくるのを辛抱強く待つ。そうすれば徐々に『奴隷制度反対』と考える人が増えてくるだろう。それが正解だろうな!
やはりヨーロッパの孤児たちを忍びに養成する必要があるな。調査本部撹乱隊だ。彼らによって、ヨーロッパの国々の世論操作をしていこう。
それとヨーロッパの国々が、一致団結しないようにしておきたいな。プロテスタント勢力であるイングランドと、カトリック勢力であるポルトガルやイスパニアとは、いつも揉めさせておきたい。ポルトガルとイスパニアも揉めさせておきたいな。
やはり忍びの仕事は、この世界から絶えることはないな!
船旅はもう少しある。いろいろ考えてみよう。
……イスパニア国王 カルロス1世……
ベルクルスやイスパニョーラ島から、逃げて戻ってきた者たちの話によれば、新イスパニア領総督のルイス・デ・ベラスコが、アステカ帝国のクアウテモック2世と名乗る男に討ち取られたようなのだ。
信じられない話だ! しかも新イスパニア領だけでなく、イスパニョーラ島からも、我がイスパニアが追い出されたようなのだ。
パナマの総督府からも、しばらく連絡がきていないのも気になるところだ。まさかとは思うが、同じことが起こっているのだろうか? いったい何が起こっているというのだ。
ポルトガルでも問題が発生していると聞いている。ポルトガルの奴らが日本という国に東南アジアから追い出されてしまったというのだ。まさか新イスパニア領や、イスパニョーラ島で起こったことも、日本という国が関係しているのではないだろうか?
いずれにしても、このままにしておく訳にはいかない! ポルトガルのジョアン3世とは、話をしなければならない。取り敢えずベネズエラからイスパニョーラ島を偵察に行かせてみるか。
まったく腹立たしいことだ。せっかくアメリカ大陸という金のなる木を手に入れたというのに! イスパニアに余計なことをしているのが日本なら許せないぞ!
ジョアン3世に頭を下げて、ポルトガルとの大連合艦隊を結成しよう! アメリカ大陸で儲けた金が減るが仕方がない! 大連合艦隊でメキシコに攻め込み、人の領地を占領した奴らを皆殺しにしてやる!
イスパニアに喧嘩を売った者はどうなるかを示さねばならない! 必ず地獄に落としてやる! 覚えていろよ!
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