サント・ドミンゴ2
「オヤジたちは、特殊部隊1700人を率いて上陸してほしい。まず要塞の中を確認。動くものは全て始末。それが終わったら街に移動。兵でない者はリボルバーを空に向けて撃ち、脅かして街から追い出せばいい。兵は全て始末せよ。終わったら狼煙を上げてほしい」
オヤジたち3人に率いられて、特殊部隊1700人が短艇で次々上陸していく。全員が上陸し終わり、3時間が経った頃に街から狼煙が上がる。
「保正、上陸するぞ」
「海兵20人を護衛に付けます」
俺と保正と護衛の海兵20名が短艇で上陸する。オヤジたちが駆け寄ってくる。
「特殊部隊が来てくれた。海兵は蝦夷丸に戻ってくれ」
「了解しました」
「要塞の中の生き残りは全て始末した。街には、いつものように奴隷にされた者たちが、鎖に繋がれて取り残されていたぞ。数は2000人。取り敢えず1ヶ所に集めている」
「さすが特殊部隊! 手際が良いですね」
この街は横1kmに縦2kmというところか、街と要塞を全て土手で囲うには広過ぎる。そんなに広く囲っても守りきれない。要塞の壊れたところを補修するのが良さそうだな。
「奴隷にされていた人たちの代表を要塞前に連れてきてほしい。通訳ペンダントを1つ渡しておきます」
「分かった。代表を要塞前に連れて来る」と服部保長。
20分ぐらいたった頃、奴隷たちの代表3名が保長に連れられてやって来る。
「我らは日本という国からやってきた。このアメリカ大陸からイスパニアを追い出そうと思っている。日本はイスパニアとは違い、あなた達を農場や鉱山の奴隷にはしない。安心してほしい」
「何と……日本に感謝致します」と3人が感激した様子で答える。
「我らはアステカ帝国からイスパニアを全て追い出した。あなた達はこれからどうしたい?」
「私たちの国は、約60年前にイスパニアに征服されました。この国の者は、その時に全員奴隷にされました。過酷な労働と、痘瘡という病気で、実に多くの仲間が死にました」
「奴隷にされた仲間が、今でも農場や鉱山で過酷な労働をさせられています。日本の力で奴隷を解放し、この国を我々の手に取り戻していただけないでしょうか?」
「国を取り返す戦いは、その国の人間がやるべきことだ?」
代表3名が相談している。
「我々には武器がありません」
「我らが武器を貸せば、自分たちで戦うか?」
「もちろん戦います!」と代表の1人が力強く答える。
「もう一つ聞きたいのは、民の先頭に立って戦いを導く者がいるかどうかだ。また国を取り戻した後に、国を統治できる者がいるかどうかだ。例えばこの国の王族の血を引く者はいないか?」
「タイノ族の王族は、全て殺されてしまいました」
「ではどうするのだ? イスパニアをこの国から追い出すことができても、その後に、内乱が起こるかもしれないぞ」
「イスパニアを国から追い出した。アステカ帝国はどうされたのですか?」
「アステカ帝国では、クアウテモック2世という王族が生きていた。国からイスパニアを追い出した後は、旧アステカ帝国は日本国のアステカ領となり、総督となったクアウテモック2世による統治を我らが助けている。その体制は、我らが強制したわけではないからな」
「ならば、この国も日本の領土にしてください。我ら3人は代表に選ばれていますが、3人には国を統治する知識はありません。日本がこの国で、奴隷を作らないと約束していただけるのであれば、皆のもとに戻り説得します。私の名前はグアナと言います」
「皆で相談するのは時間が掛かるだろう。要塞の中の死体を火葬するのを先にやってもらいたい。放っておけば疫病が発生するからだ」
「疫病というのは、痘瘡のことですか?」
「そうではない。痘瘡が気になっているようだが、我らは痘瘡に罹らなくなる薬を持っているぞ」
「何と! それを皆に伝えれば、文句なしに私の考えに賛成するでしょう。大急ぎで皆の意見を聞いてきます」とグアナ。
グアナ達が大急ぎで仲間のもとに走っていく。20分ぐらいたった頃、奴隷にされていた者たち全てがやって来る。そして俺の前に跪く。
「我らの王となってください」
「クアウテモック2世にも同じことを言われたが、私は王になることはできない。別にこの国を征服するために来たのではない。ヨーロッパの国々は、この国を拠点にしてアメリカ大陸全てを征服しようとしている。それを止めるために来たのだ」
「ただし、この港については日本国領とさせてもらう。理由はさっき言った通りだ。武器の援助はする。自分たちで、キスケーヤの代表を選んで、自らの力でこの国を取り戻してほしい。国の統治については最初の間は手伝う、早く自分たちで統治できるようになってほしい。国として力が付けば、日本国の同盟国となってくれればいい」
「それは、何とありがたい提案でしょうか! 我々としては最高の提案です。それにしても良くキスケーヤという名前をご存知で!」
「私を加護してくれる神が教えてくれたのだ」
「その神様は、何と言う神様ですか?」
「豊穣神様という。豊穣をもたらす神様だ。いまこうして、そなたと話ができるのも、豊穣神様から頂いた翻訳ペンダントのお陰なのだ」
「我らはキリスト教に改宗されましたが、本当のところ、奴隷を認める神など誰も信じてはおりません。我らも豊穣神様を信仰してもよろしいでしょうか?」
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