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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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ベラクルス2

「私たちは日本という国から来ました。あなた達は、なぜ船に乗らなかったのですか?」


俺の言葉が相手の言葉に通訳されて伝わる。なぜこの男が自分たちの言葉を話せるのかと……この家族は不思議に思っていることだろう。


「私たちは、イスパニア人ではありません。ですから、あなた達の敵ではないはずです。事情があり、私たちはヨーロッパには戻れません。この街に居させてくださいませんか?」と女性が答える。


「この国は既に日本の領土となりました。それはご承知おきください。ところで、あなた達はどこの国の者ですか?」

「フランスです。どうしてあなたはフランス語をしゃべれるのですか?」


フランス人なら、フランスの状況が分かるかもしれない。少しでも状況を知ることができれば、サラやルーシーが喜びそうだ。


「確かに我らが戦っているのはイスパニアであり、今のところフランスは敵ではない。あなた達が敵対行為をしない限り、我らは危害を加えたりしないと約束しよう」


4人の表情が少し和らぐ。


「しかし、なぜフランス人がベラクルスにいるのですか?」


「フランス国内で、宗教対立の争いがありました。身の危険が迫ってきたので、十数名護衛とともにフランスから脱出しました。生き残った2人の護衛とともに、イスパニアの港からアメリカ大陸に行く船に乗り込むことができたのです」


「長い船旅の末、やっと船がこの港町に到着しました。我らは、この街の他に行くところがないため、この街でイスパニアの商人の店を手伝いながら静かに暮らしていたのです」


「私には、フランス女性の友人がいる。夫は日本人だ。彼女は日本から丁度この国に来ている。手紙を書いてみるか? 知り合いかもしれないしな。確か彼女もフランスから逃げ出して、日本にたどり着いたと言っていたと思う」


4人の顔が急に明るくなる。


「念の為に護衛が持つ剣は、女性であるあなたが預かってくれないだろうか! お互いのためだ」


「そちらに紙とペンを持って行かせる。文章はもちろんフランス語で書いて大丈夫だ」


特殊部隊が用心しながら、女性に紙と鉛筆を渡す。女性は紙が海風で飛ばないように押さえながら、紙に文字を書き込んでいる。書き終わった手紙を俺のところに特殊部隊が持ってくる。


「少し待っていてくれ」

俺は、近くにある空き家に向かう。


手紙像の前に手紙を置いて、ルーシーに届くよう祈る。10分ぐらいして、ルーシーから手紙が戻って来る。フランス語でいっぱい書いてあったが、俺にはまったく読めない。


手紙の1番下に日本語で『その女性に是非会いたい』と書いてある。戻ってきた手紙を、フランスの女性に見せる。手紙を読みながら女性が泣き始める。その手紙を渡された他の3人も、手紙を読んで目に涙が浮かべている。


なぜ手紙が返信されてきたのか? 気にする余裕はないようだ。


「手紙のフランス語の部分には、何と書いてあるのだ?」

「サラも私もフランスの王族の娘です。サラとは、小さいころから仲の良かった友人なのです」


「一番下の日本語で書いてある文章には『その女性に是非会いたい』と書いてある。我らと一緒に彼女に会いに行くか?」


「お願いします。神様……感謝致します」


4人が神に祈っている。


「では自分たちの家に戻って、手に持てる程度の荷物を持ってきてください」

「分かりました。すぐに戻ってきます」


「サラの友人を置いてはいかない。ここで待っているから大丈夫だ」



ところで、ベラクルスの港の防衛はどうするかな。トーチカを作っても、上陸しようと思えばどこにでも上陸可能なのだよ。やはり大西洋側に蝦夷丸がいないと意味がない気がする。後で豊穣神様に相談しよう。


4人が戻ってきた。カバンらしきものを1つずつ持っている。


「ここから、アカプルコの港までは600kmあります。まずは、この国の首都であるホウジョウシティ(メキシコシティ)に向かいます。そこまでは300kmです」


「特殊部隊に馬車を探してくれと伝えてくれ。あるだけ持ってきてほしい。それと馬もだ。ホウジョウシティ(メキシコシティ)に全て持っていく。ホウジョウシティ(メキシコシティ)とアカプルコやベラクルスへの移動や運搬に使えるからな」


暫くして特殊部隊たちが、街に残された馬車と馬を連れて来る。

「この馬車にはこの人たちに乗ってもらう。残りは特殊部隊でホウジョウシティ(メキシコシティ)に運んでくれ」


馬車と馬には特殊部隊が交代で乗ることになったみたいだ。俺はちゃっかりフランス人たちと馬車に乗っている。来る時と違う! 楽だ〜!


「サラとあなたはどういう関係なのでしょうか?」

「私は日本国の大執政官をやっています。実質的に日本は私が統治しています。そしてサラは私の妻なのです」


4人の表情が変わる。


「日本の王でしたか? 気安い態度で失礼致しました」

4人が頭を下げている。


「気にしないでいいです。サラの友人ということは、私の友人でもあります。気楽にしてください。ところでそちらの子供は、あなたの弟ですか?」


「失礼しました。私はルイーズ、隣は弟のシャルル、護衛はレオンとミシェルと申します。この度はお世話になります」


「私は、日本国大執政官の玄武と言います。こちらこそよろしくお願いします」

「ところで、あなた方は奴隷制度についてどう思いますか?」

4人の表情が、途端に暗くなる。


「ベラクルスの港にも奴隷がいました。済みません。私たちは奴隷制度には反対の立場なのです……」

俺の反応を気にしながら、ルイーズが話してくれた。


「私も反対だ。安心したよ。サラも大反対していたからね」

「それを聞いて安心しました。ヨーロッパでも貴族の大農場では奴隷が使われています。奴隷制度に反対する貴族の方が少なく、どう答えるべきか悩みました」



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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