出発に向けての打ち合わせ3
「これから話すことは、豊穣神様から聞いた話だ。アステカ帝国というのは大きな国だったのだ。首都テノチティトランには20万人くらいの人が住んでいたという。人の多さは日本の京の都くらいのかな。ちなみに首都テノチティトランは湖の中に作られた街なのだ。アステカ帝国が支配する地域には1000万人の民が住んでいたらしい」
「イスパニアは、そんな大きな国を滅ぼしたのですか?」と信長。
「アステカ帝国の支配地域の中には、アステカ帝国を良く思わない連邦国があったのだ。4つくらいの国から構成されるトラスカラという国がその筆頭国だ。イスパニアはアステカ帝国の攻略に当たり、まずトラスカラを味方に引き入れることから始める」
「イスパニア軍自体は、たったの1000人程度だった。しかし反アステカの国を次々と味方に引き入れるやり方が成功する。首都テノチティトラン最終攻略戦では、周辺国から10万の兵が集められる。10万の兵に攻め込まれてテノチティトランは陥落するのだ。戦略が優れていた」
「武器についてだが。アステカ帝国の武器は槍、盾、弓だ。金属製の鎧はない。槍も石の槍だ。それに対してイスパニア軍は金属製の鎧、剣、槍、クロスボウ、銃、大砲、馬だ。馬による攻撃もかなり有効だったようだ。武器の優位性があった」
「新イスパニア領の総督はルイス・デ・ベラスコという男だ。アステカ帝国の最後の皇帝はクアウテモックという。皇帝は勇敢な男だったらしいが、イスパニア軍に捕まり殺されている。アステカ帝国が滅ぼされて既に約30年が経つから、クアウテモックの子孫はいないかもしれない」
「新イスパニア領の攻略についてだが、まずは、このアカプルコ港にいると思われるイスパニア船を全て沈めることから始めることになる。次にアカプルコの街を占領し、この街を要塞化する」
「新イスパニア領の拠点は『首都メキシコシティ』と呼ばれている。元々はアステカ帝国の『首都テノチティトラン』だった場所に作られている。場所はここだ。アカプルコとメキシコシティは京都と尾張の倍くらいの距離になる」
「新イスパニア領は広い。日本の5倍くらいあるのだ。日本から大軍勢を引き連れて、新イスパニア領の各地を転戦して回るのは上策ではない。気候も違う、土地勘もない場所での転戦は苦労するはずだ。相当に時間も掛かるだろう」
「作戦としては、要塞化したアカプルコにイスパニア軍を集めるだけ集めて撃破しようと考えている。西国の攻略と同じだ。その後は、アステカ人に武器を貸し与え、自分たちの力で国を取り戻す戦いを展開してもらいたいと考える。もちろんその筋書き通りに行くかどうかは分からない。現地で臨機応変に望むことになるだろう」
「アステカ人に武器を貸し与えることと引き換えに、アカプルコは日本の領土とするつもりだ。日本のものにしておけば、イスパニアは東アジアや東南アジアに進出するための港を作れなくなるはずだ」
「アカプルコを日本の領土とするに当たっては、我らの食料を永続的に確保する必要がある。アカプルコの辺りでは米が作れるみたいだ。日本の米作り農家を連れて行こうと思う」
「痩せた土地で、米作りに苦労している農家から希望者を募ってほしい。できれば独身の若者がいいだろう。先住民から嫁をもらえば、現地の民と仲良くやっていけるはずだ。とりあえず希望者を100名連れていきたいと考えている」
「何だか面白そうですな。土産話を待っております」と勘助。
勘助は俺と一緒に行きたかったのだろうな。顔に書いてあるぞ。
だけど、俺たち全員が日本からいなくなる訳にはいかない。なるべく早く帰ってくるから待っていてほしい。
次は光秀と話をしないといけない。病院に行こう。
「光秀、アカプルコまで一緒に行って欲しい。2年間頼む!」
「何ですか! 突然に!」
「イスパニアがこれ以上国力を上げるのを阻止したいのだ。それにアメリカ大陸の民が痘瘡で何十万と死んでいっている。何とかしたい。多量にワクチンが必要になる。そうであれば、光秀に一緒に来てもらうしかないのだ。光秀の留守を任せられる人は育ってきているか?」
「まだまだ未熟ですが、そういうことであれば、彼らに任せるしかありませんね」
「手紙は送れるから大丈夫だぞ。豊穣神様が手紙を配達してくれる手紙像を下さったのだ」
「電話のようなリアルタイムではないが、弟子たちと連絡がとれるぞ」
「それはすごいですね。それであれば弟子たちも安心するでしょう」
「問題が1つありますよ。話を聞けば、福は絶対一緒に行くと言いますよ」
「大丈夫だ。あいつは強い。私や光秀より数段強いから大丈夫だ。光秀は福に護衛してもらえばいい」
「え……そうなのですか?」
「出発は1週間後だ。頼んだぞ」
出発するメンバーが決まった。
……マラッカ……
蝦夷丸:30隻
総司令官:北畠信長、参謀:真田幸隆
割譲地担当および外交担当:毛利隆元、北条長綱、島津貴久、松永久秀と一族郎党と旧家臣たち
スパイス諸島担当および外交担当:斎藤利三、蜂須賀正勝と一族郎党と旧家臣たち
陸軍大佐:柴田勝家。陸軍大尉:丹羽長秀、前田利益 陸兵2000人
通訳隊:20人
特殊部隊:隊員500人
黒鍬建設:200人
残りは海軍(艦隊司令官:梶原景宗)
……新イスパニア領……
蝦夷丸:30隻
総司令官:俺
医師:明智光秀 医師見習い:福 看護婦:10名
イスパニア語通訳:ルーシー、藤林保正(俺とルーシーの護衛)
特殊部隊:百道三太夫、服部保長、藤林正保、隊員2000人
陸軍大佐:工藤昌祐、工藤祐長 陸兵500人
黒鍬建設:200人
米作り希望者(独身の男限定)100名と種籾
残りは海軍(艦隊司令官:九鬼定隆)
蝦夷丸については、蝦夷州の秘密造船所で製造したということにして、西国攻めの時から少しずつ、こっそりと台数を増やしている。現在の総数は150隻だ。今回の出征で海外に出ていく蝦夷丸は97隻となる。国内で待機するのが53隻だ。
今回の遠征で我が国は、ポルトガルやイスパニアと完全に敵対することになる。さらに次回の海戦では総力での海戦となるだろう。向こうもエース級の提督を出してくるはずだ。国内の53隻はそうなった時の予備である。
尾張の港に、蝦夷丸が並んで停泊している。補給作業と乗員の乗り込みが忙しく行われている。岸には、出発する者たちを見送る者たちが集まっている。
「定隆! 最終点検が終わりしだい出発する。旗を掲げろ」
「了解しました! 各艦に連絡!」
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