出発に向けての打ち合わせ2
「マラッカを占領したら、東南アジアの諸国に使者を送り、友好関係を築く必要がある。澳門から毛利元就を抜いて使者にするのがいいだろう。元就だけでなく、松浦隆信、松永久秀、北条長綱についても、現地から引き抜いてこれそうなら、使者として活躍してもらってくれ」
「東南アジアの諸国と友好関係を築き、東南アジアの諸国は日本の産品のお得意さんなってもらいたい。王直たちも明でプラプラさせておくと碌なことをしないから、キャラック船を有料で貸し出してどんどん東南アジアに行かせろ。交易の収益から税を取るのも忘れないでくれ」
「国王、大貴族、教皇、オスマン帝国などから資金を預かり、それを増やすことを商売にしている商人がいるという話をしたと思う。サラの話によると、国を跨いで商売をする大商人のなかに、グラシア・メンデスという大商人がいるらしい。オスマン帝国にも影響力を持っているそうだ」
「グラシア・メンデスは、サラたちがフランスから逃げ出す時に手を貸してくれた女性で、お金には厳しいが信義を重んじる大商人だということだ。将来的にオスマン帝国やヨーロッパの諸国と交渉する場面があるとすれば、彼女のようにヨーロッパ諸国にもオスマン帝国にも自由に出入りができる人物は貴重だ」
「我が国として是非にも伝手を持っておきたい人物だ。彼女は有名人らしく、東南アジアに来ている複数のイスラムの商人に、礼金とともに手紙を渡しておけば、間違いなく彼女に届くようだ。取り敢えずイスパニア、ポルトガル、フランスの状況を教えてもらうような手紙をサラに3通書いてもらっている。信長に渡しておく」
「その手紙を、東南アジアで信用できそうなイスラム商人を3人選び、その3人に手紙を託してほしい。時間が掛ると思うが、その手紙の返事が戻ってくれば、フランスの国内の状況を知ることができるし、グラシア・メンデスとの伝手もできる。また信用できるイスラムの商人の伝手ができる」
「そしてマラッカを抑えた時点で、グラシア・メンデスを通じて、オスマン帝国の王に連絡を取ってほしい。敵の敵は味方だというのを強みにして、ポルドカルが支配しているインドの港を、一緒に攻撃しようという交渉をまとめてほしい」
「その上で、インドの港をオスマン帝国に渡す代わりに、日本と同盟を結んでほしいと交渉するのだ。かなりの大仕事になると思う」
「オスマン帝国との交渉が成立したら、協力してインドのポルトガルの港を砲撃するのだ。我らが協力すれば、インドの港など簡単に占領できるはずだ。しかし、オスマン帝国の海軍はポルトガル海軍より弱い。我らが引き上げれば、インドの港をポルトガルが取り返しに来るはずだ」
「海戦となれば、オスマン帝国の海軍は負ける。そうなれば、オスマン帝国は頭にくる。ヨーロッパの国々のケツを陸戦で蹴っ飛ばすことになるだろう。陸軍は強いからな。また地中海の海賊を使ってヨーロッパ諸国の港を襲わせるだろう。もしオスマン帝国が動かないなら、オスマン帝国が動くように策を仕掛けてほしい」
「オスマン帝国とヨーロッパ諸国で消耗戦をやってもらうのが理想的だ。日本が仲介を取る機会があれば、日本とヨーロッパの国々との和平条約締結に利用できるかもしれない。インドの港がポルトガルに取り返されても、スパイス諸島のスパイスは、イスラム商人が陸路でオスマン帝国に運ぶことが出来るから、我らの交易に影響はない」
「オスマン帝国とヨーロッパ諸国を、二虎競食の計に掛けるのですね! またまた面白そうですな」と勘助。
「さて、今度は東側の攻略についてだ。アカプルコとフィリピン間のガレオン船の航路について説明する。いずれイスパニアも発見するはずだ。その航路が見つかれば、イスパニア艦隊がフィリピンにやってくるようになるだろう」
「その航路の説明をする。アカプルコを出ると、貿易風を使ってこの辺りを西に移動するのだ。距離は約12000km。そのまま60日から90日でフィリピンに到着だ。ハワイという島国で、水と食料を補給することもできるが、どうするかは分からない」
「今度は帰りの航路の説明をする。フィリピンを出ると、黒潮海流に乗って日本の沖合のこの辺りを通って北上する。今度はこの辺りで東に向かう北太平洋海流を使って、アメリカ大陸のこの辺りまで航行するのだ」
「次に南に向かう海流に乗ってアカプルコに到着だ。日数は90日から130日くらいだ。この航路には補給できる島はないため、なかなかに苦しい航海となるはずだ」
「蝦夷丸は蒸気の力で移動できるため、航路は自由に選ぶことができる。日本から出航して、この辺りを通ってアカプルコに向かうことができる。しかし石炭を満載して出航しても、石炭のみで航行すれば、半分の行程までたどり着けるかどうか分からない」
「しかし、帆走と石炭航行を併用すると、アカプルコ港まで到達できるかできないかギリギリとなる。その場合は40日から50日程度の航海となるだろう。しかしアカプルコでの石炭補給ができない場合には、アカプルコから帰れなくなってしまうという問題が発生する」
「したがって、航路の途中に補給拠点を絶対に設けなければならない。丁度良い位置にあるのが、先程のハワイという島国だ。場所はここになる。ここに石炭を貯蔵しておけば良いのだ」
「使える海流や偏西風がないため、キャラック船でハワイに石炭を運搬するのは難しい。そこで蝦夷丸を使って石炭を運搬することになるのだが、そのためには日本とハワイの中間地点にあるウェーク島という無人島に、まずは石炭を貯蔵しておく必要がある」
「そこからハワイに、石炭を運んで貯蔵となる。こつこつ進めないといけない大変な作業だ。そこで3年前から、この地道な作業を里見義弘にやってもらっているのだ。里見衆には苦労をかけている」
「里見家にやってもらいたいことがある……と言われていたのは、ハワイの石炭貯蔵なのですな。気楽に言われていたので気にしていませんでした。申し訳ありません」と勘助。
「しかし、ハワイはなかなか良いところみたいだぞ。一度行った里見家の者たちは、また行きたがるそうだ。毎回たっぷりとお土産を持っていくこともあり、ハワイの王からは大歓迎されているそうだ。島の住民たちも、石炭運びの対価として日本の産品を渡しているので大歓迎されているらしい」
「ちなみに義弘は、ハワイの王の娘を妻にもらっていて、ハワイ島に義弘の屋敷もあるそうだぞ。何だかハワイ島の方にいる期間の方が長いらしいぞ」
「話を戻すと。我らにとってその島が重要な補給拠点ということは、イスパニアを始めヨーロッパ諸国にとっても、将来的には同じことだ。我らのため、平和な島の住民のため、ハワイ諸島は日本で守らないといけないだろう」
「補給の問題はそれでいいとして、次は新イスパニア領をどう攻略するかだ。その新イスパニア領だが、元々はアステカ帝国という大きな国があって、その国がイスパニアに滅ぼされたという話はしたと思う」
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