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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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家族との時間2

「イスパニアは、アメリカ大陸の先住民が持っていた金や銀などの財産を奪う。彼らの土地も農場も奪う。先住民は奴隷にした。いきなり他国に攻め込んで、そんなことをしてもいいのだろうか?」


妻たちは首を横に振っている。

「そうなのだ、それを正しいとする根拠はない。では、いったいイスパニアはどうしたと思う?」

「分かりません」とサラ。


「『キリストの名のもとに、アメリカ大陸はイスパニア国王に与えられたものである。これに反抗する者には、いかなる手段を用いて従わせて良い』としたのだ」


妻たちの顔が強張っている。そんなことが許されるのかという顔だ。


「キリスト様が、征服者に都合の良いことを仰せになるはずがありません。イスパニア国王カルロス1世が自身に都合の良いことを言っていると思います。もしも教皇様が言われたのだとすれば大問題です」


「カトリック派にも、素晴らしい人はいます。キリスト教は、プロテスタント派とカトリック派の争いや、イスラム教との争いをやり過ぎたのだと思います。人を幸せに導く宗教者が、権力闘争や戦争で心が曇ったのかもしれません」とサラ。


「私もそう思う。宗教自体をどうこういうつもりはないのだが、宗教を都合良く利用する権力者たちこそが問題なのだ」


「信仰する神様が認めたとなれば、アメリカ大陸やアフリカ大陸の先住民に対する非道な行為も、イスパニア人は罪悪感をもたないだろう。先住民たちは、とんでもない不幸の中で暮らすことになるのだ」


「アメリカ大陸を日本に置き換えるとぞっとしますね」と普光。

他の妻たちも頷いている。


「ヨーロッパ諸国は、東南アジアやアメリカ大陸に進出することで、どんどん大きな力を持っていくのだ。つまりこのまま時が過ぎれば、ヨーロッパの国々の考えが、この世界の秩序になっていくのだ」


「私は、ポルトガルやイスパニアの支配地がこれ以上増えないようにしたい。ヨーロッパによる世界の秩序の構築を阻止したいのだ。とは言っても、ヨーロッパと最後まで血みどろの争い続けたくはない。我らの力を認めさせたところでヨーロッパ諸国と和平条約を結ぼうと考えている」


「ヨーロッパ諸国と日本との間の和平を取り持ってくれる仲介国として、オスマン帝国はどうかと思っている。ヨーロッパの敵である日本は敵の敵だからな。ヨーロッパ 対 日本とオスマン帝国連合という構図ができれば、そういう可能性もあるのではないだろうか?」


「それなら、フランスの追手から逃れる手助けをしてくれた大商人を、オスマン帝国への伝手にするのはいかがでしょうか! その大商人は、国王、大貴族、教皇、オスマン帝国などから預かった金や銀などの資金を、高利で貸し付けることで利息を稼ぐ商売をしています」


「儲けた利息は、資金を預けたお金持ち達に還元されます。預けた資金を増やすことができるため、お金持ち達は競って資金を預けようとします。そのため、大商人の手元には、いつも潤沢な資金が溢れかえっているのです」


「国王、大貴族、教皇、オスマン帝国は、自分たちのお金を増やしてくれる大商人に対して、自領への自由な出入りを認める特権を与えます。そのおかげで大商人は、多国間を自由に出入りができるのです」


「また大商人が預かる資金は自分たちの資金でもあるため、いくさからも、盗賊からも大商人を保護しようとします。結果として、その大商人はお金という力と、特権を持つことになるのです」


「その大商人の名前は、グラシア・メンデスといいます。とても有名な女性の商人で、オスマン帝国にも大きな影響力を持っています」


「東南アジアで商売をするイスラムの商人なら、彼女のことを誰でも知っていると思います。礼金は高くなりますが、複数のイスラムの商人に依頼しておけば、グラシア・メンデスと連絡が取れると思います。そして彼女からオスマン帝国に連絡を取ることができると思います」


「有益な情報をありがとう。まずはグラシア・メンデスに、イスパニア、ポルトガル、フランスの状況を礼金とともに訪ねてみることにしよう。グラシア・メンデスと伝手ができるといいな!」


「大執政官様の、お役に立てたならうれしいです」


「では、さっそく手紙を書いてくれないか。フランスの身内の状況を尋ねるかどうかは、サラに任せる。またルーシーも知りたいことがあれば、サラの手紙に追加してもらえば良い。ただし、返事はかなり気長に待つことになるだろう」


「グラシア・メンデスという大商人に伝手を作るところまでは良いと思います。しかし和平条約までたどり着くには、何かもっと強力な交渉材料が必要だと思います。何かお考えがございますか?」


「あるぞ! 痘瘡とうそうを予防できる薬、黒死病、マラリアの治療薬だ。マラリアは湿気の多い山間部で罹る病気だ」


「何と! 黒死病の治療薬ならば文句なしだと思います。過去に何度も途轍もない数のヨーロッパの人が死んでいるのです。彼らは何をおいても、その薬をほしがるはずです!」


痘瘡とうそうについては、ヨーロッパで過去に痘瘡とうそうが何回も大流行したお陰で、病気に懸かっても重症とならない者も出てきています。しかし痘瘡とうそうが大流行しなかった地域もありますので、黒死病の治療薬のような交渉材料とはなりませんが、ある程度の効果は期待できると思います」


「マラリアが湿気の多い山間部で罹る病気であるなら、そういう国を侵略しようとするヨーロッパの国々は、その薬を何としても手に入れたいと思うでしょう。ですが別の見方をすれば、彼らの侵略を後押しすることになるかもしれません」


「成る程、和平交渉の材料として一番有効なのは黒死病治療薬なのだな! 大変参考になる。ありがとう」


「いずれにしても和平交渉は、日本という国が強いということを、ヨーロッパ諸国に示した後になる。それまでに薬の話が漏れたら、ヨーロッパの国々が大挙して日本に攻め込んでくるだろう」


それにしても、サラはすごい! 


グラシア・メンデスの仕事をきちんと理解できているし、薬を使った外交交渉も理解できている。すごく優秀。良くぞ日本に来てくれました。我が妻になってくれました! ありがとう! 外交交渉の段階が近付いたら、いろいろ相談に乗ってもらおう。


ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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