やっと帰国
「ポルトガルを追って、蝦夷丸旗艦とここに来た5隻は台湾島に戻る予定だ。この5隻に水と石炭をしっかりと補給してほしい」
5隻の補給が終われば、日本にいったん戻ることになった長綱、久秀、利三、正勝が旗艦に乗り込むことになる。仮に我らが留守の間に、イスパニア艦隊がルソン国に攻めてきたとしても、蝦夷丸が15隻あれば何とかなるだろう。
「衢山、澳門、台湾島、ルソン王国には、日本から定期的に石炭をキャラック船で運ばせることにしている。第3次海外遠征では、この4拠点が補給基地となるのだ。港の整備も頼むぞ」
「台湾島に戻る5隻は台湾島で10隻の艦隊となり、澳門に向かう。その後、澳門の様子を確認すれば日本に戻る。第3次海外遠征までの蝦夷丸の配置は、澳門に10隻、台湾島に10隻、ルソン王国に15隻となる」
「分かりました。第3回目の遠征をお待ちしております」と長慶。
俺を乗せた5隻の艦隊がルソン国を出航し、台湾島に数日で到着する。
ルソン国の状況について、第3次海外遠征までの体制について、一通り説明を終える。島津家の2人は、総督職の話をすごく喜んでくれた。
台湾島に来てくれそうな旧家臣の募集や、婚姻に適した一族の人選のため、貴久が日本に帰ることになる。旗艦に貴久を乗せ、10隻の艦隊で澳門に向かう。
澳門の沖合に到着すると、毛利元就、毛利隆元、毛利隆景、山科言継、王直、ヤジロウが旗艦にやってくる。
「周喬殿が、随分と我らに好意的に取り計らってくれ、澳門の統治の体制が整いつつあります」
「周喬殿の奥方を助けた言継殿のお手柄だな」
「澳門が一段落したら、周喬殿から、討伐してほしい倭寇を2つほど伝えられるだろう。隆景と王直で対応してほしい。蝦夷丸が10隻あれば十分だろう。衢山島が日本に割譲されれば、澳門と衢山の総督職は毛利家の者とする。言継はここに残り、明との交渉を手伝ってくれ。頼むぞ」
「澳門の街作りは、他の港を見聞してきたヤジロウの経験や知恵を活かしてほしい。ヤジロウ頼んだぞ。西洋風の要塞都市にしてくれ」
その後、ルソン国の状況について、第3次海外遠征までの体制について、一通り説明した。総督職の話を聞き、毛利家の3人は大いに喜んでくれた。
澳門や衢山島に来てくれる旧家臣の募集や、婚姻に適した一族の人選をするため、隆元が日本に帰ることになる。
「これから我らは日本に戻る。しかし、すぐに第3次遠征を行うつもりだ。次に来る時が本番の遠征となる。日本はマラッカまで取るぞ! 留守の間だが、ポルトガル艦隊が澳門に攻めて来るかもしれない。その場合には台湾島やルソン王国の蝦夷丸と連携して対応してほしい。澳門と衢山を発展させることも頼むぞ」
「全力で励みます」と元就。
こうして第2次遠征を終わり、俺は蝦夷丸艦隊10隻とともに日本に戻って来たのだ。
天文21年(1552年冬)21歳
あっという間に俺の子供は4歳になっている。単身赴任ばかりだけど、大丈夫だろうか! 母親に任せっきりだな。何か心配になるな。
子供との時間が取れていないし、働いてばかりだ!
ちなみに信長のところでも長男が生まれている。現在2歳。名前は信忠だそうだ。奇妙丸のような変な名前ではないみたいだ。
とにかく。信長がすごくいいパパらしいのだ。自分が幼少期に苦労しているからだろう。子供には、たっぷりと愛情を注いでいるとのこと。前世の歴史のような、ピリピリ信長君ではないのだよ!
何かおかしい! 本来苦労すべき筆頭は信長なのに……俺が苦労を全部背負っているではないか! おかしいぞ!
豊穣神様、やっぱり変ではないですか? 信長に丸投げしたらダメですか!
返事なしか! こういう時は返事してもらえないみたいだ。今更、途中放棄できないからな……
悩んでいてもしかたがない。もたもたしていたら、ポルトガル艦隊やイスパニア艦隊が、ドッサリこちらに押し寄せて来そうだしな。もう後戻りはできないのだ。
いつものように、4人で作戦会議だ。
それにしても、この4人でいる時間は長いな! 家族みたいなものだな。
「早くマラッカ海峡まで進出して、東南アジアに向かう海路の入り口に栓をしてしまいたい。それができれば、ポルトガル対策は一息つけるだろう!」
「しかし、アメリカ大陸の新イスパニア領から、そろそろ大艦隊がフィリピンにやって来そうだ。それにイスラム商人とも伝手も作らないといけない。放置している琉球のこともあるな。本当に検討事項が盛りだくさんだな! そうだ琉球が交渉にきたら山科言継に任せるのはどうだろう?」
「それはいいですね。何かピッタリ過ぎて笑ってしまいそうですね」と幸隆。
「さて、現在の状況だが、澳門と衢山の総督は毛利家、台湾島の総督は島津家、フィリピン北部総督は三好家、南部総督は北条家に任せることにしている。旧大名閥を作らせないつもりだったが、いずれの家もこれからすごく苦労するだろう。命も懸けることになるだろうからな」
「結局、結束力のある元の大名家単位で固まってもらうしかないな。しかし、彼らには申し訳ないが、彼らの跡継ぎがボンクラだった場合には総督の世襲はさせないつもりだ。もしもに備えて、海軍の指揮権を絶対に彼らには渡せないな」
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