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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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明智光秀2

「そんなの……できるはずがないじゃないですか! これでも前世では医者として、人を救う仕事をしていたのですよ。メスで患部をチョンと切るのとは訳が違います。生きている人間の首を切れ……ですからね! 無理。無茶苦茶ですよ」


「できないで佇んでいると、父に殴られました。死ぬ程殴られましたよ。跡継ぎが人を切れないと、家が潰れると思ったのでしょう。大問題だったのでしょう。暫くして、もう一度やらされました。できませんでした! こいつはダメだと思われたみたいです。3日後に家から放逐されました」


「戦国時代とはいえ、酷い話ですよ。自分の息子ですよ! 迷いなしに放逐です。食べるものも渡されませんでした。その辺の山で自害せよ……ということだったのでしょう。自害なんてできませんよ」


「とにかく美濃にいては、殺されると思いました。人がたくさん住んでいる京の都でなら、人に紛れて生きていけると思いました。草や木の芽を齧りながら、ひたすら歩きました。飢え死にしそうになり、虫も食べましたよ。乞食のような身なりとなり、フラフラの状態で京の都までたどり着きました」


「しかし京の都は、小さないくさが何度もあり、治安が最悪でした。殺されないよう、ひたすら隠れているので精一杯でした。職など見つかるはずもありません。そのうち動く気力もなくなり、廃墟になった寺の裏に座り込んでいました。たぶん、自分はここで死ぬのだろうな……と半ば諦めていました」


「その時……数人の武士が戸板に乗せた武士を、寺に運び込んで来たのです。その中の1人が、寺の裏に座っている私を見つけます。井戸の水を汲んでこいと大声で命じます」


「言うことを聞かなければ殺されると思いました。井戸の横に転がっていた壊れかけの盥に水を入れ、急いで寺の中に持って行きました。そこには、運び込まれた武士が横になっていて、脂汗を流しながら痛みに堪えているのです」


「その武士を観察したところ、腕と足の両方を骨折しているのが分かりました。今のうちに立ち去ろうと思いましたが、医師を連れてこいと、先程の武士から命じられます。京の人間ではないことを説明しましたが、刀を突きつけられて再度命じられます。もう無茶苦茶ですよ」


「殺されると思いました。私は医の心得がありますと答えてしまいました。そしたら、今度は治せです! 仕方がないので、添え木や縛るものを探してきて、レントゲンもない状態で、手や足の向きに注意しながら、骨の折れたところ繋いで固定しました」


「これで解放してくれるのかと思ったら、今度は看病しろと命令されます。寺で3日過ごした後、怪我をした武士の屋敷に連れていかれました。そこで、やっと人間らしい食べ物を食べることができたのです」


「日が経つにつれ、その武士は回復していきます。その家から逃げ出しても死ぬだけです。出ていけと言われるまで、その家にいるしか選択肢はありませんでした。寝るところは納屋の中です。それでも廃寺の軒下よりはましでした」


「何日か経ったころ、食い物を食わせてやるから、この家で診療所を開け……と命じられます。その男にとっての、最大限の好意だったのかもしれません。それからずっと、その家で医師の真似事を続けてきました」


「患者がいない時は、下男としてその家の雑用をやらされます。前世では医師として人助けをしてきたのに、何でこんな目に遭わないといけないのかと神様を恨みましたよ」


「何とも大変でしたね。それでは家族を持てるはずもありませんね。これからは少し忙しくなると思いますが、まともな家で、まともな食べ物が食べられることを保証します。このまま一人暮らしではあんまりなので、世話好きの母に、光秀殿の嫁探しをしてもらいます。とにかく安心してください」


「大執政官様! お互い転生者ですが、この世界では私のことは光秀と、呼び捨てにしてください。そうでないと周りの者たちが違和感を持つでしょう。是非そうしてください」


「そうですね。分かりました。そうさせてもらいます」


心のなかで、豊穣神様に問いかける。


「聞いておられましたか。光秀殿の話! 酷いではありませんか。転生前は医師として人助けをしてきた立派な方ですよ!」


「その者は……転生する前に、何も言わなかったから……その……」


「普通の人は神様に対して、いろいろ注文したりしませんよ!」

「そういうものなのか……」


「そういうものです」

「今後は気をつけよう」


「豊穣神様、彼に何かスキルを与えることはできませんか?」

「そうじゃな……何か希望するものはあるか?」


「彼は医者ですから、『薬生成スキル』のようなものを頂けないでしょうか」

「分かった」


「お待ちください。その薬生成スキルで、痘瘡ワクチンは作れますか」

「胃薬、傷薬……程度だが……」


「またですか……前にも説明しましたが、これから我らが海外に出ていけば、この国には存在しない疫病や、様々な風土病とも遭遇すると思います。しかし私の治癒スキルで助けられるのは数名ぐらいです。数万という単位の民を救うことはできません。そのためには痘瘡ワクチンが作れるような薬生成スキルが必要なのです」


「分かった……そなたは日本の民だけではなく、世界の民も救ってくれるのだな! 光秀に上位のスキルを与えておいたぞ。約束したからの!」


言うだけ言って、もういなくなった、いつも通りだな。


どうあっても……日本以外の国の民も何とかしろ……なのか?

……この先何年かかるかわからないのに。


ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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