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明と王直4

……王直……


すごい戦力だ……


この戦力は、倭寇を始末するどころではないではないぞ。海での戦いなら、明の海軍など足元にも及ばないだろう。陸での戦いでも、明の沿岸部くらいであれば簡単に制圧できる気がする。


明にとって本当に脅威なのは、ポルトガルではなく日本ではないのか!


それにしても日本と伝手ができたことは、自分に運が回ってきた証拠といえる。官憲の取締りが厳しくなり、この先どうするか悩んでいたがもう大丈夫だ。この国が後ろ盾なら、例え明といくさになっても負ける気がしない。こんな美味しい提案に乗らないバカはいない!


眼の前で見せられた船や武器に比べれば、我らに貸してくれるという武器は、少し見劣りがするが、その武器でさえ、上手く使えば近隣の倭寇など一捻りだ。散弾銃500丁とか言わず、散弾銃2万丁を貸してくれるなら、寧波、いや浙江省せっこうしょうぐらいなら、自分の領地にできるかもしれないぞ!



「日本の海軍の見学は十分か? では港の管理棟に移動しようか? 日本の産品を見てもらいたいのだ」

「喜んでお供いたします」


どうしよう?……日本の産品は、あまりぱっとしたものがないというか、魅力あるものがまったくないのだ。産品を見せてもらった時に、がっかりした顔を絶対に見せないようにしなければ……と王直も隆信も困り顔になっている。


「王直、これが我が国の産品だ。隆信は見たことがあるか?」

「と……とにかく、じっくりと見させていただきます」


王直と隆信は、石鹸、ガラス製品、透き通るような白い磁器、砂糖、火縄銃……を何度も見ている。何度も不思議そうに見返している。


何だ! これは! こんなものが、日本にあったのか! 今まで見たことがなかったぞ! なぜだ? 九州の正直屋のやつ……俺に隠していたな!


「隆信、どうだ? 海外との交易のために準備してきたものだ」

「素晴らしいです。尾張にこのような産品があったとは、夢にも思いませんでした。ただ、ただ、驚いております」


……松浦 隆信……


こんなのが日本にあったのか! なぜだ……いや確かに眼の前にあるではないか! 見る限り紛い物ではない。これはマズいぞ! 既に王直から購入してしまった明の産品をどうすればいいのだ? 安値でもいいから、どこぞの商人に売り払ってしまわないと大損になるではないか! 


産品に視線は向いているものの、頭の中では損をしないための計算がぐるぐる回っている。隆信は焦る……背中と脇の下に汗をかいてきた。



「王直は、どうだ」

「これは、明で売れますぞ! 絶対売れます。というか、明国の産品がみすぼらしく見えてきました」


……王直……


何だ、この産品は! 危なかったな……仕入れてきた明の産品はどうしたのだったかな? そうだ、隆信に売ったよな。良かった……良かったぞ! もう明の産品なんか日本では全く売れないぞ! 売れる訳ないぞ! このことを早く知っておいて良かった。大損するところだったぞ!


とにかくこれからは、日本で買って明で売るに切り替えないとダメではないか。これを知らない間抜けな倭寇の奴ら……大損するぞ。フフフ。運が向いてきた。運が向いてきたぞ! やったぞ!


明は、いろんな国に対して朝貢に来いとか偉そうに言っているけど、これを知ったら誰も明に来なくなるぞ! 明はこれからどうなるのだろう。日本の産品の購入を、明の役人どもが規制をかけたとしても、大きな流れが始まればどうにもならなくなるぞ。



「芸術品や工芸品については、やはり明のものが優れていると思う。どうだ?」

「優れた芸術品や工芸品は、たまにしか市場に出ません、そんな出物を待っていても商売にならないです」


「そうか。ここにある日本の産品だが、分かっていると思うが、欲をかいて一気に明の市場に出してはダメだぞ。産品の価値が落ちるからな。隆信は分かっておるな?」


「もちろんです。売り方は、この隆信にお任せください!」


「頼むぞ、隆信。しっかり王直が儲けられるようにしてくれ。そうすれば日本も儲かるのだからな」


これは、儲かる、絶対儲かる。やった。やったぞ! 儲けた金で、配下の海賊を増やすか……そして……王直の夢は際限なく広がっていくのである。


「武器を搭載したキャラック船10隻を平戸に移動させる。出発は10日後だ。この港からキャラック船に乗って平戸に向かうくといいぞ」


王直は、運が上向いてきたとばかりに、満面の笑みで尾張の宿に戻って行く。


「王直と隆信には、お目付け役というか参謀役が必要だな。王直の交易量を増やすだけでなく。明国の役人の動向を分析して、どの省の、どういう役人を取り込むのか検討しながら、衢山くさん島だけでなく、福建省や広東省の島なども王直の支配地にしていきたいからな」


「それなら、村上水軍とも懇意だったという毛利隆景はどうでしょう。適任かと思います」と勘助。


「そうだな、台湾島やフィリピンは隆景以外で頑張ってもらうとするか」

「では、近日中に外交官候補を集めて作戦会議を行いますか?」と勘助。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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