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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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明と王直3

……尾張港……


王直に貸し出す武器は、水平2連の散弾銃にすることにした。それを見せれば大いに気に入るはずだ。


その散弾銃は、我らが使っている12連発できるライフルに比べれば、射程距離も落ちるし、2回しか連射できないため連射性も劣っている。従って、仮に我らといくさになっても、簡単に王直党を制圧することができるだろう。


とは言え、散弾銃はヨーロッパで主力になっている火縄銃と比べれば、貫通力は落ちるものの、扱い易さ、軽量性、連射性という点で長所ばかりだ。


散弾銃とその弾については、函館の優秀な頭脳集団と試作担当の職人たちに試作を命じていた。とは言っても、銃自体の見本、金属素材、火薬を俺がスキルを使って提供したから、試作までほとんど時間は掛からなかった。


しかし金属素材や火薬を、将来に渡り俺が提供し続けるのは問題がある。彼らの技術力で自作できるよう大急ぎで研究を進めさせている。早くできるようになってほしい。


散弾銃と散弾の試作と試射を終え、新設した銃工場で散弾銃と弾を量産させているところだ。王直に見せるのは、函館製の水平2連の散弾銃である。


散弾銃は射程距離が約30mと短いものの、弾丸を発射した後に直径7mm程度の散弾が約1mに広がる特性がある。それは密集して突撃してくる敵を制圧するのに有効だと思う。また、散弾の代わりにスラッグ弾を装填すれば、薄い鉄板入りの甲冑程度なら貫通させることもできるのだ。


もちろん散弾でも、鋼製鎧の関節部なら損傷を与えることができるし、至近距離であれば鎧を貫通できなくても、敵を衝撃で吹き飛ばすくらいはできる。つまり戦場での使い方しだいなのだ。


デモンストレーショでは、用意した皮鎧と鋼製鎧を散弾銃で撃つところを見学させた。王直は鎧のところに近づき、鎧の状況を確認している。


奴は火縄銃を撃つところを見たことがあると言っていたな。奴の頭の中では、火縄銃と散弾銃の比較が始まっているはずだ。さてどう思うかだな。


……王直……


火縄銃については、ポルトガル人が撃つところを見たことがある。威力はすごかった。鋼製鎧でも楽々弾が貫通していた。しかし次弾を発射するまでに、火薬詰め作業、火薬の突き固め作業、玉込め作業という無駄時間が必要なのだ。そこは大いに気になるところだった。


我らの場合、接舷してからの敵船への切り込みという白兵戦で銃を使いたいのだ。そういう戦いには火縄銃は向いていないと判断した。


一方散弾銃は、散弾の筒を後部から弾を装填するだけで次弾が発射できる。しかも2連射が可能だ。連射性が優れている。しかも広範囲に弾が広がるというのは最高だ。点で敵を倒そうとすれば銃の扱いに長けた者しか扱えないが、面で敵を倒すことができるなら、銃の扱いに長けていない者でも銃で敵を倒せるのだ。


白兵戦は、勢いで一気に敵を制圧する戦闘だ。散弾銃とは極めて相性が良い。是非ともほしい銃だ。王直の目も輝いている。



王直の奴、気に入ったみたいだな。散弾銃の評価もできないボンクラでなくて良かった。散弾銃に加えて手榴弾もどうかと思ったが、明国では似たようなものが既に存在しているはずなので止めておいた。


次にキャラック船を見せる。

ポルトガル人が乗っている船だから、彼らも良く知っているはずだ。しかし明船よりはずっと操作性が良いし、明船のような隔壁も付いていることに一層感心しているようだ。


王直だけでなく松浦 隆信も、なぜ俺がキャラック船を所有しているのか理解できないようだ。もちろん理解してもらわなくていい。キャラック船であれば、明から東南アジアの国まで安心して航行できる。積み荷もたくさん積める。奴にとっては、何としても手に入れたい交易船だろう。


王直には、海軍の少し古くなったものを10隻ほど貸し出すか。あくまでも貸すのだ。自分たちのものにしたければ購入してもらおう。もっと台数がほしいならいくらでも売ってやろう。王直が密交易で得る資金を、武器や船の購入資金で吸い上げてやる。


散弾銃については、彼らが真似て明の職人に作らせようとしても絶対無理なはずだ。つまり武器の供給は我々しかできないのだ、事が進めば進むほど、王直は我らを裏切ることができなくなるはずだ。


「王直、散弾銃があれば、他の海賊衆に負けないで済むか?」

「もちろんです。ですが、数はどのくらい貸していただけるのですか?」


「散弾銃は500丁、弾は1万発だ」

「そ、それだけあれば十分です……」


「では取り決めだが、あくまでも武器も船も貸すのだ。弾丸は撃てばなくなる。その後は購入してもらうぞ。キャラック船も望むならもっと売ることもできる。支払いは全て金が銀にしてくれ。細かいことは事務方から契約書にして渡す。また倭寇による密交易の儲けの3割は日本に納めること。まあそんなところだ」


「日本の産品については、港の管理棟においてあるので、後で見せよう。きっと驚くはずだ」


「先日説明した倭寇退治の後については、松浦隆信を通じて王直と連絡をとることにする。それから注意してほしいのは、貸している武器や船を転売した場合には厳しい対応を取る。王直および配下の者は全員始末だ! 裏切りはなし。基本的な取り決めは以上だ」


「それと、我らの戦力もおまえらに見せておこう」

蒸気船の蝦夷丸を使って、迫撃砲、大型ライフル、グレネードランチャーの威力を見せつける。


圧倒的な海軍力に、王直も隆信も唖然としている。


風がなくても動ける船、びっくりするほど遠くの的を射抜ける銃、敵を粉々に吹きとばす爆弾の威力に、王直も隆信も声がでないまま立って見つめているだけだった。


王直も隆信も、裏切ったら瞬時に始末されることが、嘘やハッタリではないことが分かったはずだ。



ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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