海外遠征のための作戦会議2
「そういう戦略をとると、琉球はこの先どうなると思うか?」
「琉球は、明の産品を他国に転売することで利を得ているだけなので、明の産品が売れなくなれば、国としてやっていけるのかどうか分かりませんね。そうなれば、琉球国は、何もしなくても我が国に取り込めるかもしれませんね」と勘助。
「交易には、単に中継するだけの中継交易と、外国から持ち込んだ素材を加工して交易する加工交易がある。琉球は独自の産品開発を怠ってきたツケが回ってきたと言えるだろう。自業自得だな」
「勘助の言うように、琉球には攻め込む必要はない。放っておけばいい。そのうち琉球の方から何か言ってくるだろう。こなくても放置しておけばいい。琉球の代わりに、元々日本の領地であった奄美の島を琉球から取り返す。港を整備し、産品を保管する蔵を作る。奄美を交易の中継地として発展させよう」
「交易についての基本的な戦略は以上となる」
「その戦略のためには、武器や船はいいとして、拠点となる港の確保、船の補給体制の構築、明や東南アジアの国々との外交が必要ですね。また外交や交易を行うための伝手も必要になります。いろいろなものを作り上げていく必要があります」と勘助。
我が国は、国力をどんどん上げていかなければならない。国力とは、防衛力、外交力、情報力、技術力、工業生産力、農業生産力、資金力、資源力、人口を総合した力だと思う。
「国力とは何だと思うか」
「単純に武力だけでなくでしょう。いろいろな力を総合した力だと思います」と信長。
さすが英傑! 良く分かっているね。だが説明を省くなよ!
「ヨーロッパ強国は、これからも征服した国を増やし、その国から富を搾取することで国力をどんどん上げていくだろう。今後、我が国はどうすべきだと思うか?」
「1つは、国を閉ざしたまま、国を守る力を高めつつ、ひたすら島国に引きこもることでしょう。もう1つは、ヨーロッパ強国による世界の陣取り合戦が終わってしまう前に、日本もそれに参戦する。この2択だと思います」と勘助。
勘助は良く分かっているな。前世の歴史では徳川幕府が、ひたすら島国に引きこもったのだよ。国を守る力は高めてなかったけど。
「私もその2択だと思う。日本に引きこもることについてはどう思う?」
「蝦夷丸があれば、30年くらいは問題ない気がします。根拠はありませんので、何となくの年数です。しかし200年とか300年ではどうでしょう? そんなに時間が経てば、征服されたアメリカ大陸の先住民たちは、征服されたことも忘れてしまうでしょう」と信長。
「そうなると、ヨーロッパの国を宗主国として、世界がまとまってしまうでしょう。武器についても、ヨーロッパの国による開発競争により日本より進化するでしょう。単独で武器開発することになる我が国は不利です」と信長。
さすが信長、先が読めているな。
「交易ができなくなれば、我が国の国力は落ちていきます。ヨーロッパの国を宗主国とし、世界がまとまってしまったとしても、せめて我が国と交易をしてくれる友好国を作っておく必要があります」と幸隆。
「そうだな。島国に引きこもれば、いずれヨーロッパ強国に膝を屈することになるのは確定だ。では日本が世界の陣取り合戦に参戦するに際しての問題点はどうだろうか?」
「イスパニアがアメリカ大陸でやったようなことを、日本が先住民に行うことは、豊穣神様が許さないと思います」と信長。
「私も豊穣神様は許さないと思う。また私自身もやりたいとは思わない。ではどういう方法がある?」
「海洋帝国ポルトガルを東南アジアやインドから駆逐し、オスマン帝国と同盟を結ぶのはどうでしょうか? それと、ヨーロッパの国はカトリック派とプロテスタント派に分かれています。ポルトガルとイスパニアがカトリック派なら、プロテスタント派と同盟を結んでポルトガルとイスパニアに対抗すればいいのではないでしょうか?」と勘助。
おお〜、さすが勘助。
「基本的にはそういう方向だな。どこかを敵にするのなら、どこかとは味方になるのが正解だろう。全てを敵にするのはダメだ」
「ところで、明はどうしたらいい? ポルトガルとイスパニアを相手に戦っている最中に、明から攻められたら大いに困ることになる」
「台湾島を取りましょう。台湾島から明を牽制すれば良いでしょう」と信長。
さすが我が軍師たち、優秀だな。
「台湾島をどう取る?」
「港を我が国が整備することを条件に、港と居留地を100年間借りるような契約はどうでしょうか? 良い港ができて、台湾島の船も無料で利用できるとなれば、台湾島に住む民と揉めることなく拠点が築けます。台湾島は国としてはまとまっておりませんから、徐々に徐々に年月を掛けて、台湾島全てに日本が浸透していけば、台湾島を属領にできるかもしれませんね」と信長。
恐ろしい軍師たちだな。
「フィリピン諸島はどうする?」
「ルソン国がイスパニアに攻め込まれて困っている時に、イスパニア艦隊を撃退してやりましょう。こちらは台湾島とは異なり、ルソン王国を守ることを条件に、港をタダで使わせてもらいましょう。同様に兵を常駐させるための領地ももらいましょう。その後は台湾島と同じように、フィリピン諸島の全てに日本が浸透していけばいいでしょう」と勘助。
「名案だな。ルソン王国にとって、我らは救いの神となるから、さぞかし歓迎されることだろう」
「ポルトガルが、インドや東南アジアからイスラム商人を追い出しているとはいえ、陸路を使って交易を続けている商人がいると思う。彼らと伝手を作る必要があるな。商売に来ているのなら明の言葉も分かるはずだ。彼らを通じてオスマン帝国と連絡を取れるようにしたいな」
「最初は上手くいかなくても、我らがインドあたりに進出するまでには、オスマン帝国と意思疎通ができていればいいだろう。まずは、マラッカの港あたりまでは駒を進めたいな。ポルトガルが無理やり占領した港を解放するのだ、その国の王も喜ぶことだろう。その後はマラッカの港を守るという名のもとに居座らせてもらおう」
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