貧乏脱出1
天文5年(1536年初夏)5歳
今川家の跡目争いで、米5000石の転売ビジネスが成立したぞ!
畿内で仕入れた5000石、仕入れ値2500貫(3億円分)が、5倍の1.25万貫(15億)で売れたのだ。
爆益! 爆益! うまくいって、安心した。
初プロジェクトだからね。
これに失敗していたら、伊賀に俺の居場所はなくなるからね。
さらに別途買い占めさせていた米5000石分だが!
法華の乱と言われる『法華衆徒による京の焼き討ち事件』が起こり、慌てる大名や商人が米を買い集めたため米の値段が瀑上げ! 米相場で一儲けしようと、欲に目がくらむ堺の商人たちに転売、10倍の2.5万貫(30億)で売れた。
笑いが止まらんな。
法華の乱での取引では、なんせ伊賀忍者総出で風説の流布をやりまくったからね。さぞかし皆があわてたことだろう。
忍者、なんでもできて最高だ!
戦国時代には、前世のような取り締まりはないからね。
風説の流布のやりたい放題! いくらでも相場が作れるのだよ!
『今買わないと米がなくなるぞ』とか、『三好家も京に攻め込むぞ』とか、『来年は飢饉がくるぞ』とかね。
むふふ……
この噂に釣られた堺の欲の皮の突っ張った商人たちに、最高値で米を売りつけることができた訳だ! 損をした商人は、今後は地道に商売するように!
堺の店に5000貫分を残し、残りの金でさらに米の買い占めに励む。
今度は買い占め前に、米相場の売り崩しもやってみよう。
米相場なんか、忍者がいれば無敵だよ。幾らでも儲かる!
オヤジは俺のことをどう見ているのかな?
頼りにしているのか! 心配しているのか! 怖がっているのか!
まあいいか。気にしないことにしよう。
という訳で儲かった銭で、馬や牛や鶏などの家畜類と蕎麦や麦の種を大量購入することにした。伊賀の村で米ができない土地や、隙間みたいな空き地にも、麦と蕎麦をどんどん植えさせよう。
当時の日本の食肉事情についてだが。
天武天皇が「牛馬犬猿鶏の肉を喰う無かれ、犯すものあれば罰する」という布告を出し。続いて聖武天皇が「殺生禁断の令」を出したため、家畜である牛や馬、犬、鶏は食べるべからずとされていた。ただし鹿と猪は除くみたいだ。
俺はそんな禁令は無視する予定だ。
家畜が増えれば食べるつもりだよ。
鶏の唐揚げを食べたいし。牛ステーキも食べたい。
猪も近隣で生きたまま捕まえてくるように指示した。
これも家畜として増やす。増えればトンカツで食べれるのだ。
少し気になったので、伊賀では今までどうしてきたのかオヤジに聞いてみた。
「伊賀では四つ足なんか、とっくの昔から食っとるぞ!」
腹が減れば食うに決まっているという、当たり前の答えだった。
何はともあれ、俺のおかげでビックリするほど銭が増えた。
そして皆が俺のいうこと聞いてくれるようになってきた。
実績がものをいうのだよ!
ところで俺も一応忍者の卵、道順の伊賀組み打ち術のレッスンが始まっている。
もちろん、まだ体ができてないからすごく緩い感じでやってもらっている。
道順に言わせると俺の才能は普通なのだそうだ。
なんかやる気が削がれるな。俺は褒められて上達するタイプなのだぞ!
そういえば、1つ下の藤林保正君も一緒に指導を受けている。
彼の方は見どころが大いにあるそうだ。
「若は若が得意な事を伸ばせば良いのです」と、道順。
まあ良いや。俺は俺だしな。気にしたら負けよ。
でも俺が得意な事とは何だ?
皆は俺をどう見ているのだろうか。少し気になる。




