新たなる国作り3
州庁が置かれる都市には、行政機関、治安機関、教育機関、公営市場、民営の小工場、工房などがどんどん建設されていく。便利な都市の人口がどんどん増えていく。山間部の村からも、人がどんどん流入してくる。
都市には仕事が一杯あるから、人がどんどん流入してきても大丈夫なのだ。逆に人が減った農村では、農地の区画整理を行い、田や畑の形状を長方形に作り直し、道路も整備させた。
正直屋の資本で農業を行うための会社を試験的に作らせようとしているのだ。農民はその会社の社員とする。今なら、大権力者である俺は何でもできるのだよ。個人レベルで災害のリスクを負いながら、農業を行なうのは負荷がかかり過ぎだと思う。農業に従事する人は、品質の良い食料を作るための工夫に専念してもらいたいのだ。
州庁がある都市は大消費地となる。都市に向けて、農地や牧場で効率良く生産された美味い農作物が運ばれることになるだろう。兵糧、兵糧と、何も考えずに、城に食料を溜め込むバカ大名もいなくなったしね。
正直屋の資本で運送会社も作らせよう。物が動けば、人も動く、お金も動く、民の暮らし向きも良くなっていくはずだ。
行政単位をブロック化したことで、内政ができる家臣を各地から少しずつ間引きできるようになった。陸奥や出羽に送り込める内政担当の文官を、早く確保しないといけないのだよ。
いずれ海外に進出して行くことを考えると、地域の特権階級として搾取するのが当たり前に育ってきた大名一族など、将来の禍根でしかない。そういう奴らは、地元から切り離し、全員を安土に集めている。安土を再教育の場にしているのだ。
新しい体制下では、諜報本部調査隊と呼ぶことにしているが、彼らが調べたところ、元大名たちは、誰も反乱を起こす気配はないようだ。前世の明治維新の時とは違うのかな? 不平士族の反乱とか起きそうにないようだ。皆が新しい体制で生き残ることに精一杯なようだ。
しかし、調査隊による監視はまだまだ継続が必要だな。早く調査隊による監視が必要なくなれば良いのだが。
陸奥や出羽に送り込めそうな内政担当の文官の人数も増えてきたし、そろそろ陸奥や出羽を片付けるか。
豊穣家の頑張りで、安房、上総、下総、常陸までは、いつもやっている条件付き臣従が完了している。氏親も良く頑張ってくれた。
陸奥や出羽の大名たちに、大執政官名で臣従するように通達するか! そうか、もう臣従じゃなかったな。『君たち……早く日本国民になりなさい……』だよな。奴らは『君たち……早く日本国民になりなさい……』を理解できるかな? やはり、君たち臣従しなさいの方が分かり易いか?
この国には、陸奥や出羽以外には大名は存在しない。北畠家、北条家、豊穣家は、彼らの領地を全て日本に返上してくれた。ありがたいことだ。その代わりということで、北畠家、北条家、豊穣家の当主は侯爵になってもらった。
公爵に対しては、国から毎年公爵料を支払うことにしているが、あくまでも名誉職である。ただし、海外からの公的な使者や賓客との晩餐会や、大規模な国の式典に、天皇に次ぐ身分の者として参加してもらうことにした。
それを聞いて、氏康さんと氏親は感激していたな。
公家からも公爵を作るかどうかを迷ったのだが、後奈良天皇の要望で、周防御所に行かないで後奈良天皇に忠誠を誓い続けた2家を侯爵とすることにした。この2家には、文化・芸術に対する保護と育成を担当してもらっている。
周防御所に関わらず生き残った公家たちは他にもいる。彼らは全て公家という身分を取りさった。学校に通って再スタートしてほしい。ただし、文化・芸術に関わって地道に研究をしてきた者については、文化・芸術分野を担当する政庁職員として働いてもらっている。
後奈良天皇から依頼され侯爵に任命した公家だが、能力的あるいは人格的に問題ありと見なせば侯爵の位を取り上げるつもりだ。もちろん後奈良天皇が存命のうちはやらないけどね。彼らも俺の考えを薄々感じており、懸命に仕事に取り組んでいるようだ。
この先もずっと公爵家を残すかどうかは、世界の情勢を見ながら、100年か200年後の日本民が決めればいい。
そういえば、山科のおっさんはどうしたのかな? どうでもいいから、気にもしてなかったけど、生きているのかな? すばしっこいやつだから、周防に行っていたかもしれないな。
まあ、どうでもいいか……彼は薬を扱う商人にでもなっている気がする。
ところで、いよいよ陸奥と出羽の大名たちに、大執政官名で臣従を迫ってみた。しかし陸奥と出羽の大名たちは、頭が戦国の世のままだった。こちらの変化に全く付いていけてない。我が国の状況、自分たちの立ち位置、全てまったく理解ができないみたいだ!
彼らだけ戦国の世に取り残されているのだ。「陸奥守護職や奥州探題職を寄越せ!」とか喚いているらしい。もうそんなカビの生えたような役職は、この国に存在しないのだけどね。なんだか哀れさを感じる。
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