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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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新たなる国作り1

なぜ周防御所の要請に答えてしまったのだろう。失敗だ。大失敗だ! 家中が頭を抱えている時に、将軍家から臣従せよという書状が届く。しかも、その臣従条件というのがとんでもないものだったのだ。


土地の領有を認めず、役職と仕事に見合った収入を銭で支払うというものだったのだ。先祖代々の土地を取られることになる。そうなれば大名であっても、仕事をしなければ1銭もお金が入らないことになるのだ。


家中で話し合った。揉めるかと思ったら、臣従条件を受け入れることがすんなり決まる。既に逆らう気持ちなど折れてしまっていたのだ。後で聞いたが、島津家や毛利家は周防御所の要請に乗ることもなく、さっさと臣従していたらしい。


悔しいな! 同じ臣従でも、彼らは優遇されるはずだ! 喜び勇んで、周防御所に向かったバカ当主は何を考えていたのだろう? 今更、死んでしまった当主に文句を言ってもしかたないか!


……安土城の大広間……


信長が大広間に入ると、集められた西国大名の当主たちは一斉に頭を下げる。シーンとなった大広間の上座から「面を上げよ」と、短く鋭い言葉が発せられる。


大名たちの頭が一斉にあがる。大名たちの表情は固い、京の御所に攻め込もうとしたのだ。当然だろう。全員が切腹はやむなしと覚悟している。この大広間はあの世の入口なのだ。


「皆の者、良く集まってくれた。ここに座っておられるということは……臣従の条件に従うということでよろしいな。不服の者はおるか?」


大広間は、静寂に包まれている。信長は、異論がないかしばらく待つ。


大名たちは反抗の意思を完全にへし折られているのだ。誰も言葉を発する者はいない。家を守るため、何を言われても従うことだけを決めて来ている。


再び、信長が声を発する。


「隣の部屋に事務方が控えておる。そちらで詳細な説明をしっかりと聞き、その内容に則って行動してもらいたい。しばらくは、そなたたちの行動を監視させていただくことになるが、悪く思わないでもらいたい。以上だ!」


腹を切らなくていいのか? これで終わりなのか! 命が助かったのか! 

ほっとした当主たちは、気が変わらないうちにと隣の部屋にそそくさと移動していく。今後の方針と取るべき行動についての詳細な説明を受けている。


え〜と、いったい何のことを言っているのだろう? 自領には中央から内政官が派遣されるということか。代わりに、自領の一族郎党は全員が安土に来いというのだな。当主や一族の子弟たちは、安土の学校に入れるということなのだが。そこが良く分からない。


説明によれば、学校に入学することは、特に強制するものではないらしい……どういうことだろう? さっぱり意味が分からない。


考えてみれば、今後は自領からの収入がなくなるのだな!


そうだ! 我らは、これからどうやって暮らしていけばいいのだ! 収入がなくなるではないか! 何か仕事をしないと生きていけなくなるぞ! ところで、私も働くのかな? 大名の当主だぞ! 自慢ではないが、今まで一度も働いたことなどないのだ。


なるほど……だから学校に入って内政官になれということか。内政官になりさえすれば、今まで通りの大名の生活が送れるのかな? 何もしなくても、下の者たちがやってくれるのか? 


しばらくいろいろ考えていたが、やがて『何といっても大名の当主だったのだ、どうせ何とかなるだろう』という楽な考えに帰結する。その表情からは、だんだんと緊張感が消え失せる。


……信長……


安土の宿舎に帰っていく元大名たちの表情から緊張感がなくなっているな。切腹させられなかったことで安心したのかな?


学校で頑張らないと、生きていく道がなくなるのだが……まだ実感が沸かないのだろう。大名家に生まれただけで、何もできない人間など、新しき世には必要ない! だからこそ、与えられた最後の機会を活かしてほしいものだ。


今は、能力ある者がこの国を導き、国を強く豊かにしていかないとダメなのだ。もたもたしている時間はない。急がないと、日本はヨーロッパの強国の食い物にされてしまう。


……御所……


後奈良天皇の前に、後ろ腕を縛られた方仁が座らされている。

「何か言いたいことはあるか?」

「ありませぬ。私は死罪となりますか?」


「周防御所に関わったものは、公家も大名も全て亡くなっている。どうすべきなのか、自分で決めなさい」


「私の軽率な行動により、多くのものが死ぬことになりました。その責任から逃れてはいけないことは分かっております。しかし良き夢を見ることができました。もはやこの世に思い残すことはありませぬ。どうか静かなる死を賜りとう存じます」


「分かった。立派な判断だと思う。飛び切り美味い酒を用意しよう。最後に味わう酒だ、ゆっくり味わうが良い」

「ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」


方仁は別室に案内され、縄を解かれて最後の酒を味わう。旨い酒だと思った、これは蝦夷王国の酒だろうか。来世があるのなら、三蔵のように強く自由に、そして良き国を作るために働きたいと思った。


そのまま、ゆっくりと眠るように倒れ込む。


そのまま方仁が亡くなったのか、人里離れた寺で坊主として静かな余生を送ったかは不明である。


ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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