この国の新しいかたち2
ちなみに史実では、鹿児島の寺院勢力からの猛反発で、ザビエルは鹿児島から平戸に向かうのだ。そして平戸からさらに周防の大内家に向かっている。
布教の許可を得たいなら、国の代表がいる京の都に行くのが普通じゃないか。ザビエルは、大内家が所有する石見の銀山のことを調べたかったに違いない。ポルトガルの精錬技術なんかをチラつかせながら、産出する銀の量を聞き出したのではないだろうか?
産出する銀の量を聞き『黄金の国ジバングは本当だった!』と、ザビエルは狂喜乱舞したはずだ。当然大急ぎでインドの教会本部を経由し、本国のイエズス会にそのことを伝えたはずだ。
そうなれば、その話はヨーロッパの各国の国王が知ることになるはずだ。それを聞いた国王たちは『何をやっている! 蛮族を排除し、早く我らで銀山を押さえろ!』となるはずだ。
史実では、石見銀山の銀の産出量は、17世紀において世界の産出銀の約3分の1を占める大銀山だった。この国の誰もが能天気なことをやっているから、国の大事な資源を外国に取られてしまったのだ!
後奈良天皇が、やっと口を開いてくれた……
「そなたと普光との間の子供を次の天皇とする。玄武王、そなたは自分の子供を支え、この国の舵取りをしてもらえないか」
「……私の考えを述べて宜しいでしょうか?」
「是非聴きたい」
「為政者としての長い歴史を持つ者は、その国の民や、他国の民からも尊敬を受けます。そういう者が国を代表すべきなのは間違いないでしょう。しかし国を代表する者と、国を豊かにし、民を幸せにし、外国から国を守り、外国との交易を統括する者とは、別にあるべきなのです」
「つまり天皇は、君臨すれども統治せずの存在であることが望ましいと思います。大執政官の下に、国政、国防、外交、教育といった仕事を行ういくつかの組織を作り、その組織を大執政官が統括しながら、政を行うのが良いと思います。また各組織の長は身分に関係なく優秀な者を任命すべきなのです」
「かなり遠い先になると思いますが、大執政官も組織の長も、世襲ではなく民に選ばれた優秀な者がなるのが良いと思います。国の発展は、国を統治する人材の能力に掛かっているのです。優秀な人材を作り出すための民の教育こそが、この国の根幹になるでしょう」
「成る程な。我には考えつかないことだ。さすが神童よな。いや、もう童ではないか! 大執政官はそなたがやってくれるのだな。そしてそなたと普光との間の子供が天皇を継ぐということで良いな。そうしてくれるか?」
「分かりました。であれば、蝦夷王国とこの国は1つとなり、日本という名の国に致しましょう」
「そなたたちの子供が大きくなるまでは、頑張って天皇を続けないといけないな」
「もちろんです。病気や怪我などは私がお治し致します。ご安心ください」
「頼りにしておるぞ」
「すぐではありませんが、日本の旗を考えておいて頂けませんか。我が国の船が外国に赴く時には、我が国の船であることを示すために国旗を掲げる必要があります。またこの国の政を司る建物にも、国旗を掲げるべきです」
「国旗とは、国を象徴するものであり、国家の独立・主権・歴史・文化・理念を表すものです。つまり日本という国家を象徴するとともに、独立した国家であることを外国に対して示すものなのです」
「ですので、旗の色、形、描かれる模様……その全てに意味がなければなりません。また国旗は、何回も変更するものではないものではありません」
「そうだな、国旗とは大事なものであるな。隋に送った使節が『日を象徴する旗』を掲げていたというのは聞いたことがある。その辺りもしっかりと調べ、検討しておこう」
「よろしくお願いします」
前世の国旗は日の丸だったが、どのようなものになるのだろうか?
「……では蝦夷王国軍にて、周防御所および西国の大名、公家を始末してまいります」
「頼んだぞ」
……都から安土城に戻った翌日……
さっそくいつもの4人で集まり作戦会議だ。
後奈良天皇との会談について伝えると、3人が大いに驚く。そりゃそうだ……俺の子供が次期天皇になるのだからな! これで良かったのかとも思うが、俺が加護を受けた特別な存在ということで良いことにしてもらおう。
国旗の話もしたが、ピンときていないようだ。戦の旗印とは違うからね! やはり外国にいかないと実感がないかもしれないな。
さて、周防御所攻略のための打ち合わせを行なうか。
「蝦夷王国軍は、石山本願寺跡地に建てた摂津城に3万の陸軍を集結させ、いつでも西国に出撃できるようにしましょう。そして海軍は、玄武王が摂津城近くに新設した港と、拡張していただいた堺港に、日本丸100隻と蝦夷丸100隻を停泊させましょう」と勘助。
「方仁殿下から北条家、豊穣家、三好家に、北畠幕府を攻めよとの文が送られてきているようです。氏康殿、氏親殿、長慶殿には内応すると返答してもらいましょう」と勘助。
「そうすれば周防の連中は、その返事で勝ちを確信し、浮かれ上がるに違いありません。その噂を、忍者撹乱隊と地元の忍びたちを総動員して西国の津々浦々に広めましょう。西国の小大名たちも、勝ち馬に乗ろうと西国軍に合流を図るはずです」と幸隆。
「西国の大名の耳目である忍びたちは、我らに寝返っているのだな?」
「もちろんです。当主の首を持参せよと命じれば、命懸けで取りに行くでしょう」と幸隆。
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