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戦国時代の忍者に転生させられちゃいました。しかたないので伊賀を救い、日の本の民も救います。  作者: ゲンタ


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公家勢力を弱体化2

「大筋の戦略はこんなところだ。少し頭を整理しよう。2日後に再度集まるとするか」

「分かりました」と、3人が頭を下げて退出する。


「豊穣様! 豊穣様! 是非ともお聞きしたいことがあります」

「三蔵か! 久しぶりだな。どうした?」


天叢雲剣あめのむらくものつるぎについて教えてください」

「あれか……その剣は壇ノ浦に沈んで、とっくに錆びて朽ち果てておるぞ」


「そうでしょうね。天叢雲剣あめのむらくものつるぎを至高の匠スキルで作れるでしょうか?」


「それは簡単だ。天叢雲剣あめのむらくものつるぎは、当時においては最高の技術で作られたものだ。しかし今なら気の利いた鍛冶屋に、形状を描いた図面を見せれば、似たようなものをすぐにでも作るはずだ」


「ところで、インドで昔に開発されたウーツ鋼というのはご存知ですか?」

「知っているぞ」


「さすがに神様は何でもご存知ですね」

「当たり前じゃ!」


「至高の匠スキルを使って、ウーツ鋼の天叢雲剣あめのむらくものつるぎを作ることができるでしょうか」

「可能だぞ。そなたの知識の足りない部分は、スキルが自動的に補ってくれるからな。だがそれは天叢雲剣あめのむらくものつるぎとはまったく別物だぞ。それが何の役に立つのだ?」


「過去に存在した天叢雲剣あめのむらくものつるぎと、別物でも、まったく問題ありません」

「何に使うのか知らないが、やってみるが良い」


『創造 ウーツ鋼で作られた天叢雲剣あめのむらくものつるぎを1ふり』と念じる。天叢雲剣あめのむらくものつるぎが1振出現する。


刀身にウーツ鋼独特の積層紋が浮かび上がっている。

別にウーツ鋼の剣でなくても良かったのだが、一目見てこれは普通の剣ではないと思ってもらうことが大事、見た目がとにかく大事なのだ。


剣のつか部分を持って軽く振ってみる。

それなりに重いが、いくさに使うわけではないから問題ないだろう。このニセ天叢雲剣あめのむらくものつるぎを、周りに本物だと信じ込ませる役割は、二条晴良の仕事だからだ。


これならば周囲の人間を騙せると晴良が思ってくれればいいのだ。そう思ってくれれば、それこそ必死になって詐欺師役をやってくれるだろう。剣が本物かどうかなど大して重要なことではない、これなら公家や大名を騙せると、晴良が思ってくれるかどうかが大事なのだ。


次はこれを収める箱だ。箱は壇ノ浦に沈んで、ボロボロの腐りかけでないとダメだ。


ボロボロの腐りかけにするのは後にして、天皇家の家紋である十六八重表菊じゅうろくやえおもてきくもんが金箔で描かれている漆塗りの剣箱を、至高の匠スキルを使って作っておこう。


ニセ天叢雲剣あめのむらくものつるぎを、同じく至高の匠スキルで作り出した剣箱に収める。


2日後……4人で再び集まる。


「まず、これを見てほしい」

天皇家の家紋入の剣箱に収まった、ニセ天叢雲剣あめのむらくものつるぎを3人に見せる。


「これは天叢雲剣あめのむらくものつるぎだ。長く見ていると目が潰れるぞ!」

3人が目を閉じている。信じたようだな……これなら使えそうだ。


「これはニセ物だ。二条晴良がこれを見た時に、これならば周りの人間を騙せると思ってくれればいいのだ」


俺がこの剣をどうやって手に入れたかなど、誰も気にしていない。神童なら、そんなこともあるだろうと思ってくれているようだ。


「この独特の積層紋は素晴らしいですな。そもそも天皇家以外に天叢雲剣あめのむらくものつるぎを見ることなどできないはずです。『この剣なら皆を騙せる!』と、晴良は思うに違いありません」と勘助。


「この箱は、壇ノ浦の海底でボロボロの腐りかけになっていないとダメなのだが、そういう細工はできそうか?」

「調べてみます。たぶん可能だと思います」と幸隆。


「晴良が頑張って、それが本物だと周りの人間を信じ込ませたとする。その後、奴はどうすると思うか」


「安徳天皇は壇ノ浦で死んではいなかった、そしてその子孫が生きていた……とか言い始めるかもしれませんね。フフフ……」と勘助。


「たぶん三種の神器の残り2つは、適当に作らせるでしょう。そして、どこかから正当なる血筋を引く天皇候補者を探し出します。しかし、その人物も本物である必要などありません! 三種の神器を保有し、正当なる血筋を引く高貴なるお方が御座す朝廷こそが本物の朝廷である……そんな噂を京に流すでしょう」と信長。


「噂を流すのを、我らも手伝いましょう。忍者撹乱隊を使って、その噂をもっと大掛かりに京の都で流した方がいいでしょう。ついでに都の複数の寺の仏像の目から赤い涙が流れれば……もっと効果的ですな。都の公家たちは、きっと大騒ぎになるでしょう。フフフ……」と幸隆。


「それはいい! 面白そうだ」


軍師たち、楽しそうだな。俺も楽しんでいるけどな。


「仏像の赤い涙の噂を、晴良の耳に入るようにしておけば、奴は都の公家衆に周防国すおうのくにの御所に集まれ……と文を送るでしょう。噂を信じ、利があると判断した公家たちは大内家に向かい始めるでしょう」と幸隆。


「周防に向かうのが、早ければ早いほど高い官位と役職が得られるという気持ちに、拍車をかけることができれば、大きな流れを作ることができるでしょう」と信長。


「その流れが大きくなってくれば、晴良は足利家に再び将軍職を与えるでしょう。足利将軍は西国武将のまとめ役にはちょうど良いかもしれません。さしあたり大内義隆おおうち よしたか辺りを副将軍に据えるかみしれません。いや〜、面白い」と勘助。


「周防の朝廷が勢いづけば、京の朝廷からは公家の数が減るだろう。ところで、才蔵から聞いた話なのだが、後奈良天皇と第一皇子の方仁みちひと殿下との仲が良くないらしいのだ。忍びの子供のくせに、蝦夷王国の王になった俺が、殿下にとっては大いに気に入らないようなのだ」


「なんと……」


3人の口から同時に言葉が漏れる。

俺の存在が、方仁みちひと殿下の心に影響を及ぼしたかもしれない。


ここまで、お読みいただきありがとうございます。


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