四国の臣従に向けて
「分かりました。であれば、まずは四国の三好家の家臣たちを動揺させぬため、文をお書きください。数日も忍者速達便の忍びが文をお届けします。久秀殿も必要であれば文をお書きください。近くの者であれば、その日のうちにお届けします」
「忍者速達便とは何でしょうか?」
「手紙を運ぶことに特化した、足の早い忍びたちです。詳しくは言えませんが、全国各地に拠点を作っております。この国から戦がなくなっても、彼らはその仕事を生業にすれば、十分に食べていくことができると自信を持っております」
「なんと……いろいろな点で、三好家は及びませぬ。学ばねばならないことばかりです」
「武官ももちろん大事ですが、国を治めるにはどうしても内政官が必要となります。我らの内政官は、子供の時から育てあげてきた優秀な人材です。そのほとんどは農民出身ですが、北畠家でも、蝦夷王国でも身分にとらわれない人材登用をしてきました」
「採用した内政官には能力に見合った仕事を割り振ります。そして仕事に見合った対価が支払われます。長慶殿には、ぜひ北畠家の学校で内政を学んで頂きたい。希望すれば誰でも学校に入れますので、三好家の一族や家臣の方々も、是非学校で学ぶことを勧めます」
「ところで、芥川山城の方はどうしますか、何ともならないなら、明日にでも城ごと破壊してしまいますが」
「芥川山城の奴らは、飯盛山城があっという間に破壊されたことを、その目で見ております。私の花押が入った文であれば、言うことを聞いて臣従するはずです。説得には久秀に行ってもらいます」
「殿、承知しました。私の部下に文で連絡を取ります」
「では、文が準備は小姓の木下秀長にさせましょう。気が利く小姓です。何でもお申し付けください。今日のところはこれにて失礼する」
三好長慶が臣従した翌日、畿内の大名の臣従結果を踏まえつつ、次に打つべき戦略を4人で相談する。
「浅井家、朝倉家、六角家、一向宗、比叡山の件で、機内の大名たちは反抗心が折れてしまったか? あるいは冷静な状況分析により、勝てる要素がないと判断したのか? 何れにしても畿内の大名たちは、突きつけた条件を受け入れて臣従してきました。もう少し抵抗するかと思っていました」と勘助。
「臣従を受け入れた要因は両方だと思う。では勘助、次の1手はどうする?」
「四国への臣従勧告がよろしいかと」
「四国では反抗心を折るようなことはしていないぞ」
「いや、三好家が臣従したことは、小勢力の大名ばかりの四国勢にとって、十分に反抗心を折る出来事だったのではないでしょうか!」
「信長、臣従した畿内の大名たちはどうしている?」
「大名の一族郎党や有力家臣たちは、全て自領から切り離し、安土の城下町の屋敷に移らせました。やる気があり、先の見えている者とその子供たちは、安土に設けた学校に積極的に入学し、内政の勉強に励んでおります」
「大名の領地には、それぞれ北畠家から内政官数名と、彼らを護衛する武将と兵を派遣しています。『どうせ、すぐに元の大名生活に戻れる』と、学校に行こうともしない大名一族は消えてなくなるでしょう。もちろん監視を付けておりますので、変な動きをすれば、即刻始末の対象とします」
「学校での成績が悪く卒業できそうにもない者は、とりあえず2年間の猶予を与えよ。それでもダメな者は、適性を見て農民となるか、商人となるか、職人となるかを選ばせればいい。不服であれば最低限の支度金を渡し、西国に追放せよ」
「文官がダメでも、体が丈夫で武に優れている者であれば、北畠家の武将たちに預け、一般兵としてしっかり鍛えてもらってくれ。西国への追放に応じない大名は始末せよ。最初はそれくらい厳しくせねばならぬ」
「ところで、四国を臣従させたとして、派遣できる内政官の数は間に合うのか?」
「四国だけなら大丈夫です。しかし中国と九州までとなると、内政官の育成に少し時間が必要になります。豊穣家からも内政官の派遣をお願いされておりますので」
「越後には、学校を作っていないのか?」
「作ってはいるらしいのですが、氏親殿から忙しくて目が回りそうだ、助けてほしいと泣きつかれておる状況です」
「そうか仕方がないな。国を豊かにするには、仕事のできる内政官がたくさん必要だ。そして内政官を育てるには学校が必要となる。結局、国の根幹は学校なのだな。もちろん内政官だけでなく武官も必要となる。しかし今のところ我らの兵は戦での死傷率が低い。武官を増やすのは少し抑えておけ」
「では、四国の勝瑞城に、兵を3万集結させた後、今回と同じく四国の大名に臣従を迫りたいが、懸念事項はあるか?」
「四国には、公家大名の土佐一条家や西園寺家があります。どうされますか?」と勘助。
「放っておこう。土佐一条家や西園寺家が余計なことを言ってくるようなら、商人の取引を正直屋経由で全て止めてしまえ。奴らのところには他国から何も入ってこなくなるはずだ」
「土佐一条家や西園寺家が、我らに臣従した大名の領地に手を出した場合には、二度と手を出したくないように叩きのめしてやれ。その場合には、忍者撹乱隊を使って、奴らの米倉に火を放て、その後は忍者警備隊を使って国境の封鎖だ。国ごと兵糧攻めにすればいい」
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